木村拓哉さんと糸井重里は、
かなり以前から、もう、25年くらい前から
おつき合いがあるのです。
じつは創刊当初のほぼ日のオフィスにも
ときどきこっそり遊びに来ていたり。
そんなふたりが、久しぶりに会いました。
木村拓哉さんがMCを務める
ラジオ番組「Flow」のマンスリーゲストに
糸井が呼ばれたのです。
久々に会っても自然体なふたりが
たっぷり話した約2時間。
放送されなかったトークも含めて、
だいたいぜんぶを文字にしました。
- 木村
- でも、さっき糸井さんが
ポロッと言いましたけど、
‥‥ほんとバカですね、男は。
- 糸井
- バカ(笑)。バカ、ほんとに。
「あわよくば」とかね。
- 木村
- ね(笑)。
で、女の子はそれを見透かしてる。
- 糸井
- 人類が、そういうふうにできてるんだろうね。
つまり「バカな男がいる」という前提で。
- 木村
- そうなんですかね。
- 糸井
- だって、そうじゃないと、
みんなでおずおずしてさ、
誰も「一緒に帰ろう」とか言い出さない、
っていうのも困っちゃうだろう。
- 木村
- そうか(笑)。
- 糸井
- だから、もう、ぼくみたいな
おじいさんの意見としては、
バカな男の子はそのまま行って、
「ふられて来い」って言いたい。
- 木村
- 男の子に。
- 糸井
- うん。で、ふられたら、
「よかったじゃないか!」って言うよ。
それはどんなにきつい小説読むよりいいことだよ。
ふられたときに男はさ、
「なんでダメなんだよ」って思うじゃない?
でも、その「なんでダメなんだよ」の中にさ、
人から見たら一発でわかるような
おまえの弱点や欠点があって、
ふられたらそこに触れざるを得ないじゃない?
- 木村
- うん、うん(笑)。
- 糸井
- それって、すごく大切なことだから、
「なんでダメなんだよ」っていうのは、
やっぱり体験したほうがいいんだよ。
まさに、あの、なんとかくんの台詞だよ。
「俺じゃダメか?」だよ。
- 木村
- ああ、(ドラマ『あすなろ白書』の)
取手くんのね(笑)。
- 糸井
- 取手くん、取手くん。
あの、女の子におんぶされて
「俺じゃダメか?」
- 木村
- いや、おんぶじゃない。
- 糸井
- うん(笑)。
- 木村
- うしろから抱きかかえているんです。
- 糸井
- そうだった(笑)。
- 木村
- おんぶされてたら、女の子重いでしょ。
- 糸井
- はい(笑)。
で、取手くんのさ、
「俺じゃダメか」のあの台詞を、
なんでみんながあんなに憶えてるかっていうと、
俺じゃダメだ、ということについて、
「どうしてなんだろう?」ということと、
「どうにもならない」っていうことでもあるし。
- 木村
- はい。
- 糸井
- もっと考えると、
「おまえのしあわせを祈るよ」
っていうことでもあるから。
だから、あれは、若い子にとって、
すごく大きな台詞なんだよね。
- 木村
- うん、うん。
- 糸井
- だから、メールの相談に戻ると、
どんなふうになっても、
なんて言われてふられても、
男の子は、負けないですよ、と。
- 木村
- そうですね(笑)。
- 糸井
- ひっくり返して言ってあげるなら、
男の子は、ふられても、
どんなことばで断られても、
負けちゃダメですよ。
- 木村
- そうですね。
ちなみに糸井さんは、十代のころ、
ふられても平気でしたか?
- 糸井
- 俺は、だいたい平気だったよ。
泣いたけど。
- 木村
- いや、泣いてるじゃないですか(笑)。
- 糸井
- だからさ、それは、もちろんつらいけど、
告白したことを後悔してないってことだよ。
それは、ずっとそうだよ。
- 木村
- ああー、なるほど。
そこは大きい部分ですね。
- 糸井
- うん。
- 木村
- いまは、きっと、
泣くのがイヤな人が多いんじゃないですか?
- 糸井
- ああ、そうかもしれない。
そりゃー、ダメだよ、泣かなきゃ。
泣くでしょ。
それを、どう収めるかというときに、
じぶんができてくるわけじゃない?
- 木村
- うん。
- 糸井
- それこそ、恋愛の話ばっかりじゃないよ。
仕事のことだってそうさ。
どうして俺は無力なんだろう、とかさ、
そこからはじまることだらけなんでさ。
泣いたほうがいいよ。
涙が出たか、出ないかだけのことだからさ。
- 木村
- おおー、すごい、
泣いた人が言ってます(笑)。
「涙が出ただけだから」って。
- 糸井
- そうだよ。
そこでうまく行かなかったおかげで、
そののちに、もっといいことが
あったかもしれないし。
- 木村
- うん、うん。
- 糸井
- それを選ぶのはじぶんだからさ。
- 木村
- あ、けっこう、なんかぼくら‥‥。
- 糸井
- 真面目に話してる?
- 木村
- いい時間になってますよ(笑)。
- 糸井
- 真面目にやってる、ものすごく(笑)。
- 木村
- ははははは。
- 糸井
- 深夜のラジオ番組みたいになってきたね。
- 木村
- いやいやいや、
これは午前中の番組です。
- 糸井
- そうなんだよね(笑)。
(つづきます!)
2019-09-11-WED
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN