アイドルオタクであったこの20年近く、
様々なことがあった。
そのたびに、
「なぜアイドルを好きなのか」
を考えてきた。
20年近くも、答えが出ないままなのには、
きっとわけがある。
つまるところ、「ありがとう合戦」に
帰着するのではないだろうか。
どんなに辛くても、
好きなアイドルに「ありがとう」と言ってもらえたら、
嫌な気持ちは吹き飛んでしまう。
どんなに悲しくても、
好きなアイドルに「ありがとう」を伝えて
笑ってくれたら、こちらも笑顔になってしまう。
どんなに考えたって、「ありがとう合戦」の前では
無力なのである。
だって、「ありがとう合戦」には、
おそろしいほど巨大な力があるのだ。
怪しいおじさんに騙されてチケットを渡してしまった
次の日、私は幸運にもライブに行くことができた。
そのとき、メンバーがステージ上でしきりに
繰り返していた「ありがとう」の言葉で、
私は元気を取り戻すことができた。
就職活動に失敗したときは、ライブで聞いた
「ありがとう、また来年も同じ場所で会おう」
という言葉を思い出して、
また自分を奮いたたせることができた。
失恋したときに参加した握手会で、
「ありがとう」と伝えたアイドルが
にっこり笑ってくれたおかげで、
未練を吹っ切ることができた。
アイドルと「ありがとう合戦」をするだけで、
「これでいいのだ」という気持ちになるのだ。
「なぜアイドルを好きなのか」に、
答えなどない。
「ありがとう合戦」の前では、
そうした理屈など通用しないのである。
悶々と考えて、答えが出ないことにもがいても、
結局は「ありがとう合戦」の圧倒的パワーで
あっさりどうでもよくなってしまう。
これが、なかなかの快感なのだから、
アイドルオタクはやめられないのだろう。