もくじ
第1回地下634mでのゴキゲンな人。 2016-11-08-Tue
第2回信州の蕎麦屋でゴキゲンな人。 2016-11-08-Tue
第3回世界に向けてハローなんつって手を振れ、 ゴキゲンな人。 2016-11-08-Tue

1979年生まれの企画屋です。レシピバトン
recipebaton.com
というサービスをやっています。「食」「サプライズ」「つながり」。そのあたりのことを掛け合わせたアイデアをたくさん世に生み出せたらと思っています。コピーバンドHi&STANDARDのBass&Vo.

私の好きなもの
「ゴキゲンな人」

第2回 信州の蕎麦屋でゴキゲンな人。

いまでもその人を説明するときは、
このネタを持って説明している。
テッパンのネタである。

「信州の小諸って場所、あるじゃない。
 一人旅が好きなそいつはさ、
 蕎麦を食うためにね、小諸に行ったのよ。
 
 立ち食いでも、あるじゃない。小諸。
 でね。その頃、世界のナベアツって芸人が
 流行っててさ。あのヒゲの。
 そう、3の倍数でアホになる人。
 オモロー!ってネタ。

 で、小諸に行ったとき、
 そいつは蕎麦の上に乗ってた海苔をね。
 ポケットにこっそりいれて、
 トイレにいってさ、鼻の下につけたのよ。
 海苔を。
 そう、世界のナベアツのヒゲみたく。

 でね、同じポーズして自撮りして、
 送ってきたんだよね。

 コモロー!! って」

信州の蕎麦屋のトイレから
写真を送ってきたその人は、
以来、すこぶるゴキゲンだ。

旅先で目当ての店が閉まってても、
いい店と出会うチャンスだと意気込む。

ホテルの部屋の入り口にある、キーを差す
あの電源を管理する穴に酔っ払った自分が
「紙をたたんだものを差し込めば行ける」
と言って差し込んでは見たものの、
パチーン!と中に入ってしまったときも、
「スパイ大作戦みたいでよい」と
協力して紙を取り出してくれた。

酔って帰って空いた小腹を満たそうと
キッチンに立ったとき、あろうことか
醤油的なものを火にかけたまま寝てしまい
焼きプリンのカラメルみたいにしたことがある。

以来、玄関には注意書きの看板が
置かれるようになった。

風邪をひいてマスクをしているときは、
芸がないと、と紅の豚になったりする。

また、ある年の誕生日は
だらしない僕の腹を戒めるように
くっつけるだけの腹筋鍛えマシンをくれたのだが、
「意識が大切」と広告キャラクターのロナウドの体に
自分の顔が挿げ替えられたビジュアルをくれた。

しかもA4,A5,A6とサイズを分けて。

なので、うちの玄関や歯ブラシの棚には
体はロナウドで顔が僕のビジュアルがペタペタと貼ってある。

床掃除をしながら、音楽をかければ
その棒を軸にクルクルとダンスを踊るし、
りんごのネットがあれば頭に被ってみて、
悪そうなラッパーのように振る舞う。
卵に「肉」と書いてあったので何?と聞いたら
ゆでたまご(=漫画キン肉マンの作者)だからだ、と。

酔った時、ヘソを中心に目玉のオヤジを書いたら、
「オイキタロー」と、モノマネもしてくれたから、
お風呂の茶碗も追記したら
「オユガヌルイゾ」と怒られた。

僕のような一般人の毎日は、平凡で、退屈だ。
でも、ゴキゲンであるだけで、
海苔や掃除棒、りんごのネットなどさえも
絶対言い過ぎだと思うけど、
ミュージシャンにおけるギターのように、
人を魅了できたりする。

ゴキゲンにはその力があると思っている。

ゴキゲンを志すものにとって、日々は大喜利だ。
いかに困難や退屈を笑って制圧できるか。

敏腕な外科医や老練の刑事が、
過程と結果の仕上がりにこだわるように、
その人は今日も
ゴキゲンのディテールに気を遣っている。

第3回 世界に向けてハローなんつって手を振れ、 ゴキゲンな人。