えー、みなさん、ご紹介します。 こちら、『つみきのいえ』の作者の、 加藤久仁生さんです。 |
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こんにちはー。 |
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こんにちは、はじめまして。 |
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はじめまして。 |
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ま、どうぞお座りください。 |
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はい、ありがとうございます(座る)。 |
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というわけで‥‥ 感激団、初ですよね? 作者のかたをゲストでお招きするのは。 最初はわれわれだけで自由に 感想を話してから、 最後にちょっとご登場いただければと思って 時間差でご足労いただいたわけです。 |
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なるほど、はい。 |
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で、いまみんなで観まして、 さんざん泣いてたところです。 |
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はい。 |
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やられたよね。 |
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そうですか。 |
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加藤さんは『つみきのいえ』の、 アニメーションと絵本で、絵を描かれた、と。 |
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はい。 |
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ぼくら、ここで作品を一緒に観たんです。 そのあとみんなで感想を 自分勝手に語り合いまして。 で、どんな感想が出たかと言いますとですね。 |
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はい。 |
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そちらに小木曽監査役という うちの最年長、62歳がおりまして。 |
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いや、まいったねどうも(笑)。 |
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あとは20代、30代、40代と それぞれに感想がちがって たいへんおもしろかったです。 |
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そうですか。 |
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で、まず、口火を切ったのが 小木曽監査役でした。 自分の死を感じる年代になってくると、 主人公に自分を投影して、 「これからどうするんだ?」って思う、と。 |
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身につまされると。 |
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切実な。 |
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はい。 |
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それで、ええと、 そういう意見はすごく理解しながらも、 「日常を誠実に重ねてきたことが、 豊かな思い出となって 今を生かしてくれてるんだ」っていう者。 またいちばん若い人の感想は、 「主人公の思い出の中にいるのが今の私」 というのもあったりしまして‥‥。 いや、もう、深く話したんで うまくかいつまんでお伝えできないんですが そんな感じでして。 |
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はい、ありがとうございます。 |
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作品観終わってですね、 みんなシーンとしてる感じなんですよ。 わりと神妙な顔つきで。 ところが感想を話しはじめると、 自分に重ね合わせて、みんな泣き始める。 |
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(笑) |
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そうそうそうそう。 話してるうちに、ウルってきて。 |
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しゃべると泣いちゃうんだよね(笑)。 |
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恥ずかしいから大笑いにもなって(笑)。 |
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ほんと、すばらしかったです。 |
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ありがとうございました。 |
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いや、こちらこそ。 |
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加藤さんは絵を描かれたということですが、 お話は平田研也さんというかたなんですか? それとも、ふたりで一緒に? |
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まず最初に10分の作品が並ぶ ショートフィルムの企画があったんです。 オムニバスなので、その中の1本を アニメーションで作ろうっていうことで。 それで、脚本家の平田さんと組んで、 なんかできないかっていう話から スタートしました。 その前段階で、ぼくのほうにちょっとこの、 「家が積み重なっていく」とか、 「水が上がってきてて、 床のふたを開けるとすぐ魚がいる」という、 ビジュアルのイメージがあったので、 それを平田さんにお見せしたら、 「あ、これはちょっと アニメーションにならではの世界観で、 おもしろいのができそうだね」 という話になりました。 じゃあ、昔の沈んでいる家には、 それぞれの時間の思い出があるんだね っていうふうに、話がふくらんで‥‥。 大まかなストーリーラインは 平田さんが考えました。 あとはふたりでこう、 足したり引いたりっていう作業をして、 最終的にああいう形になりました。 |
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へぇ〜。 まずはビジュアルイメージから。 |
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最初にストーリーじゃないんですね。 |
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そうですね。 まあ、絵のおもしろさだけというか、 家が積み重なっていく、 ということからはじまっていって。 そこに平田さんが ストーリーを入れてくれたという感じですね。 |
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あ、そういえば、 この作品は子どもたちからも 評価されたという話をうかがいましたが。 |
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ええ、 「アヌシー国際アニメーション映画祭」で 「子ども審査委員賞」という賞を。 |
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それはどうやって選ばれるんですか? |
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子どもたちだけで 構成された審査員チームがありまして。 |
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へぇ〜。 |
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『つみきのいえ』は、 ノスタルジックな作品で 大人向けっぽく思えるんですが、 子どもたちはどのあたりに こころを動かされたんでしょう? |
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ああ、それは聞きたいね。 |
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それは‥‥ぼくもわりとおじいさんが主人公で 地味な物語なので大人向けな アニメーションだなっていう意識で つくってましたので‥‥。 子ども審査員からの受けは、 そんなによくないだろうと。 もっとわかりやすくて おもしろい作品とかがたくさんあったんで。 だから‥‥なぜでしょうね?(笑) |
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子どものほうがけっこう、 身についてる感覚が鋭いかもしれないですね。 こういった家族のお話だと。 |
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ああ、そうですね。 |
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うちは小学4年の男の子がいるんですが、 「おばあちゃん、ひとりで住んでて 寂しくない?」って電話してるんですよ。 やっぱり、そういう気持ちは 子どもにもあるんですよね。 |
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あるある。 |
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あると思うな、それは。 |
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あっしも子どものころ 「おばあちゃんはきっと寂しいにちがいない」 ってすっごく思ってた。 だから、そういう 「寂しくてかわいそうなおじいさん」 っていうことで、 子どもたちは感動したのかな? と、ちょっとさっき思ったんですけど。 |
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そうかもね。 |
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そうかもしれないね。 |
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ちょっと大きくなると、 そのことを考えなくなっちゃう? |
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そうなんですよね。 |
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そう、大人になると、 自分もそっちに近くなるから、 かわいそうって素直に思えなくなっちゃう。 でも、子どもはまったく別に関係ないから。 |
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そうそうそう、無邪気にかわいそうって。 |
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‥‥あの、質問をいいですか。 |
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きたきた(笑)。 |
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はい。 |
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この作品をつくってらして、 「死」ということに関して、 なにか意識はされましたでしょうか。 |
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そうですね、 ぼくは30代に入ったばかりの年代なので、 やっぱり実感として、 死っていうものをまだとらえられない という部分は正直なところありました。 だから、やっぱり‥‥ 親や祖父のことについて考えました。 実感としては親がけっこう、 歳をとったなぁって、 年に1回くらい会うと思うようになって。 |
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ああ〜。 |
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離れて暮らしているので。 こういうペースで年に1回だと、 老後のことは抜きしてに考えると あと何回会えるんだろうとか。 親が、だんだん死っていうものを 実感しはじめる年齢になってきて、 間接的に「死」を考えるっていうのが いまはいちばん大きいのかもしれません。 |
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このおじいさんは、 これからどうすればいいんでしょう? そこが私には気になって。 |
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そうですか。 わりとこう、 象徴的にこの話は描いているので‥‥ |
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そうですよね。 |
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別のところにいる子どもが、 「一緒に暮らそうよ」って誘っても、 このおじいさんは、 たぶんここを動かない人ですよね。 |
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はい。 |
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この家がちいさくなって、 結局は水に沈んでしまうという 人生の空しさが背景にありますが、 それでも最期まで住み続けるのは、 そう簡単にできることじゃないわけで。 やはり、なんというか、これも理想というか、 これはこれで、 過去にとらわれてる部分も含めて、 ひとつの生き方ではあるなと、 そう思うところはありますね。 |
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なるほど‥‥。 |
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小木曽さんの場合は、 別なかっこよさなんですよ。 とっくに別のところに行ってる。 |
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そうそう、 コギーはここに残らない人よ。 |
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小木曽さんは、舟に乗って 息子さんとこに行っちゃうんですよ。 |
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あ、そうか(笑)。 |
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(笑) |
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大丈夫だから、コギーは。 |
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そうそうそうそうそう。 安心して、ゆけばいい。 |
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手漕ぎボートじゃなくて、 エンジン付きのに乗って、 ガンガン釣りしてるタイプじゃない? |
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そうか‥‥釣りか。 |
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そう、大丈夫! |
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よし、じゃあ釣るかね! ガンガン。 |
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コギー、すばらしい(笑)! |
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(つづきます!) |
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2008-12-24-WED |
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協力 ロボット / 東宝 / pieces of love |