糸井 |
なるほど、このころになると
録音技術もすっかりできあがってくるんだ。 |
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タモリ |
レコードというものが出てきます。 |
山下 |
うん、うん。 |
糸井 |
今でも、それらがCD化され続けてるんだと
思うんですけど‥‥、
じゃあ、ビッグバンドのアルバムで
「聴くなら、これかな」という作品、ありますか? |
タモリ |
グレン・ミラーは外しですね。 |
糸井 |
やっぱり。 |
タモリ |
カウント・ベイシーか、デューク・エリントンでしょう。 |
糸井 |
そうですか。 |
タモリ |
でも、スイング感とかブルースの感じで
圧倒的にカウント・ベイシーじゃないかと。 |
糸井 |
具体的には、なんていう作品なんですか? |
タモリ |
今はもう、廃盤になってるかもしれないんですけど、
「Count on the Coast '58」っつうアルバム。 |
糸井 |
どんなふうに、いいんですか? |
タモリ |
カウント・ベイシーが西海岸にやってきて
すっかり気ィ抜いてやってるんですよ。
どうせ西海岸だからさ、みたいな。 |
糸井 |
それ、つまり、東京のミュージシャンが
博多に行ったような感じ? |
タモリ |
あ、そうです! そうですね‥‥
いや、それとはちがいますけどね。 |
糸井 |
じゃ、鹿児島とか?(笑) |
タモリ |
鹿児島、うーん、強いていえば沖縄とか‥‥
いや、どこでも差し支えはあるから。 |
糸井 |
はい、はい(笑)。 |
タモリ |
ま、いいふうに言えば、ゆっくりやろうぜというね。
で、悪いふうに言えば、
西海岸の連中はジャズなんてわかんねえだろうと、
そんな感じでやってる‥‥
その圧倒的なスイング感。 |
糸井 |
それは「スイング感」なんですか(笑)。 |
タモリ |
「スイング感」です。 |
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糸井 |
それじゃ、山下さんは? |
山下 |
僕はねえ、中学生のときに
『ベニー・グッドマン物語』って映画を12回も観て、
ほとんどの場面を覚えたほどでして。
だからやっぱり、
ビッグバンドだとベニー・グッドマン。
カーネギーホールのライブ録音があって、
これがまた、素晴らしいんですよ。 |
タモリ |
華やかなりしころのアメリカ。 |
糸井 |
スカートがひらひらしてそうな。 |
山下 |
カーネギーホール録音のアルバムで
何が好きかっていうと、
ひとりひとりの「個人芸」なんですよね。
トランペットのハリー・ジェイムスと
ドラムのジーン・クルーパーが
ふたりでピッと顔を見合わせながら
ドラム対トランペットの対決をやってるんです。
それから、グッドマンとドラムの対決。
そういうのがね、妙に心に残ってます。 |
糸井 |
ああ‥‥ビッグバンドなんだけれども
個人の思いみたいなプレイが出てきてるんですね。 |
山下 |
そうそう、うん、個人。
しかも相手のいる決闘。 |
糸井 |
そういう意味では、後の時代のジャズを
予感させてるとも言えそうですね。 |
山下 |
冒頭にお聴かせした私の曲なんかは
そこらへんを手がかりに作った音楽ですから。 |
糸井 |
なるほど、こういう2枚のアルバムを
ご推薦いただきましたけど‥‥
タモリさんも、決していやいやではなく
紹介なさっているはず‥‥ですよね?(笑) |
タモリ |
そりゃもちろんです! |
山下 |
王道ですからね、カウント・ベイシーは。
いまだに、
ありとあらゆるビッグバンドが手本にしているほどです。 |
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<つづきます> |