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大将軍神像八十躯に依る
立体星曼荼羅の世界。 |
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はい、そういうことで、やってます。 |
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これはすごいわ。
かっこいいね。
あのいちばんいいところにいる方は
どなたですか? |
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ここにあるすべてが
「大将軍」という星の神様です。 |
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すべてが「大将軍」? |
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ええ。あそこの位置は
北極星を表す中心です。
そして、その前にずらっと横に並んでいるのが
衣冠束帯の御神像。
こんなふうに並べて、北斗七星を表すような配置を
取らせてもらっています。 |
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つまり、神像を
星座図みたいに置いてる、
ということですか? |
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はい。 |
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いちばんいい場所にいるのが北極星?
北極星さん。 |
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そんなかたちで
私たちが配置させてもらってるということで‥‥、
まあ、もともとどういうふうなことなのか、
ほんまに、想像でしかないんですよ。 |
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そうですね、何も、
わからないんですよね。 |
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ええ。 |
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そうなんだ‥‥。 |
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配置図も何も、残ってないんです。
さきほど申し上げたように、
こういった神像が屋根裏やら藪やらに
ほんまにバーっと隠して置いてあった、
という状態やったんで。 |
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かたちも様式も違うんですけど、
それぞれの神像に名前があるんじゃなくて、
みんなが「大将軍」なんですね。 |
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そうです、はい。 |
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そのへんがわかりにくかったけど、
そういうことなんですね。 |
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そうです。言ってしまえば、
大将軍神像「群」です。
現在、ここに残ってる御神像は80体。
そのうち1体は童子像です。
童子というのは主神となる神さんの
横へお付きになる眷属神なんですけれども、
お付きの神さんとしては
これ1体だけが残っております。
ひじょうに珍しい御神像です。
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同じ大将軍神像であっても
かたちでふたつに分けることができます。
ひとつが平安の衣装を被った「衣冠束帯像」、
もう1種が、鎧甲冑をまとった「武装神像」です。
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武装してるほうが
歴史的に古いとされてるんですよね? |
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おっしゃるとおりです。
数年の違いやとは思うんですけれども
うちに所蔵されている
御神像の古さとしては
武装で表されているもののほうが
かたちとしては古い形式にあたります。
古いものは、だいたい
平安時代の中期から
鎌倉時代にかけての造像になります。
西暦でいうと、900年から1200年の300年間。
陰陽道の信仰の隆盛と
合わさるようなかたちで
どんどん造られては奉納され、祀られて、
これだけの数が
集まったのではないかと思います。
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ただ、日本のなかで
これだけの数の大将軍の神像が
ここに集まっているのが不思議です。
もしかして、ほんとうは
ここ1か所だけのものじゃなかったのかも
しれないですよね。 |
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あ、はい、はい。なるほど。 |
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このあたりの広い範囲の
お堂にあったものが
集まったんじゃないかな、
とも思うんです。
だって、この神像一体一体が、
わりと独立して
ご本尊になるくらいの神様です。 |
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像の規模はそうですね。
時代の中で淘汰されていった
お堂の御神像が
集まっていったのかも‥‥。 |
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普通の神社さんでは
ここにおられる方々が
1体、2体、いらっしゃるだけで
祭神としてそうとう立派なことです。
それが、こちらの場合にはいっぱいいらっしゃる。 |
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ええ。ある種特種なことだとは
思っています。 |
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装束もちがうし、
立像、半跏像‥‥
10世紀から12、3世紀ぐらいまでの
期間がありますから
こまかく見ていくと、
バリエーションがいっぱいありますね。 |
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中央に向かって、だんだん大きくなるように
配置されているのはどうしてですか? |
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単純に、我々がそう並べた、
というだけです。
置き方がわからないんで、
そのあたりは、もう我々が
勝手にやるしかないんですよ。
あとは彩色ですが、
いまはみんなほぼ「木の色」に
なってますけれども、
当時は極彩色でした。 |
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へえ! |
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赤、青、黄、緑、いろんな色の
着装を施して、
その上から模様を描いたりしていたようです。
武装の御神像は、全身金のものもありました。 |
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全身金! |
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もうピカピカの状態です。
あの立像は、金で覆われていたとか。 |
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あちらの、立ってらっしゃる方が? |
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きっと、手にいろいろ持ってた人も
多いんでしょうね。 |
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持ってたものの種類はね、
だいたいが、剣と刀印。 |
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それに、杖とお経が何種類かあります。 |
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ピースしてる。 |
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ほんとだ。 |
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あれは刀印(とういん)です。 |
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厄災を斬る、除ける、
魔除けの印のようなことです。
でも、おっしゃるとおり
ピースですね、
平和を祈っていらっしゃるような‥‥うん、
平和であれば、ということにつながりますね。 |
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ハタナカさんの本『日本の神様』で
神像の写真をたくさん見ていましたが、
こんなに大きいと思いませんでした。 |
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うん。後ろ姿も見れらていいね。
すごいねぇ。 |
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(ときが経つのも忘れ、
神像を眺めつづける我々です。つづく) |