ものをつくるときに気をつけていること



絵:ヨシタケシンスケ
「聞く、ほぼ日。」のオリジナルコンテンツです。
毎回、ゲストの方を招き、その人が
「ものをつくるときに気をつけていること」を、
じっくりとうかがっていくオーディオコンテンツです。

聞き手は、ほぼ日の永田泰大と星野槙子が担当します。
GUEST 03
ヨシタケシンスケさん
(絵本作家、イラストレーター)
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第1回

「逃げ道を確保する」
後ろ向きな話を明るく話してくださるのが
ヨシタケシンスケさんの大きな特長です。
逃げ道の話、自分で自分に発注する話、
クオリティを落としてでも締切を守る(!)話、
理屈で75点までは行ける話、など、など、
ずっとおもしろいです、ほんとうに。
第2回

「過去と未来の自分に忖度する」
ヨシタケさんが心がけているのは、
子どものころの自分がいやだったこと、
イラッとしたことを作品のなかに入れない。
漫画が描けないことや、動物を描くときの決まりなど、
「どうしてもそうなってしまう」という
理屈の細かさと切実さがたまらない。
第3回

「取材をしない」
絵を描くときに、あえて取材はしない。
それどころか画像検索もしないヨシタケさん。
「当事者になってしまうと描けない」という
明確なスタンスの話から、今回もどんどん広がって、
大喜利と重なる話、顔出しの話、
「元気のない人」の話と、今回も聞き所満載です。
第4回

「結果を見ない」
ヨシタケシンスケさんは
自作の評判を調べたりしないそうです。
良くも悪くも、読者の声を聞いてしまうと
影響されてしまうとわかっているから。
意外にミーハーだという話、
あこがれの絵本の話などなど、
いやあ、最後まで、おもしろかったです。
<ヨシタケシンスケさんプロフィール>
絵本作家、イラストレーター。

1973年、神奈川県生まれ。日常のさりげないひとコマを独特の角度で切り取ったスケッチ集や、児童書の挿絵、装画、イラストエッセイなど、多岐にわたり作品を発表している。これまでに『りんごかもしれない』『もう ぬげない』(ブロンズ新社)『おしっこちょっぴりもれたろう』(PHP研究所)『あつかったら ぬげばいい』(白泉社)でMOE絵本屋さん大賞第1位を受賞。2児の父。
聞き手
永田泰大(ほぼ日)

星野槙子(ほぼ日)
ほぼ日刊イトイ新聞で
たくさんの読み物や書籍をつくっている永田泰大と、
ほぼ日手帳などのプロダクトを
企画開発している星野槙子が聞き手を務めます。
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いつかやってみようと
思っていたことを、いまはじめます。


こんにちは、ほぼ日の永田泰大です。



書くコンテンツばかりをつくっていたのですが、
このたび、しゃべるコンテンツに
取り組むことになりました。
マイクの前に座ります。



いや、そんなのできるの? 
しゃべれるの、おまえ?
という気持ちはいまでももちろんあります。
とはいえ、ゲストの方々をお招きし、
お時間をいただいて語ってもらうのですから、
できるの? とか言ってる場合じゃありません、
やるんです。ぼくは、やります。



できることをしっかりやろう、
できることをとことんやろう、
というスタンスで仕事をしてきました。
具体的にいえば、書くことや編集すること、
なにかを企画することを中心にしてきました。
今後もきっとそれは芯として変わりません。



けれども、もっとできることがある。
そのことに、じつは気づいていたのです。
あらゆる技術が個人の発信を
超イージーに超スムーズにしてくれているのに、
そこは、まあ、いいかな、と後回しにしていることに。



わざと、遊びでやってみますよと言い訳をして、
ちょっと試したりはするものの、
本領にはしないまま、やり過ごしてきました。
そういうふうに曖昧におもしろがるのも
もちろん気楽でたのしいんですけど、
今回ばかりは、きちんとやってみるつもりです。



なぜかというと、真剣にやったほうが、
絶対にいいものになるからです。



もうすこし前段から話すと、
かつては、自分がそういうことと
まったく無縁だと思っていました。
つまり、書くのはできるけど、しゃべるなんて、と。
正直、選択肢にあがる以前の論外だと思ってました。



覆されたのは2011年のことでした。
東日本大震災の直後です。
はっきりと、ある1日がきっかけでした。



その日、まだ被害が生々しい福島県を
ぼくは取材していました。
現地を車で案内してくださっていたのは、
福島県のラジオ局に勤務されている方でした。



その日の取材がだいたい終わって、
ぼくらは夕方にそのラジオ局に戻りました。
そこで、唐突に言われたのです。



ラジオ福島の大和田新アナウンサーは、ぼくに言いました。
「じゃあ、永田さん、そこに座って。
 いまから夕方の生放送です。
 今日、取材して、感じたことを、
 なんでもいいからそのまましゃべってください」



え、そんなのできません、とは、とても言えません。
当時のことを憶えている人も多いと思いますが、
2011年に起こった東日本大震災というのは、
「いま、なにができるのか?」ということを
ひとりひとりに予断なくジャストで突きつける、
純度の高い機会のかたまりだったのです。



つまり、2011年、
日本で真剣に仕事をしていたほとんどの人は、
四の五の言ってる場合じゃなかった。



時間が来て、ブースの向こうからキューが出て、
ぼくはマイクの前でしゃべりました。
もちろんそれは大和田さんの経験によって
あらかじめ裏付けられていた環境だったのだと
いまはわかりますが、
リハーサルも台本もまったくないなかで、
ぼくは意外なほどきちんとしゃべることができました。
いろんなことを、まっすぐに、ごまかさずに、
ちゃんと言えたと思います。



そうか、とぼくは、終わってから思いました。
こういう表現もあるんだ、と。



そんなわけで、
いつかやってみようと思っていたことを、
いまはじめます。



やりたいことをそのままタイトルにしたら、
なんだか長くなりました。



「ものをつくるときに気をつけていること」



ひとつだけ、決め事をつくりました。
ゲストの方に、先に言ってもらいます。



「ものをつくるときに気をつけていること」を。



つまり、一旦結論が出ているところまでは
近道させてもらって、
そこから話していきたいのです。
これなら不慣れなぼくでも安定して加速できるはず。
近況とか世間話とか挨拶とかはスキップして、
その人のクリエイティブの真ん中を轟々と流れる
潮流にいきなり乗っかっていきたいのです。



そういう場にしたい、と考えたら、
なんだかちょっと恥ずかしいんですが、
もう、すぐにいろんな人と話したくなりました。
きっと、それぞれにあると思うんです。
「ものをつくるときに気をつけていること」が。
あえて他人事みたいにいえば、
絶対おもしろいと思うんですよね、その話。



しゃべるコンテンツをはじめます、
ということを、またしても、
こうしてたっぷり書いてしまいました。
でも、要するに、書くこともしゃべることも
気にせずどんどんやっていこうよ、
っていうことだから、これでいいのだと思います。



そんな気持ちではじめます。
最後くらいはマイクの前にいる気持ちで言いましょう。



みなさん、どうぞ、おたのしみに!





永田泰大(ほぼ日)
今までの「ものをつくるときに気をつけていること」
GUEST 01
森下佳子さん(脚本家)
GUEST 02
桜井政博さん
(ゲームクリエイター)