施設で暮らしている祖母・ばあばに、
東京に住んでいる僕が会いに行けるのは、
帰省する盆と年末年始との、だいたい年に2回。
実は昨年は盆も年末も帰省できておらず、
例年よりも、さらに長い間、
僕は、ばあばに顔を見せていなかったのです。
しかし、つい先月(2017年3月)、やっと暇ができたので、
僕は、ばあばに会いに行くことができました。
(2016年初夏のばあば。104歳)
たくさんのお年寄りが入居するこの施設では、
入り口での手洗いうがい、そして、
マスク着用が一応の決まりのようになっています。
「半年以上も時間を空けて、マスクで顔も隠して、
ばあばは僕の事が誰かわかるんだろうか?」
と不安になりながらも進み、エレベーターの扉が開いて、
ばあばが暮らしている階に着きました。
そこはホールのようになっていて、
ゆったりとした間隔でテーブルが配置され、
たくさんのお年寄り(といっても、
ばあばよりは全員が年下なのですが)が、
それぞれ自分の席で、静かに過ごしていました。
ばあばの“指定席”は、エレベーターから
一番近くのテーブルです(これも100歳パワーかもしれません)。
驚かさないように気をつけて、背後から近づき、
「ばあば、久しぶり」と声をかけて、顔を見せた途端、
ばあばは、すぐに僕だとわかってくれました。
目に涙を浮かべて喜んでくれ、
「お茶を淹れよう!」と何度も言って、
立ち上がるような素振りも見せ、
自宅にいた時のように僕たちを歓迎してくれました。
もうそれだけで、僕も、一緒に行った妻も、妹も、
来れてよかった、会えてよかった、と
泣くほど嬉しくなりました。
(思わずマスクを取ってしまった僕と、ばあば)
ばあばは、前回会った時よりも肌艶がよく、
見た目は若返っていて、よく笑い、話す声は大きく明瞭で、
その内容も、今までに聞いた事がない新ネタが満載でした。
今回は、主に嫁と姑(または母と娘、妻と夫)の円満の秘訣について。
「年寄りになればわかる。若いうちはわからんけど、
だーんだんわかるようになることがある。
頭にくることとかね、納得でけんことのあっても、
ハイハイって言って流してしまいんさい」
‥‥要するにケンカなんてしても仕方がない、ということでした。
「気をつけんと、おれみたいになるぞ!カッカッカ」
と水戸黄門のように笑って、ばあばは注意してくれましたが、
ばあばのような105歳に、なれるものなら僕もなりたい。
みんながなれたらいいのにな、と僕は思いました。
(つづく)