ここまで振り返ると
私はとても進化しているようにみえるが、
まだまだそんなことはなく。
最重要問題であった「ひどいことを言うのをやめて」を
伝えられたにすぎず、彼は変わらずマイペースだし、
私は小さいなことでメソメソ傷ついていた。
そんなとき、信頼している友人が
「聞いている限り、彼はあなたのことが大好きだよ。
あなたも好きでしょ?お互いに大好きなんだよ。
でも愛情表現がなってないから、うまくいってないんだよ」
と指摘をくれた。
愛情表現。
これも、「自分から愛する」の
答えの一つのような気がした。
「この前、彼に『一緒に住む?』って言われた」
「何て返したの?」
「『うん、そうだね』って」
「だからだめなんだって!
『うれしい!私も一緒に住みたいと思ってたの』くらい言いなさい!
彼が勇気を出したかもしれないのに、
そんな冷めた反応だとやる気なくすでしょ?」
と言われた。あ、そのとおりだ、と思った。
そうだった。彼は彼なりに、愛情表現をしてくれていた。
私の姿が見えないと名前を呼んで探しにきたり、
お風呂上がりに体が濡れていると「だめでしょ!」と拭いてくれたり
化粧水をつけていると後ろからくっついてきたり
寝るときは必ず手をつないできたり
エスカレーターや階段では必ず私を上にしてくれたり‥‥
あれもこれも、いろいろいろいろ。
でも私は、自分から好きだと伝えたり、
わかりやすく愛情を表現したことはほとんどなかった。
過去の恋愛ではそんなことをしなくても愛されていたし、、
第一恥ずかしかったし、どうすればいいのかわからなかった。
「犬に学びなさい。
飼い主が帰ってくると玄関に飛んできて、
散歩に行くとわかったらうれしくて飛び上がって、
餌をもらったら夢中になる。
めいっぱい喜びを表現すれば、
相手も嬉しくなって、また愛情を注いでくれるよ」
確かに。彼が彼なりに愛情を表現してくれているのが
わかっていたから、私は彼から離れることができず
なんとかなるはずと今までがんばれたんだとも思う。
そこでまた私は、
「愛情表現とは」と検索しながら
できそうなことをトライする。
恥ずかしいけど、勇気を出して突然「好きだよ」と言ったら
彼は照れながらも嬉しそうに「俺も好きだよ」と返してくれた。
そんな反応、初めてだった。びっくりした。
「こういうことか!」とわかった。
こんな簡単なことが、30歳になるまで
なかなかできなかったのだ。
私が勇気を出して愛情を表現した分だけ、彼の愛情表現も増えた。
次第に私の中で「彼に受け入れられている」という安心感が芽生えてきて、
きついことを言われても、メソメソせず言い返せるようになった。
「大丈夫、言い合いをしてもこの人は私のことが好きだから」と
少しずつ自分の想いを出せるようになったのだ。
これを実感してから、私の「自分から愛する」は加速した。
どんどん愛情を伝えたくなるし、もっと喜ばせたくなるし、
もっと大事にしたくなる。
ときには見返りを求めてしまうけど、
執着しなくなったし、求めなくても何かが返ってくるようになったのだ。
彼の愛も前より感じるし、ちょっと衝突しても解決が早い。
「思っているだけじゃ伝わらない」って本当だ。
親子ではない赤の他人だからこそ、
この愛の気持ちを伝える努力をしないのは
究極の甘えなんだなぁ‥‥と痛感した。
(次回、最終回です)