雨が心地よく感じたら、キャンプが好きになった証拠。ゼインアーツの小杉敬さんと糸井重里が夕暮れのキャンプ場で話す。
ほぼ日刊イトイ新聞

ほぼ日のキャンプブランド「yozora」の
最初のプロダクトとなるテント、
「kohaku」の予約販売がいよいよスタートします。

約1年以上をたっぷりかけたこの企画を、
「おお、いいね!」「いよいよだねぇ」と、
すこし遠巻きに応援していたのが糸井重里でした。
そう、糸井重里とキャンプの関係は微妙です。
バーベキューも釣りもおしゃべりも合宿も大好き、
だけど、テントを張って泊まった経験はない。
そんな糸井を秋のキャンプ場に呼んで、
「kohaku」をプロデュースしてくれた
ゼインアーツの小杉敬さんと話してもらいました。

なにを感じるのかなぁ、と自分で自分の反応を
たのしみにしていた糸井重里、
小杉さんとどんな話をしたのでしょうか?

第3回 機能だけじゃなく美しく
糸井
キャンプのイメージが変わってきたのは
ぼくも同じで、まず、このキャンプ場まで、
ふつうの車で大きな苦労もなく
来られることに驚きました。
小杉
ああ、そうですよね。
糸井
いろんな人がつかってるテントを見ると、
ぼくが思っていたより、
かっこよかったり、かわいかったり。
こういうキャンプ用品なんかは、
小杉さんがかわいくしたわけですか?
小杉
ぼくだけがやったわけじゃないですが(笑)。
でも、それこそインスタ以前までは、
かわいさよりも「機能美」が、
我々のものづくりの世界では
わりと強く意識されていたんです。
「アウトドア用品は、機能してなんぼだ」っていう。
釣りのウェアとかも、そうだったと思いますが。
糸井
ああ、そうでした、そうでした。
小杉
テントも機能美を追求しなさい
って教えられてきたんですよ。
でも自分は何年もテントを開発するなかで、
機能だけを追求した先に「美」というのは
出てこないんじゃないかと思いはじめました。
機能だけを追求して作った形って、
野暮ったくなることが多いんです。
「機能の塊」にしかならないというか。
なので、最終的には、美しくするために
手直しをしなければならないんですよ。
一方で自然界というのは、
「1本の木は、あるがままで美しい」という世界。
そういう「美」と、ぼくらがつくっているような
人工的な「美」は、やっぱり違う。
糸井
なるほど。
小杉
そういうふうに、
「本当に機能を追求するだけでいいのか?」
と考えはじめたのは、やっぱり
インスタが出てきてからですね。
糸井
つまり、「見え方」が大切になったんですね。
小杉
はい。みなさんが求めるものって、
本当に「機能の塊」なのか、
っていうところが気になってきて。
そうじゃなくて、美しさとか、インスタ映えとか、
みなさんが持っている
「かっこいい」「かわいい」という価値観を、
追求した方がいいんじゃないかと思ったんです。
機能と同じレベルで、デザイン、
芸術性も考える必要があるんじゃないかと。
糸井
うん、うん。
小杉
いままでそれができなかったのは、
やっぱり、ビジネスのある程度のスピードの中で
開発していかなきゃいけないという側面もあって。
私もサラリーマン時代は、
「もっとつくりなさい」「売上を上げなさい」
と言われるところで働いていたので、
時間の制約もあるし、手早く、
ぱぱっとつくらなきゃいけなかったんです。
そういう状況だと、どうしても、
「機能美」だけになってしまうというか、
ついその切り口だけに頼ってしまうんですよ。
糸井
「機能美」に沿ってつくると、
「なぜこのデザインにしたのか」が
説明しやすくなるんですよね。
小杉
そうです、そうです。
だけど、やっぱりそれだけで終わらせるんじゃなく、
機能と同じくらいの時間をかけて
芸術性を追求するものづくりをやってみたい。
そう思ってはじめたのが、
「ゼインアーツ」というブランドなんです。
糸井
そうなると、もう、なんというか、
最初の構想のラフスケッチから、
違ってくるんでしょうね。
小杉
違いましたね。
実際には、ぼくはあんまり
スケッチは描かないんですけど。
糸井
へぇぇ、じゃあ、最初のイメージっていうのは、
どうやって出すんですか?
小杉
頭の中でぜんぶ考えています。
スケッチを描くと、自分が描いた
そのスケッチに引っ張られてしまうので。
描くとしたら、頭のなかで完成したときに、
ようやく描くんです。
糸井
なるほど。
小杉
それまではずーっと考えています。
すでにあるもの対しても、
「ほんとうにこれが完成形なのかな?」って、
ずっと考えてしまうんですよね。
テントも、いろんな製品を見て、
「ほんとうにこの形が最適なんだろうか?」
みたいなことを考えて、その形に対して、
自分なりの答えを一回出してみるんです。
そういうことをずっとやっていると、
考えたことがストックされていって、
あるとき、それらがガチャンとくっついて
組み合わされる瞬間があるんですよ。
そのときに、自分の中で、「おっ!」と
ひらめいたような感覚になります。
新しいアイディアやデザインは、
そんなふうにして、ふっと出てきます。
糸井
小杉さんの頭の中には、
「考えかけ」がたくさんあるってことですね。
小杉
あ、そうです、そうです。
糸井
それはぼくも同じかもしれません。
ぼくもスケッチを描かないタイプなんですよ。
だから、最終的な形や答えはわからないんだけど、
わからないのに
「もうわかったよ」っていうときがあるんですよ。
それはなに?って訊かれても、
うまく説明できないけど、
そのときにはもう、わかってるんですよね。
つくるための材料はもう手の上にあるというか。
小杉
はい、わかります。
糸井
今回、いっしょにつくっていただいた
「kohaku」というテントを見ただけでも、
小杉さんが長く考えたんだろうな、
っていう個性が滲み出ていますものね。
さきほどおっしゃった「機能美」じゃない
うつくしさがありますし。
「機能美」だけで人が満足していた時代って
もうとっくに終わってるんですよね。
たとえば車にしても、新幹線にしても、
機能は当たり前というか、前提ですよね。
テントは目的と構造がシンプルですから、
「機能だけじゃだめだ」という
つぎの波が来づらかったのかもしれない。
小杉
そうですね。
そこが、インスタなどの普及で見えてきた。
私自身も
「自分が立てたテントは美しくあってほしいな」
って、もともと思っていたんです。
ですから、インスタにテントの写真を
上げる人たちと気持ちがリンクして。
糸井
インスタにそういう写真を上げるのは、
どちらかというと女性が多いんですか?
小杉
女性がそうとう増えていますね。
ぼくのブランドも女性のお客さまが多いです。
糸井
それで道具が変わって、
道具の進化がまたユーザを変えて。
小杉
そうですね。
そういう感じでキャンプは
すごく間口が広がったなと感じます。
女性だけじゃなく、年配の方とか、
いろんな方を受け入れる土壌ができてきた。
ぼくだけじゃなく業界全体が、
より多くの人たちに自然をたのしんでもらうために
いま、努力していると思います。

(つづきます)

2024-01-19-FRI

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