木村拓哉さんと糸井重里は、
かなり以前から、もう、25年くらい前から
おつき合いがあるのです。
じつは創刊当初のほぼ日のオフィスにも
ときどきこっそり遊びに来ていたり。
そんなふたりが、久しぶりに会いました。
木村拓哉さんがMCを務める
ラジオ番組「Flow」のマンスリーゲストに
糸井が呼ばれたのです。
久々に会っても自然体なふたりが
たっぷり話した約2時間。
放送されなかったトークも含めて、
だいたいぜんぶを文字にしました。
- 木村
- 糸井重里さんとのお仕事でいうと、
「イトイ式」っていう番組がありまして。
- 糸井
- はい。
ひとつのテーマがあって、
何人かで延々しゃべる、っていう番組。
- 木村
- はい。掘りごたつに座って、
おでんかなんかを食べていたら、
いろんなお話をさせていただくというところに、
じぶんも参加させてもらいましたね。
あの番組では、いつも、
「なんで俺、ここに座ってんだろう?」
って思ってました。
糸井さんがいて、
渡辺真理さんがレギュラーでいて、
あと、筋肉少女帯の大槻ケンヂさんとかが、
トーク番組なのに、
ちゃんと筋肉少女帯のボーカルとしての
メイクを施されて‥‥。
- 糸井
- 顔にヒビ入れてね(笑)。
- 木村
- 顔にヒビが入った状態で、いらっしゃって。
あれ、なんでいたんですかね、ぼくが。
- 糸井
- 呼んだからだよ。
- 木村
- はい、呼ばれました(笑)。
- 糸井
- やっぱり、おもしろかったんですよ。
あんときの、あの年齢ぐらいの子が、
何考えてるかな、っていうのと、
それから、やっぱり、なんだろう、
武道館を埋める数の目玉に毎日見られてる人
っていうのが育ってるのは、
ぼくから見たらすごくおもしろくて。
ただ若いっていうだけじゃない
おもしろさがあったんですよね。
だから、まぁ、お世辞じみた言い方になるけど、
この子はすごいよ、って思ってた。
- 木村
- へぇー。
- 糸井
- しかも、しゃべるとこのくらいおもしろい子が、
武道館とか行くと、
くるくる回るんだ、っていうさ。
- 木村
- はい、くるくる回ってました(笑)。
「イトイ式」に参加させていただいたときに、
ぼくの中で、すっごい印象に残ってるのは、
いまでも映像が思い浮かぶんですけど、
谷川俊太郎さん。
- 糸井
- あー、谷川さんね。
- 木村
- 谷川さんが、同じ掘りごたつに、
ポンと座られたときに、
あれ、ちょっと待てよ、俺はいま‥‥え?
実在の人と話をしてるのか? って。
なんか、教科書の1ページがそこに座ってる、
みたいな、感覚があったのをすごく憶えてます。
- 糸井
- あのときは、テーマが「死」だったんですよね。
- 木村
- うん。
- 糸井
- 谷川さんはもうすでに老人だから、
死の話とかさせるのって、
あんまりテレビ的じゃないんですよね。
- 木村
- いや、テレビ的じゃない、っていうか、
あのー、まぁ、大先輩をゲストに迎えて、
テーマが「死」って‥‥。
いま、やんないですよ。
- 糸井
- まぁ、深夜の番組だったし。
- 木村
- 深夜じゃなくても、やんないです。
- 糸井
- で、谷川さんがまたおもしろいことに、
ドクロのTシャツを着てきたんだよ。
- 木村
- そうでした(笑)。
- 糸井
- あの後に、谷川さんには、
「死をテーマにして絵本を描いてください」
っていうのをお願いして、うちから出てるよ。
(『かないくん』ほぼ日ブックス)
- 木村
- そうなんですか。
- 糸井
- そういう中に、一番若い子として
木村くんがいてね、おもしろかったよね。
- 木村
- おもしろいっていうか、
じぶんとしては、ものすごい、なんかこう、
柵のない、肉食動物がいるような場所に、
じぶんがポンと置かれた感じはありましたね。
- 糸井
- 思えば、あの年って、まだ少年だもんね。
- 木村
- いま言えばそうですよね。
- 糸井
- ねぇ。大きくなったよね、お互いね。
- 木村
- いやいや、もう、ほんとに、
久しぶりを通り越して、もうなんか、
いろんな話が出過ぎてしまうんですけども。
- 糸井
- ねぇ。
- 木村
- あと、これは仕事じゃないんですけど、
糸井さんの事務所に
お邪魔してるときのことで憶えてるのは、
糸井さんがたしか、某ビール会社の‥‥。
- 糸井
- ああ、CM。
- 木村
- そう、CMの企画中で、
ちょうどシンキングタイムに入ってたときに、
「木村くんだったらどうする?」
っていうなんかフリを急にされて、
俺だったら‥‥えー、どうっすかねー、
球場のビールの売り子になりますね、
みたいな話をしてたんです。
そしたら、糸井さんが鉛筆投げたんですよ。
「それだ!」とか言って(笑)。
- 糸井
- ああー(笑)。
- 木村
- そんで、そこから、なんかいろいろ、
ああでもない、こうでもない、
っていう話に参加させてもらって。
ぼくもそういう経験なかったですし、
コマーシャルの中身を頭の中で想像する、
まあ、じぶんの場合、
要は「CMを考えるごっこ」というか。
- 糸井
- うん、うん。
- 木村
- みたいなことを、
糸井さんとさせてもらったりして。
- 糸井
- あれ、けっこう俺は感心してたんだよ。
どういったらいいんだろうね、
人前にさらされてる人の発想というのは、
やっぱり、ちょっとね、並じゃないんだよ。
- 木村
- いやいやいや。
- 糸井
- なんでしょうかね。
けっこうね、ふつうに広告会社に
企画で入った子とかよりも、
木村くんが考えるもののほうがおもしろいと、
ぼくはたぶんそこで言ったはずで。
- 木村
- へぇー。
- 糸井
- のちにぼくが
「木村くんは2年ぐらい休めばいいのに」
ってしょっちゅう言ってたのは、
そういうところを育てればいいのに、
って本気で思ってた。
- 木村
- そうそう(笑)。
わりと、要所要所でね、
かるーく言ってくれるんですよ、糸井さんが。
「ちょっと休めば?」って。
で、そんときも、
バリバリくるくる回ってた時代だったので、
「いや、いま休んだら、
そうとういろんなところに
迷惑かけると思うんですけど」って言ったら、
「あ、そうなんだ。迷惑かけるのはよくないね」
ってわりとあっさり言うから、
はい、続けてたんですけど。
- 糸井
- (笑)
(つづきます!)
2019-09-03-TUE
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN