「メモ魔です」と語る、ラジオDJの秀島史香さん。
プライベートでも、ラジオの生放送中でも、
思いついたことがあれば手帳やメモに
すぐに書き込んで頭に留めておくんだそう。
9月に銀座ロフトで開催したイベント
『書く!展』のトークイベントでは、
飾らない、本音の言葉のやりとりで
糸井重里とおおいに盛り上がりました。
「書く」ことから「しゃべる」ことへ、
テンポよく話題が転がるようすをおたのしみに。
全6回、銀座ロフトからオンエア!
苦手な人とはどう話す?
- 秀島
- 私、糸井さんとお話しするのは今日が初めてですが、
お仕事での接点があったのを思い出しまして。
糸井さんがイチローさんと対談をされた、
NHKのお正月番組
(『イチロー 僕の歩んだ道』)で
ナレーションを担当させていただいたんです。
- 糸井
- ついさっき、
ほぼ日のスタッフから聞いて驚いたんです。
そうだったんですねえ。
- 秀島
- そこで糸井さんに伺いたいのですが、
「メジャーリーガー」とか「女優さん」とか、
ちょっと緊張するようなお相手に
お話を訊くときのスタンスはどうされていますか。
- 糸井
- 普通でいるようにしているのか、
それとも何か考えて臨むのか、ですね?
ぼくは普段どおりですね。
秀島さんはどうですか?
- 秀島
- 私は、うーーん‥‥、
いちリスナーとしてしか訊けませんね。
- 糸井
- ああ、ぼくもそうですよ。
本来であれば、ぼくにとって野球選手は神なので、
イチローさんは神様であるはずなんですよ。
ただ、ユニフォームを脱いでさえいれば、
ぼくは何でも言えちゃうんです。
- 秀島
- あっ、そうなんですか。
- 糸井
- 失礼のない程度に普通に話せるんで、
「もしかしたら、こう言うと嫌かもしれませんけど」
「失礼な意味じゃなくて訊きますけども」
といった前置きをしてから質問するんです。
- 秀島
- それ、いい言葉ですね。
先に申し送りをして、そこから質問する。
- 糸井
- そうそう。
それで質問に答えてくれたら、
あとは人間同士のキャッチボールができますから。
- 秀島
- そうですね。
- 糸井
- でもね、ユニフォームを着ちゃうとダメ。
野球選手がユニフォーム着た途端に、
「ああ、あっ、頑張ってください」って(笑)。
- 秀島
- あはは、野球少年だ。
- 糸井
- ぼくがすごいなって身構える相手は、
野球選手がユニフォームを着たときだけです。
苦手な人でいうと「ぼくをエラいと思いなさい」
というタイプの人かな。
「ちょっと偉く扱わないと、ぼくは怒るかもよ?」
という人がいたら、逆にからかいたくなります。
- 秀島
- そんなことができるんですか?
- 糸井
- 仕事でやらなきゃならないのであれば、
「ああ、そうですか。おかしいですね」とか
「わざとですか?」とか言いますね。
べつにイジワルなんじゃなくて、
そのぐらい変なんですから。
ただ、ありがたいことに、
ぼくは嫌な人と会わないで済んでいるんですよ。
- 秀島
- なぜですか?
- 糸井
- レギュラーで仕事をしていないから。
- 秀島
- ああ、なるほどー!
- 糸井
- 「この人と会いますか?」と依頼があっても
「嫌です」って断ればおしまいですから。
- 秀島
- この会場にも人間関係で悩んでいるかたが
いらっしゃるのかなと思うんですが、
普段の生活や職場とかで
話がうまく合わない人っていませんか?
「ちょっとこの人、苦手なんだよね。
どうやってつきあったらいいんだろう」
とこまねいてる方に対してのアドバイスを
糸井さんからいただけないかと。
- 糸井
- まずは、会わないのが一番いい。
そこに使うコストは結構高いんです。
「嬉しいな」と思ってやっていることは、
どんどん前に進んでいくから、
じぶんも気持ちよくて、人のためにもなります。
「嫌いな人に、俺の気持ちを分かってもらおう」
と思って使っている時間は何も生まないんですよね。
- 秀島
- 非生産的ですね。
- 糸井
- しかも、相手も気持ちよくならないんですよ。
「うまいこと言って俺をたぶらかそうとして。
ますます嫌いだ」みたいなことにもなりかねない。
- 秀島
- 無理をしないということですかね。
- 糸井
- イカが逃げていくときみたいに
ゆら~っと逃げましょう。
- 秀島
- ゆら~っと(笑)。
なるほど、勉強になります。
- 糸井
- どうしても苦手な人といっしょになった場合は、
その人との戦いよりも、何を実現するかに、
頭を切り替えるんじゃないのかな。
- 秀島
- じぶんのやりたいことや好きなことに、
焦点を合わせるんですね。
- 糸井
- そう。嫌いな人の話をしているじぶんは、
ノーアイデアでいることが多いんですよ。
- 秀島
- ああ!
- 糸井
- どうしたらいいのかよく分かっていなくて、
暇なときに嫌いな人の話をしている。
本当にやることがあるときは、
その話をするのももったいないから。
苦手な人との関係をどうしようかって
考える時間が、わりともったいな‥‥
あっ!!
そうか、嫌な相手が上司という場合があるな。
ああっ、ごめん!
ぼく、上司がずっといないんだよね。
もう少し考えてみます。
- 秀島
- そうですね、ありがとうございます(笑)。
私も、人との付き合い方について
ラジオで相談されることがあって、
「うわーっ、どうしよう!」と思うんですよね。
- 糸井
- ええと、まとまりました。
上司なら自ら突っ込んでいっちゃったほうがいい。
ぼくには嫌いな上司とかいなかったんだけど、
嫌なところは誰にだってありますよね。
もちろん、ぼくにもありますよ。
そのときに調子のいいことを言って済むなら、
FMになっちゃえばいいんだよね。
- 秀島
- あはは、「いいお天気ですね~」っていう。
- 糸井
- そうそうそう。
「ほんと、失恋の時期ですよね~」みたいな。
それで「バカじゃないか?」って言われたら、
「バカですよね~」って(笑)。
- 秀島
- ああ、なるほど。
- 糸井
- でもそこで、本当にバカにするんじゃなくて、
なんとかしたいと思いながらやるしかない。
上司は敵じゃないわけで、
その上司にとって上手に使われてくれる人のほうが
ありがたいわけですから。
「あいつ、ゴマすりだな」とか思われても、
手足の一本ぐらい食わせたらどうですかね。
- 秀島
- タコみたいにまた生えてくると思って(笑)。
- 糸井
- もっと、調子のいい人になればいいじゃない。
実現したいことに近づくのはそっちですよ。
- 秀島
- そこでうまくいくんだったら、ねえ。
(つづきます)
2018-10-25-THU
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN