映画の感想を 言い合う感激団なのですが、 糸井さんが杉江さんの髪形の話も 聞くべきだと。 |
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そう、聞くべき。 さあ、杉ちゃん、どうぞっ! |
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はい。 高校生のとき、わたしは北九州なんですけど、 ローリング・ストーンズが好きで。 北九州のわたしのまわりには、 ビートルズを好きな人さえいなくて、 ストーンズ好きなんかゼロだったんです。 でも、わたしは好きで、 ずっとストーンズのブロマイドを集めてて。 その中に1枚、ブライアン・ジョーンズの めちゃくちゃかっこいい写真があったんです。 |
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知らない人のために言っておくと、 ブライアン・ジョーンズっていうのは ローリング・ストーンズ初期のギタリストで バンドのリーダーだったんだよね。 |
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はい。それでわたし、 そのブライアン・ジョーンズの写真を見て、 「これは案外、自分の顔の形に似てるかも」 |
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一同 |
(笑) |
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ミック・ジャガーのほうが 好きだったんですけど ブライアンもかっこいいし、顔の形似てるし、 「これならイケるかも」と思って、 そのブロマイドを手に、美容室へ‥‥ |
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行った。 |
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行くんだよ(笑)。 |
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行ったんですよ。 でもあんまり高いお店には行けないから。 |
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北九州だしね。 |
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北九州だし。 まあまあのところ、そこそこのお店、 高校生でも行けるところに行って、 「これにしてください」って。 |
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言った。 |
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言うんだよ。 |
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言ったんですよ。 |
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美容師さんの反応は? |
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「え?」みたいな。「は?」みたいな。 「お客さんの髪質じゃ無理ですね」って。 |
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あー、そのひとこと、言うよなあ。 |
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でも、わたしはあきらめなかったんです。 どうしてもブライアンになりたくて。 |
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なりたくて(笑)。 |
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「じゃ、パーマかけてください」と 言いました。 |
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ブロマイドを指さしながら(笑)。 |
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はい。そしたら美容師さんが「嫌」って。 |
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一同 |
(笑) |
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「ならないから、パーマかけても そういうふうにならないから」って。 でもわたしは何としてもかけたくて、 「いいから、とにかくかけてさえもらえれば、 あとは自分でなんとかするから」って。 で、かけてもらったんです。そしたら‥‥ |
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一同 |
そしたら? |
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お〜んもしろ〜い 髪形になっちゃって(笑顔)。 |
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一同 |
わはははははは! |
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どういう具合でおもしろくなったんですか? |
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要は、ここがぜんぶクリックリに、 巻き込んじゃって、 ぜんぶがこういうふうに。 |
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一同 |
わはははははは! |
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で、それが遠足の前の日で、 えらい状態で遠足の写真に載ってる(笑)。 |
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一同 |
(笑) |
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いやぁ、この話はおもしろい。 人が何かを実現しようと夢を持って、 それが捻じ曲げられてくる歴史の話だから。 でも今は、なりたい髪形になれるんだねえ、 技術で。豊かなことですよね。すごいですね。 |
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ありがとうございました。 というわけで、ぼちぼち映画の‥‥ |
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いや、山下さん、まだでしょう。 まだこれ行けるでしょう、まだもったいない。 |
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しつこい(笑)。 |
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ゆーないとさんの話は? |
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あっし。 |
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いきなさい、話しなさい(笑)。 |
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あたしは、もともとあこがれてて。 まず前髪を作って、 こうやるのにすごくあこがれてたんですよ。 こーいうふうにつながってるやつに。 |
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きれいなマッシュルームに。 |
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でも、 顔がまん丸だから似合わないと思ってて。 で、ある日、友だちが家に泊まりに来て、 「ちょっとさ、切ったほうがよくない?」 とか言われて、 「あ、切っちゃおうか」って調子に乗って、 なんか切って、それで、 「あれ? これイケる?」と思って。 |
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一同 |
(笑) |
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で、いつも行ってる美容室に行って、 「自分で切っちゃったんですけど、 マッシュルーム的にしたいんで、 きれいにしてください」って言ったら、 「まあ、いいけど‥‥」とか言われて。 |
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先方(美容師)は乗り気じゃないんだ。 |
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そう、 それから1年くらいこの髪形なんだけど いまだに先方は乗り気じゃないんですよ。 この前なんか、 「面倒くさいんだよね」とか言われたし。 |
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一同 |
ええー(笑)。 |
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言っちゃった。 |
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きれいに整えるのは けっこう面倒くさいって。 そのくせ「いいでしょう、このライン」とか、 すごく自負するんです、先方。 |
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自負(笑)。 |
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でも最近ね、 きてるじゃないですか、きのこが。 |
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流行ってますね、 局地的にかもしれないけど。 |
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いやいやそうじゃない、 局地じゃない。 明らかに局地じゃないんです。 ひとつの典型は、宮沢りえちゃんですよ。 |
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あ、一般的に流行ってる‥‥? |
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きてるんだよ。 |
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そう。だから、 「いま、きてるから、これ、もうちょっと 続けたほうがいいと思うんですよね」って あたしが美容師さんに言うんだけど‥‥ |
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どんな会話だ(笑)。 |
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先方は「そうかなぁ」って言うから、 「いや、きてますよ、世の中見てください、 木村カエラちゃんもそうですよ」 |
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あ、カエラちゃんもそうだ。な? |
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ほんとに流行ってるんだ‥‥。 |
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あと「モテないですよ?」って言われない? |
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言われる言われる! 美容師さんに! 「自分の彼女にはさせたくない」って。 女の人としてマッシュルームは嫌だって。 |
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ひどい(笑)。 |
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わたしは 「おもしろくなるけどいいんですか?」 って、念を押されるんですよ。 |
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「丸顔に丸い髪形ですよ?」 |
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「丸に丸はおもしろくなりますよ? 女芸人みたくなりますよ? モテませんよ?」 |
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よけいなお世話(笑)。 |
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そう、かつてはモテるために(笑)。 おなじ美容師さんなんですよ。 |
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そうか、だから先方も乗り気じゃないんだ。 |
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ですねえ。 モテる髪にしていた俺が、 なんでモテないように 切らなきゃいけないんだっていう。 |
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そう、複雑な心境だと思う。 |
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すっごい重厚だな、この話。 |
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一同 |
(笑) |
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美容師さんもすごい葛藤ですよね。 かわいくするのが自分の仕事だったのに、 似合うように似合うようにって考えてたのに、 あえて似合わない髪形をつくらされて、 なおかつ技術がないと、 このバランスにならないわけじゃないですか。 それはすごいハードル高いと思う。 |
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むずかしそお。 |
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似合う似合わないですらないんですね。 |
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それって、すごく新しいし、なんかこう、 コム・デ・ギャルソンの コンセプトみたいだね。 |
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ああー。 |
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女らしいかわいさとか、 そういうのをぜんぶはずしちゃった上で、 それを選ぶんだから。 |
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ほんとだー。 |
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「まるで少年のように」っていうのと 同じようなことじゃないですか。 だからついに、川久保玲のコンセプトに 世の髪形が届くようになったっていうか‥‥。 |
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あの‥‥すみません、 できればぼちぼち、映画のお話を‥‥。 |
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ええ?! 中林さんの話を聞かないで?! |
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ま、まだいきますか? |
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いくべきでしょう。 |
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(つ、つづきます) |
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2008-11-25-TUE | |||