- 清水
- 私、もともと、糸井さんに聞きたいこといっぱいあった。
- 糸井
- え、そう?
- 清水
- いつも仕事の話になっちゃうけど。
- 糸井
- じゃ、決まりがあるわけじゃないから、今日は清水さんからぼくに質問が来たら、それはそれでしょうがないっていう、ね。
- 清水
- しょうがないとは何ですか(笑)。
- 糸井
- いや、ぼくもね、清水さんについては、言ったり聞いたりしてみたかったのよ。
- 清水
- うんうん。
- 糸井
- 俺が清水さんのステージを見てる歴って、ものすごい長いからね。
- 清水
- ジァン・ジァンのときからだもんね。
- 糸井
- ジァン・ジァンからだからね。ジァン・ジァンより小さいとこでもやってたことあった。原宿でさえやってた。
- 清水
- ありましたね。覚えてる、なんか。
- 糸井
- スチャダラパーとかと同じぐらいの時期だったかな。
- 清水
- この会社は、社員数がもう70人になったって?
- 糸井
- バイト入れると、100人以上。今度100人以上で社員旅行行くんだけど。
- 清水
- どうやるの? 幹事大変ですね。
- 糸井
- そういうの、なんとかなるの、うちは。だって旅の栞とか、もう1冊の単行本みたいなボリュームになってるらしいよ。
- 清水
- (笑)
へぇー。
- 糸井
- 仕事をする労力と同じものを遊びにかけるから、だから、逆にいうと仕事の練習にもなるんで。
- 清水
- そういうものですかね。
- 糸井
- うんうん。
だって、あなただってさ、テレビで寂聴さんが何か言っているのを見て、「いいなあ」と思ってるのは、仕事か遊びかわかんないでしょう?(笑)
- 清水
- ないね、そうだね(笑)。おいしいなあと思ってる。
- 糸井
- おいしいなあって食べてるわけだから、多分同じようなことです。
- 糸井
- 清水さんは、大学の勉強したの? 卒業できるぐらい。
- 清水
- うん。うちの田舎って短大とか大学行く以上は、教師免状を取るのが当たり前みたいな常識があったの。
だから、それを取るまではちゃんと勉強しましたね。
- 糸井
- ドロップアウトをしてないんですよね、つまりね。
- 清水
- うん、してないです。親に心配かけるようなことはしてない。
- 糸井
- なのに、やってることは、ずーっと(笑)。
- 清水
- もう本当とにかくうちの両親は、森山良子さんの「ざわわ」をやめろやめろって(笑)。
- 糸井
- (笑)
- 清水
- でも、弟はわりと本当に真面目なの。私はちょっと真面目そうな顔をした、そうじゃない子なんだけど。
で、私のひいおじいちゃんって人がエイザブロウって名前なんだけど、「嘘つきエイザ」って呼ばれてて(笑)。
- 糸井
- うん(笑)。
- 清水
- ふつうは自分の名誉のためとかお金のために嘘をついたりするけど、そうじゃなくて、本当に自分の楽しみのためにだけ嘘ついてて。
- 糸井
- 性欲のように嘘つきな欲(笑)。
- 清水
- そうそうそう、息をするように嘘をつくの(笑)。
お坊さんのところに行って、「田中んちのじいちゃんが死んだから、すぐ行け!」とか言って、それでお坊さんが真顔で言うと飛んで行くのを見て、1人ですっごい笑ってんだって。「飛んでった、飛んでった」つって(笑)。
- 糸井
- 単純な嘘だね(笑)。
- 清水
- そう。それを何回も繰り返して1人で笑ってたって人が私の祖先なの(笑)。飛騨高山で。
- 糸井
- ひいおじいちゃんは嘘つきかもしれないけど、「私」はちゃんといい子だったんですか。
- 清水
- 私は、いい子でもなく悪い子でもなく、パッとしない子だった。
高校生のときに「ビックリハウス」に載ってた糸井さんの「ヘンタイよいこ新聞」を読んだり、『オールナイト・ニッポン』を聞いたりとかして、だんだんそういうお笑いの世界みたいなのを知って。
- 糸井
- だんだん、パッとしていったわけ?
- 清水
- 自分の中ではパッとしていったんだけど、ほかの人はみんな恋愛してる中で、自分だけが「ビックリハウス」に載ったとか、ラジオで投稿が読まれたとか、幸せの度合いがちょっと違う感じだった。
- 糸井
- だけど、ラジオで投稿が選ばれたり、「ビックリハウス」に載ったりするのって、実はけっこう難しいことで。
俺、今やっても、載る自信ないよ。
- 清水
- 本当ですか。
- 糸井
- うん。
だから、それができちゃってたわけでしょう?
- 清水
- 青春時代ずっと、そんなことばっかり考えてたからね(笑)。
- 糸井
- ハガキ職人ですよね、いわば。
- 清水
- そうそう。ハガキ職人ってけっこう幸せっていうか、夢ありましたよね。
- 糸井
- そうだよね。
ぼくは、そういうお笑いが絡むようなものはできなくて、ポエムを読んだらチョコレートがもらえる番組でチョコレートもらったっていうのがあったけど。
もし「ビックリハウス」みたいな場所だったら、俺は無理だったと思う。俺、昔は二の線だったんだ。
- 清水
- 自分で言った(笑)。社員さんも、笑ってる。
- 乗組員
- (笑)
- 糸井
- おかしいなあ、戻ろうかな、二の線に(笑)。
- 清水
- (笑)
- 糸井
- 松本人志さんが、センター試験みたいな形式の面白いことのテストを作ったことがあったんですよね。
で、ぼくもそれ受けたんだけど、ちっとも面白くないの、自分が。
- 清水
- へぇー。
- 糸井
- で、問題までくっきり覚えてるんだけど、「一番ごっつ濃い鉛筆は何ですか」っていう。
つまりふつうは4Hから4Bまでなんだけど、それを超える濃い鉛筆は何ですかって。
- 清水
- いい質問ですね。
糸井さんは、何て書いた?
- 糸井
- 提出するわけでもないんだけど、「できないよ、俺、できないよ」ってなってるわけ。
そしたら、あとで見たら模範解答が、「鬼B」。
- 清水
- 悔しい(笑)。
- 糸井
- 悔しいだろ?(笑)できないんだよ、俺。
- 清水
- でも、バカリズムさんが、「謎かけができない人の気持ちがわからない」って言ってたけど、きっとそういう個性があるんでしょうね。
だから、普通はできないんじゃない?
- 糸井
- たとえば、『IPPON』みたいな大喜利の番組があるじゃないですか。
もしあれに、清水さんがゲストで呼ばれたらどうですか。
- 清水
- いや、全然無理です。
私はやっぱり、耳で聞いたことを自分なりに、こういうふうに感じましたっていうことを提出する方がいいです。
- 糸井
- 清水さんは「私はこう感じてます」っていうことを表現してるよね。
- 清水
- 当たってます(笑)。
- 糸井
- 批評してないんだよ、全然。
つまり、いいだの悪いだの何も言ってなくて、その真似してる対象の人が、「私にはこう見えてますよ」っていう(笑)。
- 清水
- あ、うれしい。
うん。さすが、うん。
- 糸井
- それが芸になるっていうか、お客も、「そう見えてる、そう見えてる」ってなる。
- 清水
- 「あるある」っていう共感の人が多いでしょうね、お客様。
- 糸井
- 共感ですよね。ツッコみ過ぎないし、相手が立ち直れないようなことはしないじゃないですか(笑)。
- 清水
- そうかも(笑)。
- 糸井
- モノマネだからそういうふうに表現できるわけで、それを文章で書いてもつまんないよね。
- 清水
- うん、そうだと思います。
- 糸井
- でも、清水さんの文章は文章で面白いんですよ。
ぼく、清水さんの文章をもって、「文章の修業をしたつもりのない人がこんな文章を書けるっていうことに、もっとおののいてください」って社内の人に言ったことがあります。
- 清水
- 本当?
わあ、うれしい。頑張ろう。
- 糸井
- ご本人は、文章は何だと思ってるの?
- 清水
- ブログなんかは、今日は1日こういうふうだった、ってことを寝る前に書くとスッキリして寝られるので、排泄みたいな感じですかね(笑)。
- 糸井
- でも、何も思わないで生きてたら、いざ書く段になって書けないじゃないですか。
- 清水
- うんうん。
- 糸井
- 例えばアシスタントの子が気が利くなあって思ったから、そのことを書けるわけじゃない?
だから、普段から何かについて思っている分量は多いよね。
- 清水
- うん、きっと多いと思う。
高校のときにもう自分の「面白ノート」というのがあって、それに真面目なエッセイ欄があって、それを「今回も書きましたけど、どう? 読む?」みたいな感じで回して、その人が笑ってると、もうすごい幸せ! みたいな。
(第2回へつづきます)