もくじ
第1回その人特有の「色」が見えた。 2017-04-18-Tue
第2回「あれは、珊瑚の色」。 2017-04-18-Tue
第3回色の組み合わせを考えるのは楽しい。 2017-04-18-Tue

京都・かもがわの近くに住んでいます。
普段は糸の専門店で情報を発信したりデザインの仕事をしたりしています。

わたしの好きなもの</br>さまざま「色」。

わたしの好きなもの
さまざま「色」。

担当・サク

色の持つ魔法に気づいたのは、自分の思うことや、
今の気持ちを伝えるにはまだまだ言葉を知らなかった
ずいぶん小さなころ。たとえば「せつない」という気持ち。
たとえば「はかない」というのはどういうことか。
心では感じるのにそれを言葉に出来なかったとき、
「色」でなら、表現することが出来た。
そのことに気づいてから、人に自分の感じることを
伝えられるようになったと思うし、今でも頼りに
している。そんな相棒のような「色」についての、
いくつかのエピソードです。

第1回 その人特有の「色」が見えた。

今思ってもなぜかはわからないけれど、友達や家族、
一人ひとり持っている、その人特有の「色」が見えた。
小学生のころだった。
見えたというよりは感じたと言う方が正しいのかも
しれない。それは親しい関係であればあるほど、だ。
あ、この子は黄色。この子は濃い青だなというように。
それは、その子が好きな色だったりよく着ている色
というわけでは、どうやらないらしい。
その時にはじめて「色」に対して意識し、興味を持った。

そこから、うれしい、かなしい、おこっている、
というような感情にも色があることを発見した。
教科書の挿絵で、燃えている炎や、静かな夜の中に光る
星を見ては、これはものすごく怒っているときの気持ちに
似ている、これは大好きな友達とおわかれするときの、
さびしい気持ちなのに楽しかった思い出が心の中で
光っている、あのキラキラに似てるな。と言った具合に
感情を色に置き換えることで、幼いなりに自分の中で
うごめいている気持ちと向き合うことが出来て、
すとんと腑に落ちるように自分の中で納得したり、
理解することができた。この発見をしてから、
絵の具や色えんぴつを使って、描くことが楽しくなった。

ある時、国語の授業で読んだ物語の、好きな
ワンシーンを絵の具で描きましょうという授業があって、
海の中にいる生きものの絵を描いたとき、先生が
「じっさいに見えている色は1色じゃないから、
色んな色をまぜて使ってね。そこに生きてるたくさんの
生きものの色、太陽が反射してキラキラしている色、
海藻なんかもそこにいるから、その色も混ぜて描くと
いいよ。」と言われて、たくさんの色を重ねるように
使った。風景画ではなく、好きなシーンを描くという
テーマだったから、そのお話の楽しさを色で表わすなら
この色とこの色を混ぜよう、という風に、どんどん色を
重ねていく。重ねるほど、深みを増していく海の色や
生きものたちを見て、自分が思うそのシーンに
近づけたように感じて、嬉しかった。
壁一面に貼ってある、いろんな生徒の絵の中で、
自分の絵がはじめてきらきらかがやいて見えた。

そして、見えている色は実はたくさんの色の重なりで
出来ている、ということを知った。すごい、と思った。

(つづきます)

第2回 「あれは、珊瑚の色」。