第5回 特別ゲスト・加藤久仁生さん
シェフ
えー、みなさん、ご紹介します。
こちら、『つみきのいえ』の作者の、
加藤久仁生さんです。
こんにちはー。
カトウ
こんにちは、はじめまして。
はじめまして。
シェフ
ま、どうぞお座りください。
カトウ
はい、ありがとうございます(座る)。
シェフ
というわけで‥‥
感激団、初ですよね?
作者のかたをゲストでお招きするのは。
最初はわれわれだけで自由に
感想を話してから、
最後にちょっとご登場いただければと思って
時間差でご足労いただいたわけです。
カトウ
なるほど、はい。
シェフ
で、いまみんなで観まして、
さんざん泣いてたところです。
スガノ
はい。
ゆーないと
やられたよね。
カトウ
そうですか。
シェフ
加藤さんは『つみきのいえ』の、
アニメーションと絵本で、絵を描かれた、と。
カトウ
はい。
シェフ
ぼくら、ここで作品を一緒に観たんです。
そのあとみんなで感想を
自分勝手に語り合いまして。
で、どんな感想が出たかと言いますとですね。
カトウ
はい。
シェフ
そちらに小木曽監査役という
うちの最年長、62歳がおりまして。
コギー
いや、まいったねどうも(笑)。
シェフ
あとは20代、30代、40代と
それぞれに感想がちがって
たいへんおもしろかったです。
カトウ
そうですか。
シェフ
で、まず、口火を切ったのが
小木曽監査役でした。
自分の死を感じる年代になってくると、
主人公に自分を投影して、
「これからどうするんだ?」って思う、と。
山下
身につまされると。
スガノ
切実な。
カトウ
はい。
シェフ
それで、ええと、
そういう意見はすごく理解しながらも、
「日常を誠実に重ねてきたことが、
 豊かな思い出となって
 今を生かしてくれてるんだ」っていう者。
またいちばん若い人の感想は、
「主人公の思い出の中にいるのが今の私」
というのもあったりしまして‥‥。
いや、もう、深く話したんで
うまくかいつまんでお伝えできないんですが
そんな感じでして。
カトウ
はい、ありがとうございます。
山下
作品観終わってですね、
みんなシーンとしてる感じなんですよ。
わりと神妙な顔つきで。
ところが感想を話しはじめると、
自分に重ね合わせて、みんな泣き始める。
(笑)
ゆーないと
そうそうそうそう。
話してるうちに、ウルってきて。
シェフ
しゃべると泣いちゃうんだよね(笑)。
スギエ
恥ずかしいから大笑いにもなって(笑)。
シェフ
ほんと、すばらしかったです。
ありがとうございました。
カトウ
いや、こちらこそ。
シェフ
加藤さんは絵を描かれたということですが、
お話は平田研也さんというかたなんですか?
それとも、ふたりで一緒に?
カトウ
まず最初に10分の作品が並ぶ
ショートフィルムの企画があったんです。
オムニバスなので、その中の1本を
アニメーションで作ろうっていうことで。
それで、脚本家の平田さんと組んで、
なんかできないかっていう話から
スタートしました。
その前段階で、ぼくのほうにちょっとこの、
「家が積み重なっていく」とか、
「水が上がってきてて、
 床のふたを開けるとすぐ魚がいる」という、
ビジュアルのイメージがあったので、
それを平田さんにお見せしたら、
「あ、これはちょっと
 アニメーションにならではの世界観で、
 おもしろいのができそうだね」
という話になりました。
じゃあ、昔の沈んでいる家には、
それぞれの時間の思い出があるんだね
っていうふうに、話がふくらんで‥‥。
大まかなストーリーラインは
平田さんが考えました。
あとはふたりでこう、
足したり引いたりっていう作業をして、
最終的にああいう形になりました。
シェフ
へぇ〜。
まずはビジュアルイメージから。
山下
最初にストーリーじゃないんですね。
カトウ
そうですね。
まあ、絵のおもしろさだけというか、
家が積み重なっていく、
ということからはじまっていって。
そこに平田さんが
ストーリーを入れてくれたという感じですね。
シェフ
あ、そういえば、
この作品は子どもたちからも
評価されたという話をうかがいましたが。
カトウ
ええ、
「アヌシー国際アニメーション映画祭」で
「子ども審査委員賞」という賞を。
シェフ
それはどうやって選ばれるんですか?
カトウ
子どもたちだけで
構成された審査員チームがありまして。
シェフ
へぇ〜。
山下
『つみきのいえ』は、
ノスタルジックな作品で
大人向けっぽく思えるんですが、
子どもたちはどのあたりに
こころを動かされたんでしょう?
コギー
ああ、それは聞きたいね。
カトウ
それは‥‥ぼくもわりとおじいさんが主人公で
地味な物語なので大人向けな
アニメーションだなっていう意識で
つくってましたので‥‥。
子ども審査員からの受けは、
そんなによくないだろうと。
もっとわかりやすくて
おもしろい作品とかがたくさんあったんで。
だから‥‥なぜでしょうね?(笑)
スガノ
子どものほうがけっこう、
身についてる感覚が鋭いかもしれないですね。
こういった家族のお話だと。
カトウ
ああ、そうですね。
スガノ
うちは小学4年の男の子がいるんですが、
「おばあちゃん、ひとりで住んでて
 寂しくない?」って電話してるんですよ。
やっぱり、そういう気持ちは
子どもにもあるんですよね。
ゆーないと
あるある。
コギー
あると思うな、それは。
ゆーないと
あっしも子どものころ
「おばあちゃんはきっと寂しいにちがいない」
ってすっごく思ってた。
だから、そういう
「寂しくてかわいそうなおじいさん」
っていうことで、
子どもたちは感動したのかな?
と、ちょっとさっき思ったんですけど。
シェフ
そうかもね。
コギー
そうかもしれないね。 
シェフ
ちょっと大きくなると、
そのことを考えなくなっちゃう? 
ゆーないと
そうなんですよね。
スギエ
そう、大人になると、
自分もそっちに近くなるから、
かわいそうって素直に思えなくなっちゃう。
でも、子どもはまったく別に関係ないから。
スガノ
そうそうそう、無邪気にかわいそうって。
コギー
‥‥あの、質問をいいですか。
ゆーないと
きたきた(笑)。
カトウ
はい。
コギー
この作品をつくってらして、
「死」ということに関して、
なにか意識はされましたでしょうか。
カトウ
そうですね、
ぼくは30代に入ったばかりの年代なので、
やっぱり実感として、
死っていうものをまだとらえられない
という部分は正直なところありました。
だから、やっぱり‥‥
親や祖父のことについて考えました。
実感としては親がけっこう、
歳をとったなぁって、
年に1回くらい会うと思うようになって。
ああ〜。
カトウ
離れて暮らしているので。
こういうペースで年に1回だと、
老後のことは抜きしてに考えると
あと何回会えるんだろうとか。
親が、だんだん死っていうものを
実感しはじめる年齢になってきて、
間接的に「死」を考えるっていうのが
いまはいちばん大きいのかもしれません。
コギー
このおじいさんは、
これからどうすればいいんでしょう?
そこが私には気になって。
カトウ
そうですか。
わりとこう、
象徴的にこの話は描いているので‥‥
スガノ
そうですよね。
カトウ
別のところにいる子どもが、
「一緒に暮らそうよ」って誘っても、
このおじいさんは、
たぶんここを動かない人ですよね。
スガノ
はい。
カトウ
この家がちいさくなって、
結局は水に沈んでしまうという
人生の空しさが背景にありますが、
それでも最期まで住み続けるのは、
そう簡単にできることじゃないわけで。
やはり、なんというか、これも理想というか、
これはこれで、
過去にとらわれてる部分も含めて、
ひとつの生き方ではあるなと、
そう思うところはありますね。
コギー
なるほど‥‥。
山下
小木曽さんの場合は、
別なかっこよさなんですよ。
とっくに別のところに行ってる。
スガノ
そうそう、
コギーはここに残らない人よ。
スギエ
小木曽さんは、舟に乗って
息子さんとこに行っちゃうんですよ。
コギー
あ、そうか(笑)。
(笑)
スガノ
大丈夫だから、コギーは。
ゆーないと
そうそうそうそうそう。
安心して、ゆけばいい。
シェフ
手漕ぎボートじゃなくて、
エンジン付きのに乗って、
ガンガン釣りしてるタイプじゃない?
コギー
そうか‥‥釣りか。
スガノ
そう、大丈夫!
コギー
よし、じゃあ釣るかね! ガンガン。
スガノ
コギー、すばらしい(笑)!
(つづきます!)
2008-12-24-WED


次へ 最新のページ 次へ

今回の感激団メンバー
シェフ コギー ゆーないと
スガノ スギエ 山下
 
終盤の特別ゲスト
作者・加藤久仁生さん
カトウ    


感激団による
『つみきのいえ』のあらすじ
 
くわしくは、こちら

『つみきのいえ』についての くわしい情報はこちら。

DVD『つみきのいえ』
Amazonでのご購入はこちら


絵本『つみきのいえ』
アニメーションを
作者が新たに描き下ろした絵本です。
Amazonでのご購入はこちら