- 清水
- ここが、社長室なの?
- 糸井
-
うん。
でも、ほとんどミーティングルームだね。
- 清水
- あ、そうなんだ。
- 糸井
-
ぼくが入ったミーティングは
ここで行われる、みたいなことが多いね。
- 清水
- いいね、あんまり重厚感がなくて(笑)。
- 糸井
-
そうね。
それで、どこにも行く場所がないときは、とりあえずここにいればなんとかなる(笑)。
今ね、この部屋に一つ、ぬいぐるみを置く棚を
つくろうかと考えてるんです(笑)。
- 清水
-
(笑)。
今そこにね、もう待機してる。
- 糸井
- ぬいぐるみは、なんか好きでさ。
- 清水
-
へぇー。
意外とメルヘンっぽいとこありますもんね、糸井さん。女の子っぽいというか(笑)。
- 糸井
-
どうだろう。
でも、女の子っぽいと言われてることを、男もしちゃいけないのかなって気持ちはある。
- 清水
- うんうん。今の風潮だ。
- 糸井
- そうか?
- 清水
- そうでしょう。
- 糸井
-
少し前「ダ・ヴィンチ」って雑誌で当時編集長だった横里さんと一緒に、毎月ひと目ぼれした本を紹介する企画をやってたんですよ。
で、「女の子」とか、「オシャレ」みたいなものを、彼は選ぶんだよ。
- 清水
- うんうん。
- 糸井
- それで、彼に「なんでその本選んだの?」って言うと、「いや、かわいいなと思って」ってまず言うの(笑)。
- 清水
- 正直だね(笑)。
- 糸井
-
うん。で、その正直さがすごく気持ちいいわけ。で、説明で、こうこう、こういうことで、「なんか女の子っていいなと思って」って彼が言うんです。
それを素直に言える横里さんに対しておれはすごく尊敬して、あのくらいのところまで行こう!と思ったの(笑)。
- 清水
- なるほどねえ。
- 糸井
-
うん。
うちの社員たちがこのあいだ、よその人と話をしていたときに「ほぼ日の人たちは、相手の人がちょっと何かいいことを言ったり、面白いと思うと『え、それどうやるの? 教えて』ってすごく素直に聞くよね」って言われたんだよ。
- 清水
- へぇー。
- 糸井
- それで、「普通の会社ではなかなかできないですよ。うちのほうがすごいって言いたいから」って。
- 清水
- ああ、そうかも。
- 糸井
- それを社員から聞いて、あ、それはいい。おれはそうだし、「教えて」ってタイプだから。だから、なんかそういう考え方みたいなものが会社に乗り移ってるのはいいことだなと思ってさ。
- 清水
- 似てくるんですよね、人間って不思議と。
- 糸井
- 似てくるんだろうね。
- 清水
- うんうん。じゃあ、ほぼ日の社員の男の人も、かわいいものが好きな人多いかも。
- 糸井
- ああ、そうかもしれないね。こだわりというか、固定概念があんまりないよね。逆に言うと女の子たちも、「ラグビーに行こうぜ」と言ったら、「行こう行こう!」ってスッと乗るし。
- 清水
- へぇー。好奇心が強いのかな。
- 糸井
-
何なんだろうね。男女の色分けがないんじゃないかな。
――逆に俺、インタビューされてるじゃない(笑)。
- 清水
- でも私、もっと聞きたいことあるよ。
- 糸井
- そうなの?
- 清水
-
うん。
いつもは仕事で流れていっちゃうからね。
- 糸井
-
ああ、そうね。うん。
じゃ、お互いしょうがないから、ぼくのところに質問が来たら、それはそれでしょうがないっていう、ね。しょうがないっていうか、まあ別に‥‥
- 清水
- しょうがないとは何ですか(笑)。
- 糸井
- いや、ぼくもね、清水さんについては、言ったり聞いたりしてみたかったのよ。
- 清水
- うんうん。
- 糸井
-
で、改めて伸坊ともそんな話っていうのはあんまりしてないしさ。
しょうもないことは言ってるんだけど(笑)。
- 清水
- あ、わかる。
- 糸井
- 「伸坊ってどうだったの?」みたいなこと、あんまり言ってないんだよ。そういう典型の人が清水ミチコで、アッコちゃんとは案外ね、しゃべってることあるんだよ。人生の深淵について語ったりしてるんだ、たまには。
- 清水
- へえ、そうなんだ。
- 糸井
-
うん。
例えば一緒に気仙沼に行って車で帰るときとかね。うちのマネージャーはおれが寝ちゃうの知ってるから、縦に席取ってくれるの。だから両方が隣が空いてる状態になるよね。でもアッコちゃんは寝ない人らしくて、「ちょっといい?」って言って。
- 清水
- (笑)
- 糸井
- 隣に来て、普通にちゃんとした話をするんだ。
- 清水
- へぇー。
- 糸井
- 何ていうんだろう、音楽で技術に絡むようなタイプのこととかね。
- 清水
- そんなことも話すの?
- 糸井
- 話す。
- 清水
- へぇー。
- 糸井
- あるいは、戦略じゃないんだけど、「同じことやってるとつまんないから、こういうこと考えてる」だとか。と思ったら急に「あの本読んだ」みたいなことだとか。
- 清水
- 脈絡なく。
- 糸井
-
うん。
一つのこう何ていうんだろうな、ビジネスというよりは事業家として発想してることが、矢野顕子はやっぱりあるよね。
- 清水
- ちょっと意外。そうですかね。
- 糸井
- うん。ビジネスって言うと、なんか誤解されるんだけどね。
- 清水
- うんうん、お金儲けじゃなくてね。
- 糸井
- それはきっと、清水さんが見ても同じなんだと思うけど。
- 清水
-
うんうん。とにかく汚れない人ですよね、矢野さんって。
意外と、意外とってことないけど、石川さゆりさんと何回か共演しても、『天城越え』は絶対、やらないもんね。
- 糸井
- やんないですね。
- 清水
- 自分の世界じゃないものはね、上手に身を離すというか。
- 糸井
-
そうだね。
ボルネオのジャングルに入ったときに、このサルにこういうことしちゃいけませんよみたいなことは、しないよね。
- 清水
- 例えが野性的過ぎて、分からない(笑)。
(つづきます)