第3回
結果としての「効率」。
- 糸井
-
ぼくなんかも、
ほっとくと「土日なんかいらない」と
言いたくなるんですよね。
それくらい「仕事が楽しい」ときには。
でも、休まないでも大丈夫みたいな
「若さ」のなせる持続性って、
ほんとは、ちょっと危ないですよね。
- 新井
- そうですね、それは。
- 糸井
-
これは、ずっと言ってることなんですけど、
「休みのクリエイティブ」が
まだまだできてないんです、自分も含めて。
「仕事が楽しいから、休みはなくていい」
ということは、
社員や、他人には勧められないことでね。
- 新井
- おっしゃるとおりです。
- 糸井
-
同じように「お金を稼ぐ」についても、
「楽しかったら
お金なんか稼がなくってもいい」って
言い切る考えは、持っていません。
「お金を稼ぐ」って、
「どれだけ役に立ったか」ってことだし。
- 新井
- はい。
- 糸井
-
稼ぎというのは
自分たちの発揮できるちからが伝わった、
お役に立てた、その答えだと思う。
フリーの人同士の間だと
「あの人は商売がヘタだからさあ」って
ある種の「褒め言葉」なんです。
- 新井
- ああ、なるほど。
- 糸井
-
でも、矢沢永吉じゃないですけど、
子どもが幼稚園に行く、
小学校に行く‥‥まではいいけど
大学も行きたいってときに、
「楽しければ、お金なんかいらない」って
言えないじゃないですか。
そりゃ、おまえはいいかもしれないけども、
学費どうするんだってことですよね。
- 新井
- ええ、ええ。
- 糸井
-
「ぜんぜん、もうかってないよ」
「バカだなあ」
って笑いあう場面は、
フーテンの寅さんではありえるけど、
事実としては、
自分に嘘をついてる気がするんです。
- 新井
- そうかもしれないですね。
- 糸井
-
で、そう思っていながら
「お金がすべてです」と言われちゃうと
「いや、そうじゃない!」
と言いたい気持ちが、やっぱりあって。
つまり、人を助けたいと思ったとしても
「ちから」がいるわけで。
- 西條
-
こんど、新井さんと
おたがいの著書の合同出版記念講演を
やるんです。
具体的には
「いいチームを作りましょう」という
講演のイベントなんですが
キーワードは
「ソーシャル」と「成果」だと思っていて。
- 糸井
-
なるほど。
どっちかだけじゃ、ダメってことですね。
- 新井
-
そう、そうなんです。バランスなんです。
バランスの悪い経営じゃ、もたない。
- 西條
- うん、うん。
- 新井
-
これまでの「日本型経営」というのは、
「ソーシャル」を
「内在」していたと思うんです。
「いいわるい」は別として。
企業や会社組織の欧米化が進んできて
最近、それが「外」に出てきた。
- 糸井
- ええ。
- 新井
-
で、そのソーシャルの部分のウエイトが
時代とともに、
どんどん求められているってことに
気づいている経営者と、
まだ気づいていない経営者がいるんです。
で、そのことに気づいてもらえるように、
いろいろ、わたしたちなりのやりかたで
はたらきかけをしているんですが、
そのときに邪魔になるのが、
じつは「効率」という考えかたなんです。
- 糸井
- ああ、そうかもしれないですね。
- 新井
-
わたしたちの投資先ではないんですが
わたしたちの基準でいう「いい会社」のひとつ、
「かんてんぱぱ」で有名な
長野県の伊那食品を見ていて思うんですが、
「いい会社」というのは、
本質的なところでは、
「効率」を追ってはいないんですよね。
でも、「結果として効率的」なんです。
つまり、長期的に見たらすごく効率的。
- 糸井
-
で、「ノーアイディア」なんですよね、
「短期的な効率」って。
- 新井
-
はい、そのとおりだと思います。
「効率を追いかけず、
結果として効率的になってる」のが
「いい会社の本質」なんじゃないかなあと
思っています。
<つづきます>
2015-06-24-WED
金融・投資信託の専門家・新井さんと
心理学・哲学の研究者・西條さん。
ふたりのプロの「わかりやすい」最新作。
鎌倉投信・新井和宏さんの
『投資は「きれいごと」で成功する』と、
西條剛央さんの『チームの力』。
前者は「いい会社」に投資しながら
国内投信1位となった鎌倉投信のことを書き、
大きな話題を集めています。
また後者は
「『進撃の巨人』の巨人とは何か?」という
興味深い序章からはじまる、
西條さんらしい「チームのつくりかた論」。
(序章はこちらのページで試読できます)
新井さんは金融・投資信託の、
西條さんは心理学・哲学の専門家ですが、
どちらの本も平易な文章で書かれているので
専門知識のない人でも、おもしろく読めます。
ご興味のある方は、ぜひ。
新井和宏
『投資は「きれいごと」で成功する』
Amazonでのおもとめはこちら。
西條剛央
『チームの力』
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