『日本の神様』著者、
畑中章宏さん。
おかしな一団のリーダー役。
神様が好き。
グラフィックデザイナー、
祖父江慎さん。
あちこち寄り道するのが
大好き。
イラストレーター。
100%ORANGEの
及川賢治さん。
虫が好き、ハイキング好き。
ほぼ日乗組員。
ふりまわされるのが好き、
首をつっこむのも好き。
デコボココンビ。
北野天満宮を
案内してくれます。
かっこいい権禰宜さん。
大将軍八神社を
案内してくれます。
人気者の宮司さん。
第4回 天神様の細道。
ほぼ日
おなじみおかしな一行は、
京都の北野天満宮に来ています。
学問の神様、菅原道真が
お祀りされている神社です。
本殿は、国宝。
合格祈願のみなさんにまじって
参拝の列に並びます。
ハタナカ ここまでだけでも、北野天満宮は
すごいね、やっぱり。
オイカワ 来てよかったです。
東川 この三光門も、
国宝のご本殿も、すべて
豊臣秀吉公の遺命を受けて
息子である秀頼公がご造営されたものです。
ハタナカ 豊臣秀吉の。
東川 造られたのが1607年。
ざっと計算して、400年以上は
このままのかたちでここにあります。
ほぼ日 火事にも遭わずそのまんま?
東川 もともと北野天満宮のご創建は947年で、
千年以上前からここに神社はあるんです。
最初はちいさなおやしろからはじまって
幾度となくご造営をくり返しました。
たしか、室町時代あたりに一度、
火事に見舞われてます。
ハタナカ ああ、そうなんですね。
東川 はい。
そして、豊臣秀吉公の時代になって、
いま現在の立派な御本殿になりました。
オイカワ それが、1607年。
東川 安土桃山です。
その建築の文化の力が集約されています。
いまでこそ、色あせてるようにも見えますが、
当時はすごく壮大な御本殿だったでしょう。
オイカワ うーん‥‥。
だけど、どこかで馴染みのあるような
気がするんですよ。
東川 そうです、そうです、
日光東照宮の権現造り。
東照宮の御本殿はうちの御本殿が
モデルになってるんですよ。
ソブエ あれ?
こっちの後で、日光ですか?
ほぼ日 日光は徳川時代で
こっちは安土桃山。
だから、天満宮の御本殿が先。
ソブエ ああ、そっか。先なのかぁ。
東川

ここは八棟造り(やつむねづくり)という
神社建築なのですが、
当時、とても斬新な造りでした。

道真公がおいでになる御本殿と
お参りに来られたみなさんが、
同じ高さで同じ空間に
入れるようになっています。
ご祈祷の方は中まで入れます。

同じ床の高さで同じ空間の中に入れる、
そういうような造り方は
それまでの神社にはあまりありませんでした。
だいたいは、お参りされるところと
神様がいらっしゃる場所は
離れていることが多かったんです。
つまり、「屋根が分かれている」という建築。
しかし、ここの「八棟」は、
棟が大屋根でつながって
ひとつの空間になっています。

ソブエ なんか、現代的だね。
ほぼ日 ひらかれた感じですね。
ほんとうに「八棟」あるわけじゃなくて、
たくさんの棟が屋根でつながってる、
ということなんですね??
ソブエ そうそう「八宝菜」とかね!
オイカワ 「七味」とかもね!
東川 庶民に親しみを持たれていた神様、
ということが言えると思います。
修学旅行の時期は、あそこに
何十クラスと生徒さんが上がるんですよ。
みなさん、なにをされるかというと、合格祈願。
ハタナカ ははは、それはもう、みんな。
ソブエ 真剣だねぇ。
オイカワ いまもすごい行列ですよ。
ソブエ これは、我々、いま
お参りのために並んでるんですね?
ハタナカ そうです。気づけば並んでる、
みたいにも思えますけど、
これは我々、お参りする気
まんまんでしょう。
オイカワ 列、すごいな。
東川 どこからお参りしていただいても
結構なんですけども、
やはりみなさん、中央の鈴を
鳴らしてお参りしたいという
お気持ちがあるようで
このような行列になっています。
ソブエ みんな、とっても
きちんとしてるんだねぇ。
東川 もう我々が言ってもみなさん、
聞いていただけませんので、
どうしても並んでしまわれます。
ありがたい話ですけれども。
ほぼ日 では、これはべつに
横から行ってもいいってことですね?
ハタナカ ぼくはたいてい横から行きます。
でも今日は中央から行きましょう。
ソブエ あのさ、
「どれにしようかな てんじんさまのいうとおり」
とか言わなかった?
東川 「とおりゃんせ」の歌でもね、出てきますよ。
ハタナカ ああ、「とおりゃんせ」。
「ここはどこの 細道じゃ」
全員 「天神様の 細道じゃ」
ソブエ 親しまれていたんだねぇ。
東川 江戸時代の寺子屋には、床の間の掛け軸に
必ずといっていいほど
天神様の御肖像画が掛けられていたといいます。
そのあたりから学問の神様として
全国に広まって、
天神信仰というのが浸透したと
ひとつには言われています。
それまでは畏れられた神様だったんですよ。
オイカワ 畏れられていた‥‥?
東川 雷の神様ということもあるんでしょうね。
平安時代は御霊信仰といって、
政治的なことなどで無念の死を遂げられた方を、
怨霊──という言い方は、
我々はいまはしないですけれども──
いわば「祟り」というように捉えていたことが
過去にはありました。
そのお御霊をお慰みして
手厚くお祀りするために
建てられたという意味も、
創建の理由としてはあります。
オイカワ ほほぅ。
東川 創建当初は、そういった気運がありましたが、
時代とともにだんだん
菅原道真公のご生前の功績が
讃えられるようになりました。
ソブエ やっぱり学問をたいへん、
がんばられた、と。
東川 そうです。
ハタナカ 天神社って全国に
どのくらいあるんですか?
東川 だいたい、1万です。
ハタナカ 1万!
東川 大小ありますが、
1万数千社といわれてます。
ハタナカ お稲荷さんも八幡さんもいっぱいあるけど。
ほぼ日 天神さんも多いんですね。
東川 全国で最も多いのは八幡宮です。
そして、お稲荷さん、天神さんです。
ハタナカ その次に、天神さんですか。
ソブエ 誰もが家の近くにある、ぐらい
いっぱいなんだねぇ。
ハタナカ だから「とおりゃんせ」はけっこう
どこの地域にも通ずるんですね。

ほぼ日 ここに初詣に来られる方は、
毎年どのくらいですか?
東川 そらもう、初詣のときは、すごいです。
こんな状態ではない。
ですから、お正月は鈴をはずします。
ソブエ 試験前でもあるもんね。
鈴をはずしても鈴なり!
なんちゃって。
全員 ‥‥‥(うまい)。
東川 だけど、いちばん混むのは
やっぱり梅のとき。
オイカワ 梅?
東川 梅が咲きはじめたら、みなさんすごいです。
天神様と梅はもう、
切っても切れない縁がございます。
ここにも1500本ほどの梅があります。
次は2月3月、
ぜひ梅のときにいらしてください。
ほぼ日 梅がお好きで、太宰府から
北野の梅を忍ばれていたんですよね。
ソブエ (忍さん‥‥)
ほぼ日 (北野の忍さん‥‥)
ハタナカ 天神さんは梅が
象徴のようなものですからね。
湯島天神にも梅はあるし、
太宰府にもある。
オイカワ お、そろそろ順番ですよ。
全員 では、お参りしましょう。
二礼二拍手一礼ですね。
順番に、順番に‥‥。
  (天神様に、お参りします。つづきますよ)
天神様 全国に約1万数千社あると言われる「天神様」のお社。
その多くが北野天満宮の御霊(みたま)を分けて
おまつりした神社で、東京の湯島天神もそのひとつです。
天神様の学業成就のご利益は
江戸時代には広まっていて、
寺子屋にも必ずおまつりされていたそうです。
2012-02-08-WED