本当の「頷き」のうれしさ。燃え殻さん×糸井重里対談
第4回 聞いてもらう、うれしさ。
- 燃え殻
-
ぼくは広告の専門学校に行ってたんで、
学生時代は小説に出てきた横尾忠則さんの
展覧会のチラシを集めたりとか、
「糸井重里さんに会いたい!」と思ったりして(笑)
- 糸井
-
会えてますよ(笑)

- 会場
-
(笑)
- 燃え殻
-
例えば、いろんな人のコピーを切りとって、
それをファイルしてました。
自分で「資料集め」とか呼んでいました。
友達に、「俺、今日資料集め言ってくるわ!」
とかって言って毎週行ってたんです。
でも、その資料っていつ発表するかわからない。
- 糸井
-
ああ、何の資料になるんだろうね。
- 燃え殻
-
何の資料かもわからない。
だから、いつか自分に役に立つであろう資料。
別に課題とかでもないし。
- 糸井
-
イチロー選手が、
バッティングセンターに通ってたみたいなもんだ。

- 燃え殻
-
そうですか?(笑)
- 会場
-
(笑)
- 燃え殻
-
あ、でも、そうかもしれない‥‥
いつ役に立つかなんてわからないけど、
これを集めとかないとって思って、
資料や映画のチラシ集めたりとか。
でも、それは小説のために集めてたのかも
しれないですけど、
そんなことのために集めてなかった、
もっと言うと。
- 糸井
-
ただ集めた。
- 燃え殻
-
ただ集めてた。
で、それは自分として、
これはなんか持っておきたい、
自分として大切なんじゃないか。
で、いつかどこかで何かになるんじゃないかって
淡い、淡い淡い宝くじみたいなことを思いながらやっていて、
これはすぐに役に立つとか、
こうなりたいなっていう努力じゃない
努力をすごいしていたんですね。
- 糸井
-
それは、みんなするのかな、
しないのかな。俺もちょっとしてたな。
- 燃え殻
-
あ、してました?

- 糸井
-
影響を受けた映画とか小説とかの。
例えば、ぼくは、これはマヌケだなと思うんだけど、
今見たらどう思うかわかんないような
『小さな恋のメロディ』みたいな映画があって、
かわいい女の子と男の子が小さな恋をするんだけど、
そこで一番よく覚えてるのは、
瓶に入った金魚が紐でぶら下がってるんです。
そういうのを売りに来る人がいるんです。
で、瓶に金魚を飼ったね、俺。
- 燃え殻
-
それを真似て?(笑)

- 糸井
-
真似てって‥‥
軽蔑したような目で。
- 燃え殻
-
軽蔑してない。
軽蔑してないよ(笑)。
- 糸井
-
じゃあ、なに(笑)
- 燃え殻
-
へぇって(笑)
いや、でも、すごいわかります。

- 糸井
-
だから、他人がやってることとか、
よその人が表現したことも、
もうすでに自分の物語なんですよね。
- 燃え殻
-
そうだと思います。
だから、
コラージュのようにいろいろなものを集めてて、
それはもう自分が考えたことと言ったら失礼ですが、
「それは俺しか知らないんじゃないか、
教えなきゃ」みたいな感じで。
友達に言ったりとかしてましたからね。
- 糸井
-
ああ、
「いいぞあれ」って。
- 燃え殻
-
そう。
そういうことのためにも集めてたのかなあ。
「これいいぞ」って言ったら、
友人が「へぇ」なんて言ってくれて。
- 糸井
-
ああ‥‥
聞いてもらうって、
人間にとってものすごくうれしいことですよね。
- 燃え殻
-
そう。
すごいドーパミンになりますよね。
ぼくの話ってすごいコアなんだけど‥‥
でも、聞いてるほうとしては心地いいのかな。
- 糸井
-
聞いてるほうも、
きっと、ちょっとそう(笑)

- 燃え殻
-
ちょっと、
自分ともシンクロする部分というのを
見つけちゃうのかな。
- 糸井
-
うん。「そうそうそう、俺も」って。
燃え殻さんのあの小説はけっこうそんな感じありますよね。
- 燃え殻
-
ああ、そうかもしれないです。