もくじ
第1回生で観て浮かんだ、3つのことば。 2016-12-06-Tue
第2回緩急。 2016-12-06-Tue
第3回憑依。 2016-12-06-Tue
第4回地車。 2016-12-06-Tue

出版社で営業の仕事をしています。社会人1年目。

3つのことばを手がかりに聴く</br>上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト

3つのことばを手がかりに聴く
上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト

担当・ミネオ

第2回 緩急。

1つ目は、「緩急」。

彼らの演奏を観ていると、
思わず息を呑んでしまいます。

それも、一瞬のことではないのです。
何十秒、いや、時には何分も息を呑みっぱなしなのです。

もちろん、軽やかにステップを刻むようなリズムの曲や、
しっとりと沁みわたるような旋律を聴かせる曲など、
息を呑み続ける曲ばかりではありません。

でも、やはりまず印象に残るのは、
この、「呼吸を忘れた」かのように釘付けになる時間。

いったい何が、観る人をそうさせるのか?

そのヒントが、「緩急」にあると私は思います。

疾走するメロディーが、ビートが、
瞬時に方向を変えて別の方向に走り出す。
流れをリセットした後に、
まったく異なるフレーズが展開される。
スイッチする瞬間が、トリオ間の阿吽の呼吸で
バチッバチッと揃っている。

そんなパフォーマンスを追って行こうとしたら、
息をゆっくりと吸っている暇などあるはずがないのです。

ただ、息を張りつめれば張りつめるほど、
そこから解き放たれたときの解放感もまた格別。

昔、運動部か何かの練習で、
「インターバル走」をやったことのある人なら分かるはずです。
「電柱2本ごと」など、目印を境にして、
ダッシュとランニングを繰り返すあれのことです。

あの、「ダッシュ」から「ランニング」に変わる瞬間。
その時の解放感なのです。
最後の1本を走りきった(曲が終わった)
瞬間の清々しさといったら、もうたまりません。

もちろん、インターバル走と違い、
変わり目となる電柱の間隔はバラバラなわけですが、
張りつめたところから一気に解放されたときの、
「景色が変わる」感じが、何だか似ているなあと思うのです。

(つづきます)

第3回 憑依。