『日本の神様』著者、
畑中章宏さん。
おかしな一団のリーダー役。
神様が好き。
グラフィックデザイナー、
祖父江慎さん。
あちこち寄り道するのが
大好き。
イラストレーター。
100%ORANGEの
及川賢治さん。
虫が好き、ハイキング好き。
ほぼ日乗組員。
ふりまわされるのが好き、
首をつっこむのも好き。
デコボココンビ。
北野天満宮を
案内してくれます。
かっこいい権禰宜さん。
大将軍八神社を
案内してくれます。
人気者の宮司さん。
第8回 藪の中の神。
ほぼ日

目的地のふたつめ、
大将軍八神社に到着しました。
ここは、神様の像「神像」が
80体(!)もある
全国でもたいへんめずらしい神社です。

ほぼ日 あれが、
大将軍八神社の本殿。
ハタナカ そうです。
オイカワ

おもしろいマークがありますね、
星みたいな‥‥。

ハタナカ まずはお参りしましょう。
ソブエ おみくじ、ひいていい?
ソブエ ほら、大吉!
ほぼ日 ソブエさん、いつもながら
引きが強いですね。
ソブエ いや、あのね、
(ひそひそひそ)
引くときにー、
番号がちょっと見えたからー、
番号のよさそうなのを選んだのー。
ほぼ日 ‥‥‥‥ソブエさん。
ソブエ なんですか。
ほぼ日 さきほどの大黒様の石といい、
けっこうテクニックで乗り切るタイプ
だったんですね?
ソブエ ふふふふ。
オイカワ そうとは知らず
ほら、純真なハタナカさんが
おみくじに立ち向かってますよ。
ほぼ日 (前回は凶を引き、
 今回は大黒様の口にも石を乗せなかった
 リーダーです、ああ心配)

ハタナカさん、どうでした?
ソブエ 番号見た?
ハタナカ え? 見てないよ、何のこと?
ハタナカ 小吉だった。
小吉‥‥吉は吉だ!
一同 吉だ!
ハタナカ 今日は木に結ばず
持ち歩くことにします。
ソブエ よかったですねぇ。
一同 よかった、よかった。
ドキドキした。
ほぼ日 では、80体の神像を拝見しにいきましょう。
ご連絡を入れてありますので
社務所で訊いてみます。
社務所の方 いま、宮司を呼んでまいりますので
お待ちください。
ほぼ日 ありがとうございます。
‥‥ハタナカさん、神像というのは
神様の像のことですか?
ハタナカ はい、神様をあらわした像です。
仏像はよくありますけど、
神像というのはあまり
聞いたことがないでしょう?
こんなにたくさんの神像がある神社は
全国でもたいへんめずらしいんですよ。
オイカワ ぼくなんて、実際に見るのははじめてかも。
生嶌 こんにちは、大将軍八神社の
宮司の生嶌と申します。
全員 よろしくお願いします。
生嶌 この神社の創建は平安時代です。
都をつくる際、この場所が
内裏の北西の角に
あたることになりまして。
オイカワ 北西?
ソブエ 内裏?
ハタナカ 内裏は、いまで言う「御所」ですね
生嶌

平安時代は、京都の「御所」は
もっと西のほうにありまして、
ここが「御所」の
北西の角にあたる場所だったんです。

その「北西の角」が
日本の陰陽道の「天門」という位置になります。
おうちを建てるとき、よく北東の角を
「鬼門」とか言いますでしょう?

ほぼ日 ええ、ええ。
生嶌

北西の角が「天門」、
北東が「鬼門」、
南東が「地門」、
いまは裏鬼門と呼ぶ南西が
陰陽道では「人門」。

つまりここは、都の北西の「天門」を
護っている神社なんです。
大将軍というのはもともと、
星の大将という意味で、
星座の神さんなんですよ。

天の門へ星神様をお祀りして
内裏を守護するという役割、
そういった陰陽道のお堂として
創建されたのがはじまりです。

ソブエ

星座の神様かぁ。

生嶌

当時はお堂の中へ
たくさんの御神像を配置して
祭りを執り行っていました。
時代とともに信仰の形態も変わり、
江戸時代になると、
お堂ではなく「神社」として成立しました。

しかし、その頃にはもう、
御神像も見えない場所へ移動されました。

そして、みなさんご存知のとおり
明治のときに、神仏分離・廃仏毀釈がありました。
国教以外の外来宗教は
廃毀するという運動があって、
御神像も、屋根裏や蔵や建物の下、
薮の中に隠したりして。

ほぼ日 藪の中に? おお‥‥。
像をお祀りしてるということ自体が
仏教ぽいからダメ、
ということだったんですか?
生嶌 神じゃないものを祀ってるのが
もう、あかんちゅうて、隠されてました。
それが終わっていま現在は
ここの「方徳殿」に
移動してもらってるような状態になってます。
ほぼ日 へえ。
ハタナカ 御祭神は、
須佐之男命さんになってるんですか?
生嶌 もうそれは、早い段階で
廃仏毀釈とかの前に
習合するかたちでそうなりました。
ハタナカ 江戸時代からですか?
生嶌 はい。大将軍の御神尊と須佐之男命さんが
習合するようなかたちになってたので、
なんとかまあ、壊れるようなこともなく、
大将軍という名称のまま残ったのかな、
というようなことがあります。
では神像、ごらんになりますか?
ほぼ日 予約さえ入れておけば
どなたでも拝観できるんですね。
生嶌 神像、こちらです。
全員 あちらが‥‥、神様の、像。
ソブエ うわー。
ほぼ日 ずらーり、神様がたくさん。
ハタナカ こんなに揃ってるのは
やっぱり、いつ見てもすごい。
オイカワ ああ、ああ‥‥これは、やばい!
 

(たくさんの神様を前に、
 全員固まっちゃって、
 しばらく動けません。つづきます!)

神仏分離 江戸から明治に移り変わるとき、
「神様と仏様は切離せ!」という
号令がかかりました。
これを「神仏分離令」と言います。
それまでは神社と寺院は隣り合わせて仲良くし、
それぞれが混ざり合うことが普通でした。
神仏分離の際に多くの神像や仏像が
壊されてしまいました。

2012-02-14-TUE