「ボコ・ムーカ・スッキ」カプセルトイの驚くべき真実 「ボコ・ムーカ・スッキ」カプセルトイの驚くべき真実
「コップのフチ子」「おにぎりん具」など
カプセルトイで大ヒット連発中の
キタンクラブさんが設立15周年を迎えました。
記念動画を映像作家の藤井亮さんに依頼したら
「存在しない国が作った、
ぜんぶウソのガチャガチャのドキュメンタリー」
ができあがり、これまたSNSで大評判でした。

ほぼ日では、渋谷パルコ「ほぼ日曜日」で
この動画にちなんだ展示イベントを開催します。
2022年2月の開催に向けて準備を進めるにあたり、
キタンクラブの古屋大貴さんと藤井亮さんの
キックオフ対談をおこないました。
写真:タケシタトモヒロ
(4)わけがわからない、いい意味で。


写真
──
今回のお仕事では、
どこに時間がかかったんでしょうか。
藤井
編集はいつも時間がかかるんですけど、
今回は撮影準備にも時間かかっちゃいましたね。
撮影自体は実質2日とか3日で終わりますが、
撮るまでの準備と撮った後の加工に
めちゃめちゃ時間かけてしまいました。
──
途中で古屋さんにお伺いを立てる、
みたいなことはされなかったんですか。
古屋
それはなかったなあ。
藤井
相談をしないことで、
スピード感を出すようになっていました。
古屋
そうそう、そうそう。
ぼくも全然気にしてなかったしね(笑)。
何もわからないまま時間だけが過ぎていって、
そうしたら、この作品ができたんですよ。
写真
藤井
ちょいちょい、
よくわからない写真だけを送り続けて。
古屋
そうそうそう。
その写真だけでもだいぶ期待大でしたね。
あ、これは順調だなって安心して
「そのまま行ってください」と返しました。
──
後々の展示のことを話していたときに、
撮影中の1枚を見せていただいたんです。
合成用のグリーンバックに
ガチャファイターがいるんですけど、
ストーリーを知らないから意味不明で。
知らない男の人が知らないキャラの
コスプレをしているっていう。
古屋
そうだよねえー。
写真
──
古屋さんから作品に関することは
全部任されたわけですが、
藤井さんは力を抜かなかったんですね。
藤井
任せてもらったおかげで頑張れたんです。
任せてもらったのにつまんないものを納品したら
ダメだぞっていうのも思ってました。
広告の仕事をやっていたとき、
クライアントにお伺いを立てることで
つまらなくなることがよくあって。
古屋
ほんと、そうですね。
藤井
でも意外と、広告を作ってる人たちも
それを言い訳にしたんですよ。
今は、任せていただいた以上は
おもしろくするしかないというか、
逃げ場もなくなったんで。
古屋
うちは大きな会社でもないし、
制約があんまりないところがよしと思ってるんで、
本当よかったなあ、そこも。
最後にキタンクラブのCMが流れるじゃないですか。
ああいう風になっているのも、
何もわかんないままある日突然見たんです。
──
あのCMですら、リクエストもなし?
古屋
なかったですね。
最後にCMを入れるのは聞いてましたけど。
あれもよかったからなあ。
──
こんなクライアントさんばかりじゃ
ないわけですよね。
藤井
今回、尺まで自由でしたからね(笑)。
CMは15秒とか30秒を
超えてはいけないとかありますけど。
──
ネット動画はなるべく短いほうがいいって
よく言われていませんか。
藤井
もちろん短い方がいいっていうのは
絶対にそうだと思うんです。
でも今回、6分とか7分ありますが、
どちらかって言うと短い動画の積み重ねなので、
ある意味ではみんなが好きなように切り出して、
ネットにアップしてもらえる方が
おもしろいんじゃないかなと思ったんです。
CMのところだけ切り出してアップするもよし、
どこを切っても使えるように意識してました。
写真
古屋
おもしろいのが
いっぱいいっぱい入ってますもんね。
藤井
ストーリーもあるようでないから、
全部見なきゃわからない動画でもないですし。
部分を切り出ししても成立する。
古屋
たしかに、たしかに。
全体を通して、
修正もほとんどありませんでしたよね。
藤井
字幕の1、2ヶ所とかそんなもんでした。
あっ、老ファイターの吐血シーンを
削ったのもありましたね。
──
「ゲホッ! ゲホッ!」ってむせたとき?
古屋
ぼくは何も感じなかったんですけど、
うちの社員が「それはちょっと」って。
藤井
ティッシュが血まみれになるんです。
古屋
ありましたねー。
──
血まみれは、ショックが強すぎるかも。
古屋
近代篇には神社も出てきましたよね。
あれって、どこだったんですか。
写真
藤井
「我知也神社」のシーンは滋賀で撮りました。
古屋
あーっ、あれは滋賀なんだ!
藤井
神社とかお寺って、
あまり撮影させてもらえないんですよね。
「撮影してもいいですよ」という場所もありますが、
企画の説明が必要になって
「架空のガチャガチャの神社という設定です」
で、その瞬間に「ちょっとそれは‥‥」って。
古屋
理解してもらえなくてダメになるんだ(笑)。
藤井
でも、滋賀にあるその神社は
コスプレイヤーの人たちを歓迎して
わりと自由に撮らせてくれるんです。
古屋
その裏話はすごくいいなあ。
──
意味不明な名言もたくさんありました。
イライラしたときのことわざに
「モゼスをロゲッソする者はペッソを逃す」。
冷静になると「必ずヘップスがピレンします」。
もう、全部わかんなくて最高です。
古屋
これも特にベースはないわけでしょう?
藤井
やっぱり、存在しないものなんで。
文字まわりも全部、
フォントから作っているんですよ。
それで結構、時間食っちゃったりして。
古屋
いや、すっごいなあ。
藤井さんの仕掛けた細かいネタに
気づいてくれる人がいましたよね。
画面の両サイドが緑色とか、
ああいう反応もすっごいおもしろかった。
藤井
「そこに気づいてほしかった!」
みたいなところにも気づいてもらえましたね。
『ガチャファイター廻』のCMでも
ファイターがワープしてくるんだけど、
ドアが開いてからワープしてるっていう
まったく意味のないことをしてるんです。
写真
古屋
あれも絶妙だったよなあ。
ふりかけのCMにカレーを被せる感じとか、
当時は普通にああいうの流れてたじゃないですか。
尺の関係で無理やり入れたようなやつ(笑)。
藤井
CMのぶら下がりで、
ああいうのにはカレーが付くよなと思いついて
カレーを足したんですけど、
それがなんだったかなと思って考えても
特に思いつかなかったんですよ。
古屋
なるほどね(笑)。
──
ラモス瑠偉選手が出ていた
JリーグふりかけとJリーグカレーのCMとか、
ぼくは今でも覚えています。
藤井
そっか、なんかぼくの中で、
ふりかけのCMというとカレーが
無理やりついてくる印象があったんです。
アニメの商品化といえば、
ふりかけかカレーか目薬かみたいな。
古屋
あの感じはデジャヴみたいでした。
キャラクターのふりかけって、
子どもの頃にはみんな持ってた気がするもん。
ふりかけの消費量をグラフで見ると
どうなっているんだろうなあ。
ふりかけっておいしいから、
もう一回布教したらまた売れそうじゃない?
藤井
今でも「ドラえもんふりかけ」とか、
「しまじろうふりかけ」とか売っていますね。
子どもはすごい食べてくれますよ。
古屋
大人ももっと使えばいいんだろうな。
ふりかけの話になっちゃったけど、
ふりかけのカプセルトイって‥‥。
でも賞味期限があるからダメなんだよなぁ。
やっぱり近代篇がすごい好きですね(笑)。
写真
──
近代編は懐かしいと思わせる要素が
本当にいろんなところに出てくるから、
次々に懐かしさが押し寄せてくる感じでした。
編集にものすごい時間をかけたと思いますが、
YouTubeやTwitterのコメントを見ていると、
藤井さんの労力が
ちゃんと還元されている感じがします。
藤井
よかった、報われてますか(笑)。
──
YouTubeのコメントを見ても、
藤井さんが残したエッセンスを
大事にしようとしている感じが見えました。
藤井
反応は、すごくよかったですね。
映像自体がキタンクラブさんの世界観に
ずれないでハマってくれた気がしています。
古屋
Twitterの反応もよかったし、
再生回数がガーって伸びたんで、
そこに全部が現れているのかな。
「わけがわからなくていい」っていう、
そういう反応がまさに欲しかったから。
頭がおかしいって言われるんですよ。
後ろに「いい意味で」ってつくような
評価をもらえているのがすごいうれしいの。
──
キタンクラブさんのカプセルトイでも、
同じような反応がありそうですよね。
古屋
まあ、うちはそうですね。
今では「おにぎりん具」ってのが売れてますけど、
もともとは存在しなかった概念だったんですよね。
「コップのフチ子」もまさにそうですし。
藤井
「むちゃくちゃやってるけど、なんか好き」
というイメージがありますよね。
同じむちゃくちゃでも
好かれるか嫌われるかっていうのがあって、
その好かれる側にうまく着地できると
一番キタンクラブさんらしいなと思ったんです。
(つづきます)
2021-12-23-THU
大嘘博物館

カプセルトイ2億年の歴史
写真
「カプセルトイの歴史」の世界が、
渋谷パルコ8階「ほぼ日曜日」に
やってくることになりました。
「2億年の歴史」などという、
恐竜が生息していた時代にまで遡って
大まじめなウソを絶賛企画中です。

カプセルトイのイベントですから
回して遊べる、体験型の展示になるはず。
カプセルトイの新説や出土品が、今ここに。
2022年2月11日(金・祝)より開催予定です!



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