次の転機は、わりとあっさり訪れた。
結婚したのだ。
相手は、高校を卒業してすぐ就職した職場で出会った人だった。
転職して、一人暮らしを始めてからも付き合いは続き、
家にもよく遊びに来てくれていた。
彼が遊びにきてくれる日は、
「今日は、彼が家にいる!」と、恋心からウキウキする一方、
心のどこかで安心している自分もいた。
それはあの、自分が好きだった「家」にあった、
ふかふかの毛布にくるまっているような気持ちと
非常によく似たものだった。
ひょっとすると、今感じている要素があれば、
この家を好きになれるかもしれない、と思った。
その気持ちを、そのまま彼に伝えた。
「…なので、よかったら私と結婚してみませんか?」
彼は笑っていた。
「いいですよ」
家の「ふかふかした毛布」の正体
冒頭で書いたとおり、私にとって「家」は
好きなものを好きなだけ詰め込める、
「好き」のバリューパックだ。
けれど、1つだけ欠かせない要素がある。
「好きな人」だ。
私にとって、家にいるとき
ふかふかした毛布にくるまっているような気持ちになるのは、
好きな人に囲まれているからだった。
他の人にとっては違うかもしれないけれど、
少なくとも私の「好き」のバリューパックの
大きな要素であるので、ここは欠かせない。
今、私の家には彼ともう一人、小さな彼も住んでいる。
小さな彼にとって、今の家が「好きなもの」であるといいなと思う。