- 糸井
- 先日、新聞に「これが俺だ」みたいな感じで自分の写真が出ちゃったから、もう問題ないですか。
- 浅生
- はい、もういいです。
- 糸井
- 今まで顔を出さないでいた理由っていうのは。
- 浅生
- 何か「めんどうくさい」が。
- 糸井
- めんどうくさいだったんですね。漫画家の方とかと同じですよね。
- 浅生
- はい。
- 糸井
- 今の時代、顔を出さなくっても、けっこうなところまで商売できるんですよね。
- 浅生
- そうなんです。
- 糸井
- そういう虫のいいことを考えてるわけですよね(笑)。
- 浅生
- そうです(笑)。
- 糸井
- NHKの仕事をしてたときは、NHK_PRっていうペンネームじゃないですか。あれが俺だっていうのはマズイわけですよね。
- 浅生
- あの時代はそうですね。
- 糸井
- そうですよね。だから、あのときはあのときの隠しごとがあったわけですよね。
- 浅生
- はい。常に隠しごとがあるんです。
- 糸井
- 前からずっとそうだったんですか。
- 浅生
- そうですね。「実はあのとき」っていう。子どもの頃から、あんまり目立ちたくないというか。
- 糸井
- 写真でわかっちゃったけど幼少の頃は、見た目で「あ、日本語しゃべれるんだ」的な、そういうことですよね。
- 浅生
- ええ。どうしても目立ちがちなので、あんまり目立たないようにするにはどうしようかなっていう。
- 糸井
- あれこれ考えて。
- 浅生
- 目立たない方法って、ほんとに気配を消してうまく溶け込むか、逆に突き抜けるぐらい目立っちゃうかのどっちかしかないんです。バーンって飛び抜けて目立っちゃえば、また違う立ち位置に行けるんですよね。
- 糸井
- 目立つっていうのは、どういう経験ですか?
- 浅生
- たとえば、みんながやらないようなことにあえて「はい」って。どうせ押し付けられる可能性があるものは、自分から先回りしちゃうっていう。そうすることで「自分で選んだんだ」っていうことを納得させるというか。だから、目立つのはしょうがないよねって。
- 糸井
- NHK_PR時代なんて、けっこうそういう開き直りを感じましたよね。
- 浅生
- ああ、そうですね。
- 糸井
- おとり作戦みたいに、呼び寄せて逃げるとかね。NHKっていう名前ついていながらあれをやるっていう役は、なかなかノウハウがないじゃないですか。おもしろかったね。
- 浅生
- 相当ムチャでしたから。まぁ、あれも結局、飛び抜けちゃったので、たしかに楽になったんですよね。
- 糸井
- 自分も楽になるっていうことですか?
- 浅生
- ええ。「あいつはしょうがない」って思われると楽ですよね。
- 糸井
- でも「あいつはしょうがない」っていってエライ迷惑な人がいるじゃないですか。そういうのに対しては、いやでしょう?
- 浅生
- いやです(笑)。
- 糸井
- だから「あいつはしょうがない」けども、あんまり人に迷惑かけてないっていうのは、なかなかすごいバランスのところに立ってますよね。
- 浅生
- そうですね。だから、「あいつはダメだ」なんです。
- 糸井
- いや、どっちでもなくて「おもしろい」になっちゃってるんじゃないかな。
- 浅生
- 最終的には。
- 糸井
- うん。NHK_PRは、おもしろいが武器になっていたケースで。
- 浅生
- でも、冷静によくよく見ると、そんなにおもしろくないんですよ。1つ1つは。
- 糸井
- 1つ1つじゃないもの。
- 浅生
- 相対として「なんかおもしろいかも」っていう雰囲気だけはあるんですけど。
- 糸井
- 自分の仕事ってそういうとこありますけどね。うん、おもしろかったですよ。「それは人が言ったことがないな」みたいなものがけっこうありました。だから、変なおもしろさ。ものすごいツイートもしたでしょうけど、あれは24時間みたいなものですか。
- 浅生
- あれはほぼ、やってないんですよ。
- 糸井
- どういうことですか?
- 浅生
- 返信とかすべてタイマーで自動設定してあるんです。だけど、まさか前の日のツイートに対してリツイートしてるなんてみんな思わないので。本人だけは「あ、今ごろリツイートしてる」って思うんですけど、普通の人たちはリアルタイムのように見てるっていう。
- 糸井
- ということは、「見てるだけの人のほうが数が多い」っていうことをよくわかってやってるわけですね。
- 浅生
- そうですね。
- 糸井
- ツイッターってそうですよね。
- 浅生
- ツイッターって、絞り込むと1対1のやりとりなので、それを他人にどう見せるかっていう演出をしてあげると、すごくやってるように見える。ぼく、普通に番組をつくっていたので、そんな24時間ツイートできないですし。
- 糸井
- でも、NHK_PRさんと何回かリアルタイムでやりとりしたことがあるよ。
- 浅生
- リアルタイムをたまに混ぜて。
- 糸井
- 混ぜるんだ。
- 浅生
- たまに混ぜるんです。嘘にほんとを少し混ぜると、全部がほんとに見えるっていう。それは映像もそうですよね。全部CGじゃなくて、そこに実写の人を何人か混ぜるともう全部が‥‥。
- 糸井
- 実写に見えてくる。
- 浅生
- そういうかんじです。
- 糸井
- そうか。自分ではそんなことしないし、する必要もないけど、とてもなるほどですね。
- 浅生
- そこはちょっと、もうテクニカルな。
- 糸井
- そういう作戦考えるのはわりとお好きなんですね。
- 浅生
- そうですね。
- 糸井
- ね。構造で考えるっていうか。
- 浅生
- 強いワルとどう向き合うかに近いと思います。分析して構造を考えて、どこに何を置けばいいか、何を言えばいいかっていう。