もくじ
第1回わたしには、矢野顕子がこう見えてるよ。 2019-02-05-Tue
第2回ぼくには、矢沢永吉がこう見えてるよ。 2019-02-05-Tue
第3回ふたりには、これからがこう見えてるよ。 2019-02-05-Tue

「The U(ザ・ユー)」ウェブマガジン編集長。イラストレーター。デザイナー。2月28日まで原宿のカフェ「bio ojiyan cafe」で個展開催中。

ふたりから見たアッコちゃんと永ちゃん。

ふたりから見たアッコちゃんと永ちゃん。

担当・マスダ ヒロシ

古くから付き合いのある、清水ミチコさんと糸井重里さん。

自分より人に興味のあるもの同士、自分のことよりも、
ついつい、まわりの人についておしゃべり。

ふたりが大好きな矢野顕子さんと矢沢永吉さん、
そして、これからのことが
ふたりの目にはどう見えているのでしょう。

おかしくて、真剣な対談は、全3回です。
どうぞ、おたのしみください。

プロフィール
清水ミチコさんのプロフィール

第1回 わたしには、矢野顕子がこう見えてるよ。

清水
これ社長室なの? これで。
糸井
うん。でも、ほとんどミーティングルームとして使ってるね。
清水
いいね、重厚感がなくて(笑)。
ここの社員、もう70人になったって?

糸井
70何人。
清水
バイト入れると100人になるってこと?
糸井
そうだね。今度、社員旅行、行くんだけど。
清水
100人で?
どうやるの? 幹事大変ですね。
糸井
そういうの、なんとかなるの、うちは。
だって旅のしおりとか、
もう1冊の単行本みたいになってるらしいよ。
清水
(笑)

糸井
仕事をする労力と同じものを遊びにかけるから、
だから、逆にいうと仕事の練習にもなるんで。
清水
そういうものですかね。
糸井
うんうん。だって、清水さんだってさ、
瀬戸内寂聴さんが何か言ったのをテレビで観て、
いいなあと思ってるのは、
仕事か遊びかわかんないでしょう?(笑)
清水
そうだね(笑)。

糸井
ここに、ぬいぐるみを置く棚を一つ作ろうと思ってて(笑)。
何ていうの、残したいようなぬいぐるみがあるんですよ。
清水
ああ、あれは「おれ、ゴリラ」じゃないんですか。
糸井
「おれ、ゴリラ」の復刻版ですね。
清水
わたし、昔あれ持ってて、めっちゃかわいがった。
糸井
え、あれを持ってたんですか。
清水
持ってたの。それはなんでかっていうと、
親が清水屋商店でお菓子を売っていたので、
明治の人が来てくれて、なんか特別なルートで手に入れて。
糸井
そうでしょう。あれ持ってる人はエリートですよ。
清水
オッホッホッホッホ(笑)。
糸井
いや、本当に(笑)。
抽選で当たるってキャンペーンだったんだけど、
広告が「おれ、ゴリラ。おれ、景品。」っていうコピーで。

清水
すごーい。
糸井
で、そのコピーを書いたのが、
誰あろう土屋耕一さんというぼくの憧れの人で。
そのコピーとゴリラをプレゼントするってこと全部が、
なんておもしろいことしてるんだろうと思って、
ぼくにとってゴリラは憧れのものだったんです。
清水
その憧れのゴリラはどうやって?
糸井
当時、石坂浩二さんにもらったの。

清水
え、なんで?
糸井
石坂さんちに行ったら、あって。
清水
まだ学生ぐらいの歳でしょ?
糸井
二十歳ちょっとぐらいだったんだけど、もう仕事してたんで。
清水
へぇー。
糸井
で、石坂さんがタレントの仕事をしてて、
結婚したばっかりの時期だったんですよ。
清水
あ、浅丘さんとね。
糸井
うん。「じゃ、原宿のあの交差点で待ってろよ」とか言って、
パジャマの上にコートを着た石坂さんが、
ポルシェのオープンカーで、「やあ!」って。
清水
へぇー。
糸井
で、おれを車に乗せて、マンションに行って、
そこでご飯は作ってくれるし、
体のどこが痛いって言うと按摩してくれるし。
清水
なんでそんなかわいがられたの?
糸井
いい人なのよ、あの人。

清水
まあでも、本当にいい方ですよね。
糸井
いい人なの。
清水
わたしと光浦さんが4、5年前にサイン会か何かやってたときに、
「あれ石坂浩二さんじゃない?」って言って、
見たら、普通にお客さんとして立ってて(笑)。
糸井
(笑)
清水
「見に来たんだよ」なんつって、
なんてフットワーク軽いんだと思ってビックリしちゃった。
糸井
うん。おれ知ってる中でも、「いい人番付」に絶対いる人だよ。
清水
その頃、糸井さんの仕事って何?
糸井
コピーライターだったの。
養成講座から出たばっかりで就職して‥‥って、
逆にインタビューされてるじゃない(笑)。

清水
でも知りたい(笑)。
糸井
で、ちっちゃい会社に入ったら、
そこがたまたま少し大きめの仕事を取ってこられたんで、
おれしかそれやる人いないんで、
やってたら、なんか石坂さんと馬が合ったというか、
おもしろがってもらって、
で、その頃はけっこう付き合ってもらってたんです。
清水
へぇー、ラッキーでしたね。
糸井
うん。 
当時、石坂さんは明治製菓のコマーシャルに出てたから、
ゴリラを持ってて。「憧れの!」って言ったら、
「そんなに気に入ったなら、持っていっていいよ」って、
ゴリラ抱いて帰ってきた。
清水
二十歳過ぎた人が、ぬいぐるみもらったんだ(笑)。

糸井
ぬいぐるみは、なんか好きでさ。
清水
へぇー。
意外とメルヘンっぽいとこありますもんね、糸井さん。
女の子っぽいというか(笑)。
糸井
女の子っぽいと言われてることを、
男もしちゃいけないのかなって気持ちがある。
清水
そうだ、今の風潮だ(笑)。
糸井
前に「ダ・ヴィンチ」って雑誌で、
編集長だった横里さんと一緒に本を選ぶ仕事を
毎月やってたんですよ。
(ダ・ヴィンチ連載「この本にひとめ惚れ」)
 
でね、女の子が好きそうな、オシャレな本を彼は選ぶんだよ。
清水
うんうん。
糸井
なんかすげえなと思って
「なんで、それ選んだの?」って彼に聞くと、
「いや、かわいいなと思って」ってまず言うの(笑)。
清水
正直だね(笑)。
糸井
うん。
で、その正直さがすごく気持ちいいわけ。
でね、もっと聞くと、
「なんか、女の子っていいな‥‥と思って」って言うんです。
清水
羨ましいんだ(笑)。
糸井
で、おれはそれを素直に言える横里さんをすごく尊敬して、
あのくらいのところまで行こうと思ったの(笑)。

清水
そのぐらいに行こうと(笑)。
糸井
そう。
このあいだ、よその人と話をしてて、
「ほぼ日の人たちは、自分たちがやっているようなことでも、
相手の人がちょっと何かいいこと言うと、
『え、それどうやるの?教えて』ってすごく素直に聞く」って。
清水
へぇー。
糸井
で、「普通の会社はなかなか聞いてこないんですよ。
うちのほうがすごいって言いたいから」って言うわけ。
清水
ああ、そうかも。
糸井
って聞いて、あ、それはいい。
おれは「教えて」ってタイプだから、
そういう心が会社に乗り移ってるのはいいことだなと思ってさ。
清水
人間って不思議と似てくるんですよね。

糸井
似てくるんだろうね。
清水
うん。じゃ、ほぼ日の男の人も、
かわいいものが好きな人多いかも。
糸井
ああ、そうかもしれないね。
こだわりがないよね。
逆に言うと女の子たちも、
「ラグビーに行こうぜ」と言ったら、スッと乗るよね。
清水
へぇー。好奇心が強いのかな。
糸井
何なんだろうね。
男女の色分けがないんじゃないかな。
清水
へぇー。
糸井
たぶんね。

清水
なんかこのあいだテレビ観てたら、
平成生まれの若い人の生き方って番組で、
こういうようなスペースで共同に暮らしてて。
そんなことできそうですね。
わたしは絶対無理だけど。
糸井
シェアハウス?
清水
そう、シェアハウスみたいなの。
糸井さん、できそうですよね。
糸井
今ではできるかもしれないけど、
できる人に対して、もっと偏見を持ってたね。
「ダメだ、できちゃ」って思ってたね(笑)。
清水
恥ずかしがれよって(笑)。
糸井
うん。だっておれ、男子校だもん。
清水
そんなに関係する?
やっぱり10代の3年間って。
糸井
うん、するよ。女の人はもう何というか、神様だもん。

清水
憧れなんだ。
糸井
憧れだもん。
すごいな。気づいたら、全部、インタビューされてるな。
清水
そう(笑)?

糸井
清水さんのステージを見てる歴って、
おれ、ものすごい長いよね。
清水
渋谷にあったライブハウス
「ジァン・ジァン」に出てたときからだもんね。
南(伸坊)さんと原宿のちっちゃいところも
来てくれましたよね。
糸井
行ったよね。
だいたい娘を連れて行くことが多くて。
清水
そうだ。小学生の。
糸井
そうそうそう。
いや、ぼくもね、清水さんとは、
言ったり聞いたりしてみたかったのよ。

清水
うんうん。
糸井
「どうだったの?」みたいなこと、
あんまりしゃべってないんだよね。
アッコちゃん(矢野顕子さん)とは、
たまに人生の深淵について語ったりしてるんだよ。
清水
へぇー。
糸井
うん。例えば一緒に気仙沼から新幹線で帰ってくるときとか、
おれが寝ちゃうの知ってるから、
うちのマネージャーは縦に席取ってくれるの。
 
で、隣の席が空いてるるんだけど、
アッコちゃんは寝ない人らしくて、
「ちょっといい?」って言って。
清水
(笑)
糸井
隣に来て、普通にちゃんとした話をするんだ。
清水
へぇー。

糸井
例えば、アッコちゃんが上原ひろみさんと
演奏したあとに足を痛めた話って知ってる?
清水
知らないです。なんで足なの?
糸井
ペダル。
清水
ペダル踏み過ぎってこと?
糸井
ペダル、ガンガンものすごい、
普段使わないぐらいに踏むから。
清水
えぇー?
糸井
足の筋肉おかしくなっちゃったみたい。
清水
カッコいい(笑)。
糸井
カッコいいだろ?(笑)
清水
素人から、そのコメントは出ないね(笑)。

糸井
そんなことから、あるいは、戦略じゃないんだけど、
同じことやってるとつまんないから、
こういうこと考えてるだとか、
急に「あの本読んだ」みたいなことだとか。
清水
へぇー、脈絡なく。
糸井
うん。何ていうんだろうな、ビジネスというよりは
事業家として発想してるところ、あるよね。
清水
え、意外。
そうですかね、へぇー。
糸井
例えばサッカーやってる人が
サッカー界をどうしていくかって考えるじゃないですか。
それとか、このチームをどう立て直すかとか。
みたいなことを、アッコちゃんはずいぶん考えてるよね。

清水
ああ‥‥。
糸井
それはきっとね、清水さんが見ても同じなんだと思うけど。
清水さんは、学校で勉強したの?
大学を卒業できるぐらい。
清水
うん。でも、家政科だから、
うちの田舎って短大とか大学行く以上は、
教師免状を取るのが常識みたいなところあったの。
だから、それを取るまではちゃんと勉強しましたね。
糸井
へっちゃらなんだ、そういうの。
清水
へっちゃらってことはないですけど、
でも、料理は好きだし、おもしろかった。
糸井
ドロップアウトをしてないんですよね、つまりね。
清水
うん、してないです。
親に心配かけるようなことはしてない。
糸井
なのに、やってることは、ずーっと(笑)。
清水
もうとにかく、うちの両親は、
森山良子さんの「ざわわ」をやめろやめろって(笑)。

糸井
(笑)
清水
「まあまあ、もう今年でやめますから」
つって30年もやって(笑)。
糸井
森山良子さんを見てるとき、
清水ミチコを思い浮かべるように(笑)‥‥
清水
なっちゃうじゃないか(笑)。
糸井
なってしまう(笑)。
清水
うちの家系のひいおじいちゃんって、
清水えいざぶろうって名前なんだけど、
「嘘つきえいざ」って呼ばれてて(笑)。
糸井
うん(笑)。
清水
お金や名誉のためじゃなくて、
自分の楽しみだけに嘘をついていた人で。
糸井
性欲のように、嘘つき欲(笑)。
清水
そうそうそう、息をするように(笑)。
お坊さんのところに行って、
「田中んちのじいちゃんが死んだから、すぐ行け」とか言って。
 
真顔で言うと、お坊さんが飛んで行くでしょう?
それを見て、1人ですっごい笑ってんだって。
「飛んでった、飛んでった」つって(笑)。
糸井
単純な嘘だね(笑)。
清水
そう。それを何回も繰り返して
1人で笑ってた人がわたしの祖先なの(笑)。
糸井
おじいちゃんは嘘つきかもしれないけど、
「わたし」はいい子だったんですか。
清水
わたしは、いい子でもなく悪い子でもなく、
パッとしないような子だったけど、
やっぱり糸井さんの『ヘンタイよいこ新聞』とかを
高校のときに読んだり、
『オールナイトニッポン』聴いたりとかして、
そういうお笑いの世界に惹かれてて。
糸井
パッとしていったわけ?
清水
自分の中では、パッとしていったけどね。
みんなが恋愛してる中で、
自分だけ雑誌の『ビックリハウス』に載って喜ぶとか、
ラジオで投稿を読まれて喜んだり、
幸せのものさしがちょっと違う感じだった。
糸井
だけど、『ビックリハウス』載ったり、
ラジオで選ばれたりするのって、実はけっこう難しいことで。
清水
そうかな。
糸井
うん。今、やれよといって、載る自信、おれないよ。
それができちゃったわけでしょう?
清水
あ、でも、そんなことばっかり考えてたからね、
青春時代ずっと(笑)。
糸井
ハガキ職人ですよね、いわば。
清水
そうそう。
ハガキ職人ってけっこう幸せっていうか、夢ありましたよね。
糸井
そうだよね。
ぼくはね、そういうお笑いが絡むようなものはできなくて、
ポエムを読んでチョコレートをくれる番組があったんだよ。
それで、誰かが当選したって聞いて、
おれもやったら、もらったことはあった。
 
でも、もし『ビックリハウス』みたいな企画だったら、
おれは無理だったと思う。
お笑いじゃない人だったから、おれ。
二の線(二枚目)だったから。
清水
自分で言った(笑)。
そして、社員が笑っている(笑)。

糸井
え、投稿するネタは、いつも考えればできるの?
清水
今はもう、無理かもしれないですね。
そういう試されるときがないから。
もう思いついたら、ライブのためのネタにしてるっていうかね。
そういうふうになっちゃったから。
糸井
松本人志さんが、全国共通一次みたいな
お笑いのテストを作ったことがあったんですよね。
で、なんでか知らないけど、ぼくもそれをやったんだけど、
ちっともおもしろくないの、自分が。
清水
へぇー。
糸井
で、中でも、くっきり覚えてるんだけど、
「一番ごっつ濃い鉛筆は何ですか?」っていう問題。
つまり4Hから4Bまであるんだけど、
それを超える濃い鉛筆は何ですかって。
清水
いい問題ですね。
糸井
で‥‥
清水
何て書いた?
糸井
できないよ、おれ、できないよ、みたいになったわけ。
提出するわけでもないんだけど。
そしたら、あとで見た模範解答が、「鬼B」。
清水
(笑)。悔しい(笑)。
糸井
悔しいだろ?(笑)

清水
なんか悔しい(笑)。
でも、ああいうのって、バカリズムさんが、
謎かけができない、人の気持ちがわからないって言ってたけど、
あるんでしょうね、きっと個性が。
糸井
できないんだよ、おれ(笑)。
清水
普通できないんじゃない? やっぱり(笑)。
糸井
でも、『IPPONグランプリ』みたいな番組も、
めちゃくちゃおもしろいじゃないですか(笑)。
清水
すごいよね。
糸井
あれどうですか、清水さん。
もしゲストで呼ばれたら。
清水
いや、全然無理、全然無理です、
やっぱりああいうことって。
糸井
じゃ、清水さんのあのおもしろがらせるのは、何あれ。
清水
わたしは、やっぱり耳で聞いたことを自分なりに、
こういうふうに感じましたっていうことを提出すると、
違っててもおかしいんだろうね、きっと。

糸井
昨日、ああ、そうだ、明日清水さんに会うんだなと思って、
何か一つぐらい自分で、「これを思ったんだよね」
ってこと言いたいなと思って発見したのが、
「『わたしはこう感じてます』っていうことをしてるんだね」
ってことだったの。
清水
あ、本当?あ、当たってます(笑)。
糸井
ねえ。で、批評してないんだよ、全然。
清水
あ、うれしい。
糸井
つまり、いいだの悪いだの何も言ってなくて、
その真似してる対象の人が、
「わたしにはこう感じられちゃってますよ」っていう(笑)。
清水
(笑)。そうかも、うん。さすが、うん。
糸井
通信販売をする瀬戸内寂聴さんの
モノマネとかあるじゃないですか。
清水
はい(笑)。
糸井
あのとおりしてないんだけど、
わたしにはそう見えてますよっていうだけでしょう?
清水
そうですね、うん。
糸井
いいとか悪いとか、一つも言ってないんですよ(笑)。
清水
(笑)。うん、あんまり善悪関係ないかもね。
糸井
ねえ。たとえばある芸能人がいて、
まあ、強気なことを言ってる
っていうのはみんなが感じてることだけど、
それを、「わたしにはあなたのことは、
すごく強気なことを言ってる人として、
おもしろいなあと思って見られちゃってますよ」
っていう(笑)。

清水
そうですね(笑)。
糸井
そうするとお客さんが、
「そう見えてる、そう見えてる」って(笑)。
清水
「あるある」つって、そうそうそう(笑)。
そう、お客さんは、
共感しておもしろがってくれる人が多いでしょうね。
糸井
共感、共感ですよね。ツッコみ過ぎないじゃないですか。
清水
あ、そうですね(笑)。
糸井
マネされた人が、
立ち直れないようなことしないじゃないですか(笑)。
清水
そうかも(笑)。
糸井
でも、弾き語りモノマネはできないよね、今日明日じゃ。
清水
ああ、そうかもね。
それはやっぱりわたしが10代の頃にすごい感銘受けたから。
悔しくて練習したんでしょうね、きっと。
「わたしが矢野顕子になるはずだったのに」みたいな(笑)。
何という自信なんですかね(笑)。

糸井
いやいやいや、いやいやいや。
その心って大事かもね。
その、何ていうの、不遜な心(笑)。
清水
でも、今でも、練習してて、
もうちょっと頑張ったらなれるんじゃないか
と思ってる自分がいるの。
糸井
ああ。
清水
基本ができてないだけで、もう少しやればとか、
そういう変な希望みたいのがあるんですよね。
糸井
矢野顕子にあって清水ミチコにないものは何なの?
清水
あ、それは音感。
糸井
音感、ああ。指の動きとかではなくて。
清水
あ、指ももちろん。
ピアノから何から、そうそう、音楽性。

糸井
でも、同じ道で、振り向いたら後ろに清水がいた、
ぐらいのとこにいるわけだ。
清水
矢野さん?
いない、いない、全然。
全然レベル違う、それは。
糸井
でも、同じ道の遠くにはいるんじゃない?(笑)
清水
いないと思う、たぶん。
糸井
だって、ピアノ2台くっつけて演奏やってたじゃないですか。
清水
あれも、矢野さんは一筆書きでササッと書いてるんだけど、
わたしはそれを綿密に、どうやったかっていうのを
コピーしてコピーして頭の中入れて、
さも今弾きましたみたいなふりをしてるだけで、
それはやっぱりすぐわかりますよ。全然違う。
糸井
思えば、さっきの瀬戸内寂聴さんをやるときと同じともいえるね。
「あなたのやってることはこう見えてますよ」
っていうことだよね。
清水
あ、そうですね(笑)。
糸井
そういうことですよね。
だから、似顔絵とかもそうじゃないですか。
清水
ああ、本当だ。
第2回 ぼくには、矢沢永吉がこう見えてるよ。