淀川さんの素敵さに気が付いた時には、
もう淀川さんはいらっしゃらない世の中でした。
一時、淀川さんにすがるように遺された本やDVDを
読みあさる時期がありました。
心の中が、すこし、寂しかったのだと思います。
黒柳徹子さんの「徹子の部屋」に出られた時の話をまとめた本の中で、
「毎日小さなことでも生きる楽しみをみつけること」を
話されていました。
1日1回、感激することや嬉しいことがないと寝付けないこと、
感受性を大事にしたほうがよいこと、
理論ではなく、心と向き合う大切さを教えてくれたことは
今でも私の大切な指針です。
「美しく、生きること」
これも私の好きな言葉ですが、
淀川さんから教えてもらいました。
島森路子さんのインタビュー本「ことばを尋ねて」の中で、
「二十一世紀への遺言」というテーマで言葉をのこされています。
「二十一世紀は人間は表向きばかり進歩して、
行儀作法から心の深いいたわりから、
そうした人情がなくなってしまうのが怖いですね。
僕の二十一世紀への一番の望みは、友情、そして愛情を
ぐっとつかんで離さない世界になってほしい、ということね。」
心が豊かになる、というのは楽しく美しいこと、
そういう人が多い世の中はあたたかいのだろうなあと思います。
最近は、同世代に淀川長治さんの話をしても
一部の方しか知りません。
それは私にとってだけでなく、
何となくですが今の時代にとっても
さびしいことのような気がしています。
検索や評価による点数だけではなく、
そこにどんな感情があるのか。
誰がそれをどんなふうに好きで、
どんなところが好きなのか。
何重も重なった感情を一枚一枚丁寧にめくって、
向かい合う人と対話しながらそのものを愛したい。
淀川さんの言葉を通して、
あたたかな気持ちがいろんな人の心にやどったらと思います。
最後に、ぜひ観てほしいおすすめの映画を
淀川さんになりきった気持ちでご紹介します!
・いまを生きる(原題: Dead Poets Society)
ロビンウィリアムズ演じる先生と
男子高校生たちの学校生活を描いた映画なのですが、
生きることの難しさとよろこびを
丁寧に描いた素晴らしい映画です。
映画の中でロビンウィリアムズが生徒たちに、こう話します。
”seize the day, boys. Make your lives extraordinary.”
「今を生きろ、若者たちよ。素晴らしい人生をつかむのだ。」
まだ幼い高校生たちは過去にとらわれたり、他人と比べたり、
クラスでショックな出来事もおき、小さな世界の中で苦しみます。
ですが、世界はもっと広い。どんどん進んでいく。
彼らが成長していく様はまさに、
美しく生きること、そのものです。
・第1作 男はつらいよ
主人公の渥美清演じる寅さんもすばらしいのですが、
寅さんシリーズの魅力は各々のキャラクターの個性と人間らしさ。
どの人も口は悪くても人をほっとけない優しさがあって
ああ、これが愛だなあと思います。
寅さんの後先考えていない、恋愛にふりまわされてばかりの
生きざまはカッコ悪いはずなのに、
不器用でも誰かを思いつづける姿は
たぶんカッコいいんです。憧れです。
・永い言い訳
せっかくなので、現在映画館で上映中の作品をひとつ。
西川美和監督の最新作ですが、彼女のいいところは
人間味あふれる葛藤の、丁寧な心理描写です。
愛しきれない主人公に対して
どうしようもなく苦しくて、何度も深いため息をついて・・
主演のもっくん、こと本木雅弘さんも素晴らしい。
すごい映画だなあと、簡単な言葉ですが
1時間経った帰り道でもほろりと泣いてしまいました。
愛する人がいるなら手を離さないこと、
生きるなら、悔しい気持ちは出来るだけ
少なくしたいと思いました。
(おわります。)