それは、関ジャニ∞10周年記念ライブでのこと。
私は、実はデビュー前から関ジャニ∞のことを
応援してきており、こういった
「記念ライブ」「節目のイベント」といったものに、
特に高いモチベーションを持ちがちなタイプである。
それなのに、チケットは落選。
チケットを余らせている友人もおらず、
でもどうしても諦めきれないので、
当日は会場である大阪に、
はるばる東京から赴いた。
当日にもなると、できることは一つ。
会場近くの駅で、
「チケットを譲ってください」と書いた
スケッチブックを持って立つのである。
このライブは、チケットをとれなかったファンが
とても多く、当日は朝から
「チケット譲ってください」の紙を持った女性で
駅は溢れかえっていた。
私も、その中に身を投じる。
私には、秘策があった。
みんな同じ「チケット譲ってください」の紙を
持っていても、私がチケットを譲る立場だったら、
「この人!」と選ぶのは至難の業である。
つまり、「この人にチケットを譲りたい!」と
思わせる何かを、スケッチブックに書けばいいのだ。
ということで、私はスケッチブックにこう書いた。
「チケットを譲ってください。
譲ってくれた方に、関ジャニ∞メンバーの
細かすぎて伝わらないモノマネを披露します」
スケッチブックに書くだけでは飽きたらず、
Tシャツにも同じようなことを書いた。
これなら、きっとおもしろいこと好きの人は
目を留めてくれるはず!
そう自信満々にスケッチブックを掲げたのだが、
これが思っていた以上に恥ずかしかった。
目の前を通る関ジャニ∞ファンの女性たちが、
私のスケッチブックをチラッと見ては
クスッと笑って通り過ぎるのである。
最初こそ、笑いたければ笑え!と
開き直っていたものの、
中学生ぐらいの女の子に指をさされて笑われては、
さすがに悲しくなってくる。
Tシャツの文字は、そっと隠した。
いくら待っても、声をかけてくれる人はいない。
もう諦めるしかないのか……。
そう覚悟した、開演30分前。
なんと、チケットが余ってしまったという女性に
声をかけていただいたのだ。
なんでも、一緒に行くはずだった方が
体調不良で来られなくなってしまったとのこと。
「モノマネが見たくて……」と笑って
声をかけてくれた彼女と、
無事にライブを見ることができたのであった。
ライブは言わずもがな最高であったし、
苦労が報われたうれしさで、
いつも以上に感動したことを覚えている。
私に声をかけてくれた女性は、偶然同い年で、
その後も友人関係が続いている。
辛いこともあるけれど、素敵な出会いがある。
それが、アイドルオタクの一つの魅力であると
心から感じた出来事であった。
(ちなみにモノマネは、帰り道で披露。
たしか「ファンに向かってめちゃくちゃかわいく
手を振る錦戸くんの真似」をした気がするが、
全然ウケなかった。
苦笑いの彼女の顔も、いい思い出である)