燃え殻

このあいだ、テレビに出たんです。そしたら、「途中でこれを言ってください」って、ぼくが言う質問が与えられたんです。「でも、これだけなんで。あとはこっちで全部巻き取るんで、これだけ言ってくださいね」っていう質問。でも、それがすごい気になっちゃって。ずーっとそれのこと考えてるんですよ。

糸井

俺もそうだよ。

燃え殻

ありますよね。それが１個入っちゃうことによって、全部ダメになっちゃうんですよ。

糸井

わかる。もうまったくそう。

燃え殻

「これだけは外せない。そのタイミング、きっかけ出しますから」って言われたんですよ。「ほかはフリーでお願いします」。

糸井

「自由にやってください」。

燃え殻

「自由にやってください。こっちが全部質問しますから。でも、それだけはお願いしますね。きっかけは出します」。もうそのきっかけ、ずーっと見てました、ぼく。

糸井

だから、テレビは今もう、それの山になっちゃってて。台本の通りに進んで、用意しておいたことを、今考えついたかのように喋って進む。だから確実に望んだ面白さにはなるわけですよ。でも、そこで失われるものについてね、嫌なんですよね。

燃え殻

はいはい、もう、求めてる答えがあるんですよね。

糸井

ある。要するに、こうするとこうなるんですよね、っていうコツと結果みたいになってるんです。話がみんな。

燃え殻

ああ、なるほど、でも、そうかもしれない。
ぼく、今回スマホで小説を書いたっていうことで、取材の答えが決まってることが何度かあったんですよね。シートが来たんです。それにもうすでにぼくの答えが書いてあったんです。

糸井

はいはいはい。

燃え殻

違うこと言ってもいいと。ただ、一応答えは用意してきましたって。「スマホで書いたことによって、スマホ世代の人たちに読まれる小説になりました」って書いてあったんです。

糸井

ああ・・・。

燃え殻

それで、「あ、そうですか」って言って、流れの中で話してて、だけどやっぱりそれが・・・

糸井

引っかかる（笑）。

燃え殻

引っかかる（笑）。

糸井

引っかかるよね。

燃え殻

ワードが使えなかったりとか、あと移動の時間とか普通に仕事してるので、移動の時間とかに書くことが一番効率がよかったんですよね。

糸井

うんうん、実は（笑）。

燃え殻

うん、実は（笑）。
小説に日比谷線とかが出てくるので、その中で書いてると都合がいいんですよ。だけどそれに、スマホ世代の人たちを意識して書いたぼくっていうのを、フレーバーのように入れてる自分がいて・・・

糸井

マーケティングだよね（笑）。

燃え殻

うっすらとその答えに沿わせたんですよ。

糸井

ああ、ああ。ちょっと重いよねえ。

燃え殻

それが仕上がってくると、そこが強調されて出てきたりとかする。

糸井

ぼくも昔、原宿で生活して仕事してるってだけで、「原宿ちゃん」って呼ばれたり、「広告だったら何でも知ってる」ってご意見番みたいに言われたことがあったけど、「そこはぼくはよく知らないですけどね」って言ってたよ。でも燃え殻さんは、自分で書いたものの話だから、断るの難しくなりますよね。

燃え殻

難しいですね。
で、また、ぼくの肩書がまた難しいんですよ。ネットで出すときの肩書、新聞で出すときの肩書、その新聞の種類にもよる、で、雑誌のときに、向こうからある程度、「この肩書どうですか」って、またそれもスッと来るんです。

糸井

いくつもあるわけだ。例えば何がある？　「作家」はある？

燃え殻

「作家」もある。

糸井

「会社員」はある？

燃え殻

「会社員」もあった。

糸井

（笑）。あとは何がある？

燃え殻

「コラムニスト」みたいな。

糸井

ああ、なるほど、なるほど。

燃え殻

「コラムニスト」と言っていいの？　って（笑）。

糸井

はいはい、でも、まあ、あるだろう。

燃え殻

あと、「ライター」と言われたこともある。で、あと・・・「テレビ美術制作」。

糸井

ああ、なるほど、なるほど。

燃え殻

そして「ツイッタラー」。これね、面白半分に言われたんですよ。

糸井

「ツイッタラー」（笑）。

燃え殻

「それでいいです」って言いましたけどね（笑）。「作家」だったら炎上するかもしれないですけど、「ツイッタラー」だったら、バカだって言って笑われて終わりじゃないですか。だったらそっちでいいです。

糸井

もういいかって思ってるわけだね。ぼくももうずっと「もういいか」ですよ。

燃え殻

糸井さんって肩書何なんですか。

糸井

今は多分、「ほぼ日刊イトイ新聞主宰」か、「ほぼ日社長」が増えたな。「コピーライター」もまだまだいっぱいありますし、その３つかな。俺、思うんだけど、地方の新聞に出るときの肩書が一番一般的に通用しやすいんじゃないかね。

燃え殻

本当にそう思う。

糸井

だから、地方の新聞に俺が出てるときには、「ほぼ日主宰」とか書いてあるよりは、「コピーライター」って書いたほうが、なんか落ち着きがいいと思うんですよね。それだったらそれでいいやっていうのを、ぼくはもう最近ほら、「樋口可南子の旦那です」って言うので・・・

燃え殻

（笑）

糸井

もうね、攻めてくの。「楽しめ」と同じ。

燃え殻

より、もっと楽しめばいいじゃないか。

糸井

そうそうそう。

燃え殻

でもね、それ、本当そうなんですよねえ。

糸井

本当そうなんですよ（笑）。楽しめっていう選択肢があるんだってだけで変わると思うよ。

（つづきます）