もくじ
第1回「家」が好き。 2016-11-08-Tue
第2回「家」が好きではなかったとき 2016-11-08-Tue
第3回もう一度、「家」を好きになる 2016-11-08-Tue

33歳の関西女です。都内で会社員、そして一児のママをやっています。ツッコミもボケもできないので、ときどき「本当に関西人…?」と疑われること多々。HNはnatukiFM。今、家の中を森にしたくて孤軍奮闘中。次にほしい木はゴムの木です。

「家」が好き。

「家」が好き。

担当・福岡夏樹

第2回 「家」が好きではなかったとき

ここで「家が好きだ」と語っているけれど、
「好きではない時代」もあった。

高校卒業後、就職とともに家を出たのだ。
「あんなに“家”が好きなのに?」
「“家”から通えばいいのでは?」
と、いろいろ考えた。
でも、当時の私の「やりたい仕事」は
家から通える場所にはなかった。
「絶対に家へ帰れなくなるわけじゃないし…」という、
非常に甘い見積もりもあり、
家を出て就職することになったのだ。

就職してすぐの頃は、職場の寮に入った。
そして、あっという間にホームシックになった。
仕事が終わってベッドに入ると、
家を思い出して、涙が止まらなかった。
家で感じていた、あの「ふかふかの毛布」が、
もう手の届かないところへいってしまった気がしていた。

しかし、体も心も環境に慣れていくもので、
一生治らないのではと思っていたホームシックは
気づくと収束していた。

そして初めての転職。本格的な一人暮らしを始めた。
仕事では、毎日のように失敗していた。
そのたび、「できない自分」を責めたりもした。

以前の「家」なら、この気持ちもうまく消化できていた。
ならば、一人暮らしの家を好きになれるよう、
私の「好き」をたくさん詰め込んでみるといいのかもしれない。
そう思って、インテリアに凝ってみたり、
自炊をして、好きな料理に凝ってみたり、
リラックスできるよう、香りにも凝ってみた。
けれど、一人暮らしの家を、好きになれなかった。

日に日に仕事は忙しくなり、できることも増えた。
でも、「失敗の数」はなかなか減らなかった。
家に帰る途中で見る、よその家の灯りや晩御飯の香りが
だんだん辛いものになっていった。
それを避けるため、もっと遅い時間帯に帰宅するようになった。
職場に泊まり込む日も、少しずつ増えていった。

あのとき、私は「家」が好きではなかった。

第3回 もう一度、「家」を好きになる