高田純次さんと浦沢直樹さんが毎週日曜に放送している
文化放送のラジオ番組「純次と直樹」に
糸井重里がゲストで招かれ、
特別番組としてオンエアされました。
その番組の収録時間は余裕の2時間半超え!
3人の短い言葉のやりとりに潜む
絶妙な味わい深さをあらためて楽しんでいただけるように
「ほぼ日」のテキストにして、
みなさまにお届けいたします。
ラストの高田さんのノーパンの話は、
同席したスタッフは今も忘れることはできません。
- 高田
- 糸井さん。
『雪列車』の歌詞の
「匂うように 笑うように 雪が降る」というのは、
どんなふうにして出てきたんですか。
「無邪気色の ひざかけを かけて眠る」みたいな言葉は
普通の生活では出てこないですよ。
- 糸井
- えーっとですね、それはあるとき、
作詞とは全く関係なく
「女の人が髪を切る」ことについて考えたからです。
女の人が髪を切るのは
人に誤解される可能性があるんだなあと
ふと思ったことがあって。
- 高田
- 「失恋したのかな?」とか、
言われがちですもんね。
- 糸井
- そうそう。
『雪列車』はそのタイトルのとおり
「雪の中を汽車が走っている」歌です。
その情景を演歌っぽく書きたいと考えているときに
なにげなく髪を切るのは
幸せなときしかできないんだな、と
考えたことを思い出して。
それを中心に歌の世界を考えました。
- 高田
- じゃあ、歌詞を書くときは、
心の中の蓄積を引き出してくる、
みたいなことをやるのでしょうか。
- 糸井
- そうですね。
お笑いのみなさんの
「あるあるネタ」に近いところが
やっぱりあるんじゃないかと思います。
- 高田
- 毎日をかなりシャープに暮らしてますねぇ。
- 糸井
- フラットですよ。
- 浦沢
- (笑)
- 糸井
- でも『雪列車』を書いた頃は、僕もまだ若かったから
褒められたいっていう気持ちがあって、
今作るものよりもいっぱい仕掛けを入れています。
「無邪気色のひざかけ」なんていうのはもう
ウケるってわかって書いたと思う。
- 高田
- 普段、何を食べたら素敵なコピーが書けるんですか。
- 糸井
- また唐突に(笑)。
- 高田
- ああいう言葉は、主に
何を食べると出てくるんでしょうね。
- 浦沢
- 季節のものじゃないですか?
- 高田
- 季節のものなの(笑)?
- 糸井
- わははは、そうです、
ひとつは季節のものですね(笑)。
それは公園にたまたまなっていた桑の実も含めて。
- 高田
- 公園の桑の実を食べたら
ああいう言葉が出てくるのか。
- 糸井
- でも、真面目な話、
「安い・高い」でものごとを考えないのは、
けっこう重要な気がします。
人の一般的な行動として、
マツタケと柿が並んでいたら、
マツタケを選んじゃう、ということがある。
でも、柿が食べたい場合は柿を選べばいい。
これは案外重要な気がします。
- 高田
- ほっほう。
糸井さんのところには、
弟子入り希望者は来ないですか。
- 糸井
- 僕がフリーのときはありましたけど、
今はもう、ほぼ日は会社ですからね。
たぶん、浦沢さんのような漫画家のみなさんも
そうでしょうけど、
弟子になりたいと来てくれても、
あまり大事にはできないと思うなぁ。
- 浦沢
- 「なるべくやめろ」「早いうちにあきらめろ」って、
僕も言いますね。
漫画の連載のようなことで、
生活できること自体が
やっぱりちょっとおかしいですから。
でも、やりたい気持ちは抑えられないと思う。
だからとにかく自分でやってみて、
なにかに気づくところまで
いけばいいんじゃないかな?
という感じで思っています。
- 高田
- でも、そう言われてもさあ、
コピーライターとか漫画家になりたくて
やってくるわけじゃない?
その気持ちを完全にカットするのは
厳しいよねえ。
(と言い終わらないうちに、お菓子を食べ始める)
- 糸井
- わ。
- 浦沢
- 今、お菓子食べちゃうんですか(笑)。
- 高田
- これ、なにかなと思って。
- 浦沢
- 高田さんってね、
普段の番組の収録でも
キュー(収録スタートの合図)が出たとたんに
歌舞伎揚を口に入れちゃうんですよ(笑)。
- 糸井
- どうして!
- 高田
- ちょこちょこ食べていると、
なんだか頭の中からいいものが
出てきそうな気がするんです。
- 糸井
- ‥‥とてもいいと思います(笑)。
- 浦沢
- 僕が横から小さい声で
「お水! お水飲んで!」って言ったら、
「今、お口の中がおいしいから飲みたくない」
って。
- 糸井
- (笑)
(つづく)
2018-12-12-WED
協力:文化放送 編集:中川實穗
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