もくじ
第1回旅のはじまり 2016-12-06-Tue
第2回相席の昼食 2016-12-06-Tue
第3回朝日が昇る 2016-12-06-Tue

北海道出身
北海道育ち。
『水曜どうでしょう』が大好きな子どもでした。

鉄道の旅

鉄道の旅

担当・sunrise

第2回 相席の昼食

昼食は食堂車で取ることになっていた。
乗務員がランダムに席を案内してくれる。相席だった。
同じテーブルには私のほかに3名。
アメリカ人カップルのマークとイザベル。
そして一人旅をしているアメリカ人男性のアレックス。
マークとイザベルは見ているこっちが恥ずかしいくらい
終始イチャイチャしていた。
若くていいな、と最初はうらやましく思っていたが
だんだん「はいはい、もういいですよ」と言いたくなった。

アレックスはシアトル在住。
私の拙い英語にじっと耳を傾け、
ゆっくり、わかりやすく話してくれる紳士的な人だった。
ロサンゼルスの近くで育ったそうで
今回は父親を訪ねる旅だと教えてくれた。
それは楽しみだね、と伝えると、
神妙な表情で、少し間をあけてからこう言った。

「父とは長く確執があってね…。
でも昨年、父がガンであることがわかったんだ。
一緒に今後のことを話したいと思っている」

家族の深刻な問題でも私のためにわかりやすく説明してくれる、
そこに彼の優しさが表れていた。
飛行機ではなくアムトラックを選んだのは、
父親に会う前に一人で考える時間がほしかったからだと言う。
わかる気がした。私の父も病と闘っている。

ふと、周りの乗客を見渡してみた。
ここにいる誰もが何かしらの悩みや問題を抱えている。
アムトラックは、目的地へ正確に最短時間で
到着するための手段としては落第点だけど
自分の心と向き合う時間を求めている人には、きっと応えてくれる。
心の旅をしている人が、他にもきっといるのかなと思った。

(つづきます)

第3回 朝日が昇る