木村拓哉さんと糸井重里は、
かなり以前から、もう、25年くらい前から
おつき合いがあるのです。
じつは創刊当初のほぼ日のオフィスにも
ときどきこっそり遊びに来ていたり。
そんなふたりが、久しぶりに会いました。
木村拓哉さんがMCを務める
ラジオ番組「Flow」のマンスリーゲストに
糸井が呼ばれたのです。
久々に会っても自然体なふたりが
たっぷり話した約2時間。
放送されなかったトークも含めて、
だいたいぜんぶを文字にしました。
- 木村
- 糸井さんからはいろんなものを
紹介してもらったんですけど、
たとえば糸井さんのところに遊びに行ったとき、
「いまこういう本つくってるんだよね」って、
見せてもらったのが矢沢永吉さんの本で。
- 糸井
- ああ、どの本だろう?
- 木村
- ええと、石膏かなんかで、
矢沢さんご自身の型をとってる写真があって‥‥。
- 糸井
- あ、写真集ですね。
生年月日をタイトルにしたやつですね。
(『矢沢永吉写真集
ー19490914 THE LIFE OF EIKICHI』
1995年発売)
- 木村
- そう、写真集でした。
あれで矢沢さんを知りましたし。
- 糸井
- あ、そういえば、木村くんと永ちゃんは
ドラマで共演したりしてたね。
(『BG~身辺警護人~』)
ああいうの、うれしいのよ、俺、あんがい。
- 木村
- そうですか(笑)。
あとは、RCサクセション、
忌野清志郎さんもそうですし、
糸井さんからいろんなパスをもらって、
そのパスがじぶんの中で、こう、
いろんなかたちになってるというのが
けっこう多いですね。
- 糸井
- 木村くんは清志郎くんとも
共演したともいえるし。
- 木村
- はい、このあいだ、清志郎さんの10回忌の
ロックンロールショーに呼んでいただいて。
だから、そのときもやっぱり、
「あれ? なんで俺、ここにいるんだ?」って、
野音のステージで思ったんですよ。
- 糸井
- ああ、うん(笑)。
- 木村
- 「なんで俺ここにいるんだ?」
って思ったときに、糸井さんの顔が出てきて。
あ、そうだ、っていう。
- 糸井
- それは、なんだろうね、
応援団が団旗を代々渡していく、
みたいなことかもね。
- 木村
- いや、代々というよりかは、なんか、
糸井さんからもらったものが
脈々とじぶんの中で広がっている感じがあります。
- 糸井
- あー、それはうれしいね。
でもね、逆もあんがいあるんだ、っていうの、
ちょっと憶えといたほうがいいよ。
- 木村
- 逆?
- 糸井
- たとえば、釣りもそうだけど、
ぼくが木村くんからも
いろんなものを受け取っているということ。
- 木村
- ああー。
- 糸井
- たとえば、いま若い子が何をしているのか、
っていうのを、俺はけっこう避けないで、
どんどん顔を突っ込んでいくんだけど、
それが躊躇なくできるのは、
昔、木村くんにつき合って、
いろいろ経験したからだよ。
- 木村
- そうですか。
- 糸井
- うん。それはね、すごいことなんだよ、やっぱり。
たとえばさ、原宿と青山って隣り合わせだけど、
同じ飯屋でも、原宿の飯屋に入ると、
お客さんがもう、全員若いよね。
で、青山で飯食うと、
まわりはもう老人ばっかりなんだよ。
ぼくの行くような店は特に。
- 木村
- そんなことないんじゃないですか(笑)。
- 糸井
- いや、あんがい、そうなんだよ(笑)。
すっごいぞ、ほんとに、
全員老人、みたいなことよくあるよ。
俺を筆頭に。
- 木村
- あー(笑)。
- 糸井
- だけど、原宿のうどん屋がうまかった、
みたいなことを知り合いが言うと、
じゃあ行こうか、って言って、
うちの奥さんと行ってみるからね。
そういうことも、やらない人はやらないと思うよ。
ぼくくらいの年齢になるとね。
で、行ったら行ったでやっぱりもう、
いまどきの若い者だらけだったけど。
- 木村
- 「いまどきの若い者」を、
それこそ、糸井さん的な表現として言うならば、
どういう感じなんですか?
- 糸井
- いまどきの若い人たちはね‥‥
えっとね‥‥薄着?
- 木村
- ふははははは!
- 糸井
- (笑)
- 木村
- 「薄着」(笑)。
あー、なんか、なんか、
すごい伝わった、いま(笑)!
- 糸井
- 伝わったでしょ。
- 木村
- 伝わった。
何が出てくるんだろうと思ったら、
「薄着」(笑)。
- 糸井
- 映像が見えたんだよ、いま。
- 木村
- 「薄着」(笑)。
- 糸井
- 「薄着」(笑)。
- 木村
- あー、わかる(笑)。
- 糸井
- 薄着的な会話をしたりね。
- 木村
- 薄着的な会話?
- 糸井
- 薄着の人がしてそうな会話してるよ。
そういうところに
うどんを食いに行っちゃったもんでさぁ、
うどん待ってるあいだは、
なかなかな居心地だよ、それは。
70歳対28歳みたいなもんだからさ。
- 木村
- いやいや、別に、バーサスにはなってない。
- 糸井
- バーサスじゃないんだけどさ。
やっぱりね、少ーし浮くんだよ、やっぱり。
だけど、いやだなぁとは思わないね。
ぼくらと通じる同じ人間観というか、
そういうものがあるってわかっているから。
それは、19、20ぐらいのときの木村くんと
一緒に過ごしてたからだと思うよ、きっと。
- 木村
- ああ、そうですか。
- 糸井
- なんていうんだろう、
ひねって生きてるじゃん、若い子って。
- 木村
- ひねって生きてる‥‥?
- 糸井
- 「おいしいです」じゃなくて、
「おいしぃーよ」みたいなさ。
よくわかんないんだけどさ、俺も。
- 木村
- はははは、
いまのはわかんなかったなぁ(笑)。
- 糸井
- なんかさ。
声の出し方が違うのよ、もう。動物として。
だけど、その奥にあるものは、
けっこうしっかりした青年だったりして。
そういうの見てたからさ、
俺はわりと、わかる、大丈夫みたいな。
- 木村
- (笑)
- 糸井
- わけわかんないか。
- 木村
- いやでも、なんていうんだろうな、
薄着な感じのなかに、
ぽつんと存在したときに、
別にイヤじゃない、と。
- 糸井
- うん、イヤじゃない。
(つづきます!)
2019-09-05-THU
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN