もくじ
第1回ばあば、100歳の頃。 2017-04-18-Tue
第2回105歳の、ばあばに会いにいく 2017-04-18-Tue
第3回好きな人の「最近、思うこと」が1番面白い。 2017-04-18-Tue
僕の好きなもの</br>105歳の祖母・ばあばの話

僕の好きなもの
105歳の祖母・ばあばの話

第3回 好きな人の「最近、思うこと」が1番面白い。

105歳になった、僕の祖母・ばあば。
約8か月ぶりだった今回の再会では、
見た事もないほどの絶好調で、
2時間近く、ほとんど途切れる事もなく、
喋り続けていました。

iPhoneをカメラだとわかっていて、話の途中でも、
「写真ば撮らさるんなら、美人に写しなさい」と目線をくれ、
明らかに可愛らしく表情を作ってくれもしました。

朝一番に訪れたのに、あっという間にお昼時になり、
「もう帰らんか」と、ばあばが元気に言い、
それで僕たちは、約2時間のトークショーを振り返り、
「ああ、凄かった。何かわからんけど、感動した」
「ばあば、最近はあんなことを思ってたんだねぇ」
「野球選手に喩えればイチロー級の、“超一流100歳”」
「と言うより、もう神様みたいやった‥‥」
などと口々に言いながら、帰路につきました。

明治時代の最後の年に生まれたばあばは、
太平洋戦争の戦前・戦中・戦後を生き抜いた人で
(6人兄妹を生み、育て、その紅一点が僕の母です)、
僕が小学生だった頃は、生々しい戦争の話も、
僕が聞けば、色々と聞かせてくれました。

でも、100歳を超え、記憶も曖昧になってきた今、
僕たちと会ったとき、祖母の脳裏に蘇ってくる人格が、
「激動の時代を生き抜いた一人の老人」ではなくて
「僕のおばあちゃん=ばあば」であることが、
僕には嬉しく思えます。

僕が施設を発つ前に、スタッフの方が
「おばあちゃん、いつもお元気ですけど、
今日はまた、特別にお元気だと思います。
やっぱり、お孫さんに会われて、
本当に嬉しかったんだと思います」
と声をかけてくださった。

(2017年3月の、ばあば。105歳)

久しぶりに、ばあばと話して、
そして、今回の課題に取り組んでみて、今、思うのは、
好きな人の「最近どうしてる?」「最近、思うことがあって」
という他愛もないような、何でもいいようなことが、
実は、1番、面白いんじゃないか、
大切なんじゃないか、ということです。
話す(書く)人にとっても。聞く(読む)人にとっても。

「最近、思うことがあって‥‥」ということでいいのであれば、
ネタは無限にあるようだけれど、
「最近、思うことがあって‥‥」ということは、
誰でもが、話してもらえるわけではありません。
自分に話してくれる誰かがいないと、できない。

ばあばが、なぜ、あんなにも楽しそうに話してくれたのか?
また、僕たちも、なぜ、楽しく話を聞くことができたのか?
ばあばの他に、僕にとって、そんな人がどのくらいいるのかな‥‥
そして、そんな人に、あと何回、会えるんだろう。

(2017年4月。母と、ばあば)

思い当たる人に連絡して、
僕が100歳になるまでの残り時間で、
1人ずつ、話を聞いていきたいと思います。
それまでビールを飲めるくらいには、健康でいなくちゃな。

その頃には、170歳を超えているかもしれない、
ばあばにも、早く、また会いに行こうと思っています。

(おわります)