『日本の神様』著者、
畑中章宏さん。
おかしな一団のリーダー役。
神様が好き。

グラフィックデザイナー、
祖父江慎さん。
あちこち寄り道するのが
大好き。

イラストレーター。
100%ORANGEの
及川賢治さん。
虫が好き、ハイキング好き。
ほぼ日乗組員。
ふりまわされるのが好き、
首をつっこむのも好き。
デコボココンビ。
北野天満宮を
案内してくれます。
かっこいい権禰宜さん。
大将軍八神社を
案内してくれます。
人気者の宮司さん。
第3回 雷の神様。
ほぼ日
北野天満宮には
どうやら牛がたくさん出てくるらしい。
なぜ、牛なのか、
という疑問を抱く我々に
たのもしい助っ人が登場。
北野天満宮の東川さんです。
はっきり言って一行、質問ぜめ。
ハタナカ 今日はよろしくお願いします。
ぼくたち、
「神様をさがしに。」というテーマで
いろんなところを巡っている
グループでして。
全員 グループでして。
全員 (あやしいかな‥‥‥?)
東川 はい、よろしくお願いします。
ハタナカ 今日はここ北野天満宮と、
お近くの大将軍八神社に
お参りしたいと思っています。
さきほどから、皆が
なぜこんなに牛があるのか、
不思議がりながら来たのですが。
ソブエ 北野ですが(ダジャレです)。
東川 はい、牛はですね、
全国の天神様の
おつかいの動物なんです。
まず、うちの御祭神の菅原道真公、天神様は
丑(うし)年生まれでございます。

ハタナカ 丑年生まれ。
オイカワ そうだったんだ。
あ、また牛だ。
東川 牛にまつわる逸話が
菅原道真公にはたくさんございます。
もっとも有名なものを申しますと──
菅原道真公は
太宰府でお亡くなりになりました。
自分のなきがらを、人ではなく
牛車に運ばせなさいという
言葉を遺されていたのです。

そのお言葉のとおりにして
運んだそうなのですが、
あるとき、牛がうずくまって
動かなくなってしまいました。
最終的にそこで埋葬することになった、
その場所がいまの太宰府天満宮です。
ソブエ なんで牛に引かせたんでしょうね。
東川 やはり、丑年生まれということからはじまり、
牛と縁があったのでしょうけれども、
なにか、通じるところが
あったのではないかと思います。
ソブエ 生きてるときから
牛がお好きだったんですねぇ。
東川 そうだと思います。
ここにいる牛はみな
「撫で牛」なんですよ。
ほぼ日 撫で牛。
撫でるといいんですか?
ハタナカ どれを撫でてもいいんですか?
東川 どの牛を撫でていただいても結構です。
なぜならば、それは民間信仰だからです。
神社から「そうしなさいよ」ということではなく、
誰からともなく、そうしていった。
牛を通して道真公の御神徳を授かりたいという、
そういう、人びとの思いから
発した信仰だととらえています。
ソブエ へぇえ。いいなぁ。
オイカワ なんだかぜんぶの牛を
撫でたくなりますね。
東川 うちは学問の神様ですので、
みなさん、頭を撫でられる方が多いんですが、
頭に限らずどこでもいいんですよ。
ハタナカ どこでも好きなところを。
東川 朝早くお参りに来るご高齢のみなさんは
足や腰をさすったりなさいます。
安産祈願に、仔牛を撫でたりなさいます。
ほんとうに、誰からともなく
みなさん、そういう信仰で、なさっています。
ソブエ 菅公信仰の観光振興ですね(ダジャレです)。
全員 (ソブエさんの、懲りずに
 ダジャレをはさむ根気、脱帽です)
ハタナカ みなさん、ご本殿が見えてきましたよ。
オイカワ うわぁ、きれいだなぁ。
ソブエ なんで天満ていうんだろうね?
満天じゃなくて天満、ね?
ほぼ日 たしかに。しかも、そもそも
菅原道真さんがなぜ「天満宮」なのか
それもよくわからないんです。
東川 北野天満宮天神という
御神号をいただいているんですが、
なぜ天神なのかは、
いろいろな説があるんです。
道真公は雷の神様と関わりがあって‥‥。
ハタナカ そうそう、
都に雷が落ちたんですよね?
東川 はい。道真公は太宰府に行くのですが、
亡くなられたあと、都では
いろんな災いが起こったんです。

京都の町では疫病がはやり、
飢饉が起こりました。
そして、雷が落ちます。
道真公を追いやった張本人の藤原時平をはじめ、
左遷に関わった人たちに、
次々に不幸が起きました。
全員 そうなんですか!
東川 雷は御所にも落ちたと言われています。
ソブエ 「あの人は神なり!」
とか言われちゃったから、雷が!
ほぼ日 だから、雷が!
(ソブエさんの、懲りずに
 ダジャレをはさむ根気、脱帽です)
東川 まぁ(笑)、そういったところで
雷の神様と重なる部分があります。
もともと、ここ北野の地は
農業の神様を祀っていたんですよ。
「天候を司る天神」は
そういうことからも来ていると思います。
オイカワ この門、すごくかっこいいですね。
この神社、かっこいいものだらけだ。
東川 この門は三光門といいます。
ハタナカ みっつの光、ですか?
東川 おっしゃるとおりです。
この門の彫刻に、三光がきざまれています。
三光というのはつまり、
太陽と星と月。
ハタナカ さがしてみましょう。
ソブエ あった、太陽!

オイカワ あれは、月?
東川 ちがいます、あれは星。
ソブエ じゃあ、月がないよ?
ハタナカ ありませんね。
東川 月は、あそこです。
うさぎとうさぎのあいだの。
ほぼ日 わ、わ、わからない‥‥
まったくうさぎしか見えない。
東川 あの、うさぎのあいだにある、
三日月の、
銀色のお皿のような。
オイカワ ああ、月だ!
ソブエ 地球はないのか!
あ、ここか、地球は。
  (地球はここだった。つづきます)
神様の
おつかい
神社にお参りすると
神様の「おつかい」である
動物たち(「眷属」ともいいます)を
見かけることがあります。
天神様の牛、お稲荷様の狐、
日吉・山王の猿、
春日・鹿嶋の鹿のほかに、
兎(浦和の調(つき)神社)や
狼(秩父の三峰神社)が
お使いの神社もあるんですよ。
2012-02-07-TUE