- 糸井
- 燃え殻さんの小説を読んだときは、楽しかったですよね。
- 燃え殻
- ありがとうございます。
- 糸井
- やっぱり、俺のことも言っていい、みたいなことをページをめくるごとに感じるところが楽しかった。あと、だるい挑発をしてくるわけです。
- 燃え殻
- だるい(笑)?
- 糸井
- 「喧嘩しよう」じゃなくて、もう燃え殻さん、すでにこう何ていうの、肘で枕して待ってる。

- 燃え殻
- え(笑)。
- 糸井
- で、「俺と世代が違うから違うんだけどね」なんて言いながら、しゃべってるわけです、ぼくは読みながら。
- 燃え殻
- ああ、でも、一番いい。うれしいです。
- 糸井
- 黙読してるときって声帯が動いてるっていう話もあるけど、同じように、読んでるときって書いてるんでしょうね。
- 燃え殻
- ああ、なるほど。
- 糸井
- うん。
- 燃え殻
- ぼく、大好きな小説とかテレビとか、すごい少ないんですよ。少ないんですけど、その好きなものの中に共通してることって、やっぱりそのあとに自分語りをしたくなることだったんです。
- 糸井
- うんうん。
- 燃え殻
- ぼくは「イトイ式」って番組で糸井さんのことが大好きになったんですけど、あの番組がすごかったのは、糸井さんが答えを出さなかったという。
- 糸井
- うん。
- 燃え殻
- 糸井重里はこう言ったけど、俺、こう思うんだよなとか。そういう自分語りをしたくなるものがぼくはすごい好きで。それが自分としても作れたのなら、とてもうれしいというか。

- 糸井
- できてますよね。
- 燃え殻
- すごくうれしいです。
- 糸井
- うん。イトイ式もそうだけれど、ぼくが一番好きなのは場を作ること。
- 燃え殻
- ああ。
- 糸井
- いろんな人がそこに来ると自分らしくなれる、あるいは人の話がどんどん聞けるようになるとか、そういう場ができるのが一番、ぼくにとって喜びなので。
- 燃え殻
- うんうん。
- 糸井
- ぼく自身が作ったものが褒められるというのは、瞬間的にはもちろん嬉しいんだけれど。それよりは、作った場で出てきた他の人が褒められるほうがうれしいんですよね。
- 燃え殻
- あ、それはすごい分かります。
- 糸井
- みんなが集まって何かをするって場を作るのは、ぼくは趣味であり、仕事であり。それは稼ぎにはならないんだけど、ものすごく大好きです。
(つづきます)