木村拓哉さんと糸井重里は、
かなり以前から、もう、25年くらい前から
おつき合いがあるのです。
じつは創刊当初のほぼ日のオフィスにも
ときどきこっそり遊びに来ていたり。
そんなふたりが、久しぶりに会いました。
木村拓哉さんがMCを務める
ラジオ番組「Flow」のマンスリーゲストに
糸井が呼ばれたのです。
久々に会っても自然体なふたりが
たっぷり話した約2時間。
放送されなかったトークも含めて、
だいたいぜんぶを文字にしました。
- 木村
- 糸井さんの仕事でいうと、
ゲームもつくってましたよね。
- 糸井
- うん。『MOTHER2』は、ほぼ日をはじめる前だね。
あ、そうだ、『MOTHER2』のコマーシャルは
木村くんにお願いしたんだもんね。
- 木村
- はい。
- 糸井
- マーザーツーー♪
- 木村
- やってましたね(笑)。
- 糸井
- あったねぇ。
- 木村
- スカジャンつくってくれましたよね、
『MOTHER2』の。
- 糸井
- あ、そうそうそう。
- 木村
- で、俺、それがうれしくて、
その『MOTHER2』のスカジャン着て、
横浜の元町に買い物行ったら、
地元の子たちに、
おめー横浜にそんなスカジャン着て、
いい度胸してんな、って絡まれて。
- 糸井
- おお(笑)。
- 木村
- なんだこの絡まれ方、って思いながらも、
まぁ、それに対して、なんていうか、
当時のじぶんのリアクションをして、
一通りその時間を過ごして、帰ったんですけど、
次の週の週刊誌に、そのときのすべての会話が、
こと細かく載ってたんですよ。
- 糸井
- へーー。
- 木村
- っていうことは、まぁ、
そういうことだったんだ、と思って。
- 糸井
- あー、ちょっとヤだねー。
- 木村
- なんかいろんな形があるんだなぁ、
って、思いましたけどね。
- 糸井
- ああ、そうか。
いや、木村くんは、
ときどきちゃんと腹立ててたよね。
- 木村
- ははははは。
いや、腹立つときは立ちますよ。
- 糸井
- ね。
- 木村
- 人ですから。
- 糸井
- 腹立ててたよね。
やっぱり悔しかったんだろうね。
悔しいよねー、そういうの。
- 木村
- はははは。腹立つときは立ちます。
- 糸井
- そうですよね。
いや、でも、大したもんだなぁと思った。
そういう子がちょっとずつ大人になって。
- 木村
- ちょっとずつというか、
まだなりきれてないと思いますけど。
- 糸井
- でも、お嬢さんができたりすると、
やっぱり、この子に言えることをしよう、
みたいな気持ちになるでしょ、きっと。
- 木村
- うーん、そうっすね。
- 糸井
- お父さん、あれ、なんだったの?
って言われたときに、
こうだったんだよ、って言えれば、
世間がなんて言おうが平気だと思うけど、
娘にこれは言えないなぁっていうことは
しないほうがいいですよね。
- 木村
- そうですね。
- 糸井
- 子どもがいるって、
そういうところが大きいんだろうなと思った。
- 木村
- でかいっす、はい。
- 糸井
- だんだん、
かっこよさが変わってくるんだよね。
俺、木村くん本人に言ったかどうかわかんないけど、
木村くんっていうのは、
「かっこいい収集家」だと思うんだよ。
- 木村
- 収集家(笑)?
- 糸井
- 「かっこいいコレクション」を
ものすごく持ってるやつだと思うんだよ。
- 木村
- ああ。
- 糸井
- だから、たとえば、永ちゃんなんかも
すごくかっこいい人なんだけど、
彼は無意識でやってることが、
「矢沢がやってることだったら、
人はかっこいいと思うようになる」
っていう信念があるんだよ、たぶん。
- 木村
- うん。
- 糸井
- だから、下着として着るような
真っ白いTシャツ1枚で、
そのへんふらふらしてても、
矢沢がやってたらかっこいいんだよ、みたいな。
そういうことをナチュラルで
やれる人なんだよ、永ちゃんは。
- 木村
- うん、うん。
- 糸井
- でも、木村くんは、
そういうことぜんぶをちゃん意識して、
「それもかっこいいな」ということを
いちいち知ってるわけで。
- 木村
- あー。
- 糸井
- だから、誰かがやってるのを見て、
かっこいいなぁ、とか、あるいは、
本人はかっこ悪いと思ってるんだけど、
あれはかっこいいな、とか、
かっこいいをものすごく見つけて、
それ、俺もそっちがいいな、っていうことを、
いっぱい足し算して、
「キムタク」ができてきたと思うんだよ。
- 木村
- はい、はい、はい。
- 糸井
- で、なおかつ、
これはやめた、っていうのも言えるし、
かっこよさが「着脱可能」なんだよ。
- 木村
- 着脱可能(笑)。
- 糸井
- 意識的なんだよね。
だから、きっと本人にしてみると、
ある意味、「かっこ悪さの塊」に見えるような
かっこいい人には、たぶん、もうなれない。
- 木村
- うん。
- 糸井
- だって、木村くんの職業って、
いわば「かっこいい業」だからさ。
- 木村
- 「かっこいい業」。
- 糸井
- うん。女優さんは「きれい業」じゃない?
- 木村
- ま、そうですね。
- 糸井
- そうじゃなかったら仕事にならないわけだから。
ふつうはかっこよくないことも、
こうやったらかっこよくなるな、
っていうようなことを、
編集も含めて収集してきてる人だから。
- 木村
- はい。
- 糸井
- そういう意味では、これからがたのしみだね。
どうなるんだろうね、木村くんは。
たとえば、おじいさんになったら、
おじいさんなりのかっこよさを
見つけるんだろうな‥‥とか思うんだよ。
- 木村
- でも、いますからね。
- 糸井
- いますよね、かっこいいおじいさんは。
- 木村
- 実在してますからね。
- 糸井
- それをつくっていくというよりは、
ああなりたいな、という憧れが
「かっこいい業」をつくってると思うんだよね。
- 木村
- うん、うん。
- 糸井
- あんがい、木村くんが
謙虚に、偉そうにしないでいられるのは、
憧れが原点だからだと思うんだよ。
少年のときの憧れみたいな。
それは若いときに、木村くんに、
言ったような気もするんだよね。
たぶん、そのときには、
まだわかんなかったのかもしれないけど。
- 木村
- でも、いま、すごいわかります。
- 糸井
- そう(笑)。
(つづきます!)
2019-09-07-SAT
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN