1つ目は、「緩急」。
彼らの演奏を観ていると、
思わず息を呑んでしまいます。
それも、一瞬のことではないのです。
何十秒、いや、時には何分も息を呑みっぱなしなのです。
もちろん、軽やかにステップを刻むようなリズムの曲や、
しっとりと沁みわたるような旋律を聴かせる曲など、
息を呑み続ける曲ばかりではありません。
でも、やはりまず印象に残るのは、
この、「呼吸を忘れた」かのように釘付けになる時間。
いったい何が、観る人をそうさせるのか?
そのヒントが、「緩急」にあると私は思います。
疾走するメロディーが、ビートが、
瞬時に方向を変えて別の方向に走り出す。
流れをリセットした後に、
まったく異なるフレーズが展開される。
スイッチする瞬間が、トリオ間の阿吽の呼吸で
バチッバチッと揃っている。
そんなパフォーマンスを追って行こうとしたら、
息をゆっくりと吸っている暇などあるはずがないのです。
ただ、息を張りつめれば張りつめるほど、
そこから解き放たれたときの解放感もまた格別。
昔、運動部か何かの練習で、
「インターバル走」をやったことのある人なら分かるはずです。
「電柱2本ごと」など、目印を境にして、
ダッシュとランニングを繰り返すあれのことです。
あの、「ダッシュ」から「ランニング」に変わる瞬間。
その時の解放感なのです。
最後の1本を走りきった(曲が終わった)
瞬間の清々しさといったら、もうたまりません。
もちろん、インターバル走と違い、
変わり目となる電柱の間隔はバラバラなわけですが、
張りつめたところから一気に解放されたときの、
「景色が変わる」感じが、何だか似ているなあと思うのです。
(つづきます)