糸井

ひいおじいちゃんは嘘つきだったかもしれないけど、
ちゃんといい子だったんですか、「私」は。

清水

私は、いい子でも悪い子でもなく‥‥パッとしない子だったかな。

糸井

へぇ。

清水

でも、それこそ高校生の時に糸井さんの「ヘンタイよいこ新聞」を読んだり、「オールナイトニッポン」を聞いたりして、だんだんそういうお笑いの世界に‥‥

糸井

目覚めていったわけ？

清水

自分の中ではね。楽しかったけど、友達がみんな恋愛してる中で、自分だけが「ビックリハウス」載ったとか、ラジオで投稿読まれたとか、幸せの度合いがちょっと違う感じだった。

糸井

だけど、それって実は難しいことだよね。

清水

でも、青春時代はそんなことばっかり考えてたからね（笑）。

糸井

ハガキ職人ですよね、いわば。
今でも考えればできるもの？

清水

今はもう、無理かもしれないですね。そういうのを試される場面がないし、もう思いついたらライブのネタにするようになっちゃったから。

糸井

でも、何だっけ、『IPPON』みたいな大喜利番組があるじゃないですか。あれどうですか、もしゲストで呼ばれたら。

清水

いや、ああいうのは全然無理です。
バカリズムさんが、「謎かけができない人の気持ちがわからない」って言ってたけど、きっとあるんでしょうね、個性が。

糸井

じゃ、清水さんの、人を面白がらせる個性って何なんでしょう。

清水

私は、やっぱり耳で聞いたことを自分なりに、
「こういうふうに感じました」って提出すると、違っててもおかしいんでしょうね、きっと。

糸井

ああそうだ。昨日、お風呂に入りながら清水さんについて考えてて発見したのが、「『私はこう感じてます』っていうことをしてる」だったの。

清水

あ、当たってます（笑）。

糸井

ねえ。なぜそう考えたかというと、批評してないんだよ、全然。
つまり、モノマネする対象の人に向かって、いいだの悪いだの何も言ってない。

清水

嬉しい。

糸井

ただただ、「私にはこう感じられちゃってますよ！」っていう（笑）。

清水

そうかも、うん。さすが（笑）。

糸井

たとえば強気な発言をする芸能人がいて、その人を見るみんなの目って独特なものがあると思うんだけど、それでさえ、
「私にはあなたがすごく強気なことを言ってる人として、『面白いなあ』と思って見られちゃってますよ！」っていう（笑）。

清水

そういうのも「面白がりましょうよ」って気持ちはあるからね（笑）。

糸井

そうするとお客が、「そう見えてる、そう見えてる」って（笑）。

清水

そうそう。お客様は共感の人が多いでしょうね、きっとね。

糸井

弾き語りモノマネも、今日の明日じゃできない、個性だよね。

清水

ああ、そうかもね。それはやっぱり私が10代の頃にすごい感銘を受けたから。
きっと悔しかったんでしょうね。「私が矢野顕子になるはずだったのに」みたいな（笑）。

糸井

その心って大事かもね。その‥‥何ていうの、思い上がった（笑）。

清水

どこからきた自信なんですかね。
でも、今でも練習してると「もうちょっと頑張ったら矢野さんになれるんじゃないか」と思ってる自分がいるの。

糸井

ああ。

清水

基本ができてないだけで、もう少しやればとか。
そういう変な希望みたいのがあるんですよね。

糸井

矢野顕子にあって、清水ミチコにないものは何なの？

清水

あ、それは音感とか指の動きとか。ピアノから何から、音楽性まで。

糸井

でも、矢野顕子からしたら同じ道で、「振り向いたら後ろに清水がいた」くらいのとこにいるわけだ。

清水

いないいない。全然レベルが違う（笑）。

糸井

でも、「遠くに見える」っていうところにはいるんじゃない？（笑）

清水

いないと思う、多分。

糸井

だって、ライブでは2人でピアノ並べて弾いてたじゃないですか。

清水

あれは、矢野さんが一筆書きでササッと書いたのを、私が「どういうふうにやったか」って綿密にひたすらコピーして頭の中に入れて、さも「今弾きました！」みたいなふりをしてるだけ。

糸井

でも、思えばそれもさっきの「あなたのやってることはこう見えてますよ」っていうことだよね。

清水

あ、そうですね（笑）。それだったらうれしいね。

（つづきます）