もくじ
第1回ばあば、100歳の頃。 2017-04-18-Tue
第2回105歳の、ばあばに会いにいく 2017-04-18-Tue
第3回好きな人の「最近、思うこと」が1番面白い。 2017-04-18-Tue
僕の好きなもの</br>105歳の祖母・ばあばの話

僕の好きなもの
105歳の祖母・ばあばの話

第2回 105歳の、ばあばに会いにいく

施設で暮らしている祖母・ばあばに、
東京に住んでいる僕が会いに行けるのは、
帰省する盆と年末年始との、だいたい年に2回。
実は昨年は盆も年末も帰省できておらず、
例年よりも、さらに長い間、
僕は、ばあばに顔を見せていなかったのです。

しかし、つい先月(2017年3月)、やっと暇ができたので、
僕は、ばあばに会いに行くことができました。

(2016年初夏のばあば。104歳)

たくさんのお年寄りが入居するこの施設では、
入り口での手洗いうがい、そして、
マスク着用が一応の決まりのようになっています。

「半年以上も時間を空けて、マスクで顔も隠して、
ばあばは僕の事が誰かわかるんだろうか?」
と不安になりながらも進み、エレベーターの扉が開いて、
ばあばが暮らしている階に着きました。
そこはホールのようになっていて、
ゆったりとした間隔でテーブルが配置され、
たくさんのお年寄り(といっても、
ばあばよりは全員が年下なのですが)が、
それぞれ自分の席で、静かに過ごしていました。

ばあばの“指定席”は、エレベーターから
一番近くのテーブルです(これも100歳パワーかもしれません)。
驚かさないように気をつけて、背後から近づき、
「ばあば、久しぶり」と声をかけて、顔を見せた途端、
ばあばは、すぐに僕だとわかってくれました。

目に涙を浮かべて喜んでくれ、
「お茶を淹れよう!」と何度も言って、
立ち上がるような素振りも見せ、
自宅にいた時のように僕たちを歓迎してくれました。
もうそれだけで、僕も、一緒に行った妻も、妹も、
来れてよかった、会えてよかった、と
泣くほど嬉しくなりました。

(思わずマスクを取ってしまった僕と、ばあば)

ばあばは、前回会った時よりも肌艶がよく、
見た目は若返っていて、よく笑い、話す声は大きく明瞭で、
その内容も、今までに聞いた事がない新ネタが満載でした。
今回は、主に嫁と姑(または母と娘、妻と夫)の円満の秘訣について。

「年寄りになればわかる。若いうちはわからんけど、
だーんだんわかるようになることがある。
頭にくることとかね、納得でけんことのあっても、
ハイハイって言って流してしまいんさい」

‥‥要するにケンカなんてしても仕方がない、ということでした。

「気をつけんと、おれみたいになるぞ!カッカッカ」
と水戸黄門のように笑って、ばあばは注意してくれましたが、
ばあばのような105歳に、なれるものなら僕もなりたい。
みんながなれたらいいのにな、と僕は思いました。

(つづく)

第3回 好きな人の「最近、思うこと」が1番面白い。