燃え殻さんに聞いた「書く」ということ
担当・蒼山静花

第2回 風景に自然と重なる「音楽」
- 糸井
-
手帳のなかに、書いてないけど自然に乗っかっちゃうのが
音楽でしょう。このときに、この音楽みたいな。
- 燃え殻
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うん、そうですね。流れてる。
- 糸井
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流れてますよね。どこかに流れてるというか。
- 燃え殻
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そうですね。で、音楽も共有できることじゃないですか。
だから、小説を書いたときに、
ところどころに音楽を挟んでいったんですよ。
それは、自分自身がここでこの音楽がかかってたら
うれしいなっていうのと、
ここでこの音楽がかかってたらマヌケだなっていう、
その両方で音楽は必要だったんで。
そうすると、読んでくれている人が共鳴してくれたり
共有してくれたり、共感してくれるんじゃないかなって
思ったんですよね。

- 糸井
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音楽って、ある種こう、暴力的に流れてくるじゃないですか。
聞きたくなくても耳ってふさげないから。
「そこまで含めて思い出だ」みたいなことっていうのは、
あとで考えるとうれしいですよね。
- 燃え殻
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そうなんですよ。
景色に、風景にひとつ重ねていって共感度とか深度が深まるような気がして。
『ボクたちはみんな大人になれなかった』でいうと、
同僚と最後別れるシーンがあるんですけど、
そこって映画だったりドラマだったら、
やっぱり悲しい音楽が流れてほしいじゃないですか。
そこでAKBの新曲が流れるっていうところを
ボクは入れたかったんですよ。
- 糸井
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いいミスマッチですよね。
- 燃え殻
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そう。もう俺たち会わないなっていうのはわかる。
わかるけど、それは言わないで
「おまえは生きてろ」みたいなことを言う。
で、言ってるときに、AKBの新曲がのんきに流れてるって、
ある、あるよなって、なんかこう‥‥(笑)

- 糸井
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あるある。大いにある。
だから、「自分の主役の舞台じゃないのが世の中だ」
っていうのを表すのに、外れた音楽を流すというのは
すごく、すごくいいですね。
自分のための世の中じゃないとこにいさせてもらってる感じ(笑)。
燃え殻さんの小説にいっぱい出てくるのは、それですよね。
- 燃え殻
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なんかこう、「そこに所在無し」みたいなとこに
ボクはずっと生きてるような気がしていて。
でも、その「どこにも居場所がない」っていう感じで生きてて、
居場所がないっていう共通言語の人と‥‥
- 糸井
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会いたいよね(笑)。
- 燃え殻
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そう、会いたい。
- 糸井
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それは、みんなあるんじゃないですか?どこかで。