雨が心地よく感じたら、キャンプが好きになった証拠。ゼインアーツの小杉敬さんと糸井重里が夕暮れのキャンプ場で話す。
ほぼ日刊イトイ新聞

ほぼ日のキャンプブランド「yozora」の
最初のプロダクトとなるテント、
「kohaku」の予約販売がいよいよスタートします。

約1年以上をたっぷりかけたこの企画を、
「おお、いいね!」「いよいよだねぇ」と、
すこし遠巻きに応援していたのが糸井重里でした。
そう、糸井重里とキャンプの関係は微妙です。
バーベキューも釣りもおしゃべりも合宿も大好き、
だけど、テントを張って泊まった経験はない。
そんな糸井を秋のキャンプ場に呼んで、
「kohaku」をプロデュースしてくれた
ゼインアーツの小杉敬さんと話してもらいました。

なにを感じるのかなぁ、と自分で自分の反応を
たのしみにしていた糸井重里、
小杉さんとどんな話をしたのでしょうか?

第6回 新しいファミリーみたいなもの
糸井
ぼくは、テントのことはなにも知らなくて、
この対談でも「わからない人」として、
自由に振る舞えばいいやと思ってたんですけど、
このテントを見て「あ、いいな」と思ったんです。
小杉
ああ、よかったです。
糸井
なんだろう、
風景に溶け込みすぎているわけでもなく、
主張しすぎているわけでもなく、
見事ですね。
小杉
ありがとうございます(笑)。
糸井
なんというか、
「小杉さんはこういうことがしたかったんだろうな」
というのが伝わってきました。
小杉
そのとおりなんです。
たしかに、「自然と調和する」みたいなことは、
自分でもことばとしては使うんですが、
実際は、人工的なものと自然って
やっぱりぜんぜん違うものなので、
なかなか簡単なことではない。
だから、テントをつくるときはいつも、
「自然に溶け込む」ことを
過度に意識しないようにしているんですね。
ただ、人が「美しい」と感じるものって、
人工物にも、自然にも、共通する部分が
なんとなくあると思うんです。
糸井
うん、うん。
小杉
ですから、今回のテントのデザインを
まとめていくにあたって、人の目の中で、
自然とテントの美しさがうまく重なって、
一枚の絵のように完成されていく、
ということはイメージしました。
自然のなかに完全に溶け込むというと、
もっと有機的な形になったりするでしょうけど、
両者がうつくしく重なればいいな、と。
糸井
はい、それは伝わってきます。
ぼくはこのテントを見て、
クリスト&ジャンヌ=クロードの
梱包芸術を思い出したんです。
現代芸術として、布で建造物を包むというのは、
激しく人工的なことなんだけど、
そのアプローチも含めて
ひとつの風景としてとても魅力的で、
みんなが「見に行きたい」って思う。
小杉
ああ、たしかに、近いかもしれないですね。
糸井
クリストが、作品を実現するための手続きや
申請の書類とかもぜんぶ「作品」として
アートの一部にしているのになぞらえると、
小杉さんの場合は、建ててもらったり、
使ってもらったりすることも作品ですよね。
このテントを誰がどこにどう建てて
なかでどんなふうに過ごすかということも
テントづくりに含まれているというか。
小杉
はい、そうですね。
ぼくは、すこしでも多くの人たちに
自分の製品を届けるということを
すごく意識しているんです。
届けて、つかってもらって、
いろんな人たちに「いい」と
言ってもらえるものをつくりたい。
もう、100人いたら、100人の人に
「いい」って言ってもらえるものを
つくりたいんですよね。
糸井
いいですね(笑)。
小杉
わりと、ものづくりの世界って、
だいたい30パーセントくらいの人が
「いい」って言うのであれば、
もうOKみたいな風潮もあるじゃないですか。
売上も出るし、ということで。
でもぼくは、それだと満足ができなくて。
やっぱり100人いたら100人が、
みんな「いいね」って言ってくれる。
もちろんそれは現実的には難しいんですけど、
そこは、とにかく追求したい。
糸井
うん、うん。
小杉
なので、とにかく、いろいろ、ずーっと考える。
ほんとにこれは多くの人たちが
「いい」って言ってくれるのかどうかを
くり返し、くり返し、考えます。
それはリリースしたあとも、ずーっと考えます。
ほんとに、これでよかったのかとか。
糸井
それは、いってみれば、
ディズニー作品を目指したいんですね。
もう、ミッキーマウスになっちゃいたい。
小杉
はっはっはっはっ。
糸井
でも、そういうことだと思うんですよね。
きっと、100人中100人が「いい」と言うことって、
なかなかないことだと思うんですけど、
ミッキーマウスは、少なくとも、
嫌いな人がいないとはいわないけど、
「ミッキーが好きだ」っていう人のそばにいる人は、
ミッキーを嫌いにはならないですよね。
ある人の友だちがミッキーが大好きだとして、
その人は友だちに「なんでミッキーを?」
とは言わないですよね。
小杉
そうですね。
糸井
ぼくも、100人が「いい」と言うことについては、
いつも考えているんですが、
いまの時代のすてきなもののヒントって、
「そんなのを選ぶなよ」って言う人がいない、
というあたりにあるものなんじゃないかな。
小杉
なるほど。
糸井
そういうものって、いわば、
「新しいファミリー」みたいなものだと
思っているんですよ。
家族の形態は時代によってさまざまですが、
いまの「ファミリー」て、
同じ家に住んでいる人だけじゃなく、
離れて暮らしているおじいちゃんとおばあちゃん、
すごく親しい友だち、その家族とかも含めて、
「ファミリー」を形成していると思うんですね。
で、その人たちに見せたり、あげたりして、
よろこばれるものも、
そのあたらしいファミリーの
一員になっているんじゃないかと。
小杉
あー、おもしろいですね。
糸井
最近思ったんですが、うちの会社は、
ずっとそれをやってきたような気がするんですよ。
ほぼ日の商品をよく買ってくださっているのは、
たぶん40代とか50代の方だと思うんですけど、
じゃあ10代とか20代の人は
つかっていないのかというとそんなことはなくて、
もとからいるお客さんの、娘さんや息子さんが
買ってくださってるんですよね。
小杉
ああー。
糸井
またさらに、そのお子さんにも子どもがいたり、
親しい友だちに贈ったり、
娘に買ってあげようかしらと考えたり、
お母さんはあれ好きだから
また買おうかなとか考えてくれたりしている。
実際、いま、ぼくが
おもしろいと感じているものとか、
いいなあと思っているものの多くは、
そういう新しい関係のなかで
いつの間にか伝わってきたものなんですよ。
小杉
なるほど。
糸井
それって、ターゲット層を絞るとか、
マーケティングの考え方からでは、
まったく浮かんでこない着地点で。
だから、もしかしたらこのキャンプの話も、
小学生が読んで、「うちもテントがほしい」
って言ってくれるかもしれない。
78歳の人が、お孫さんに
「テントほしいんじゃないか」
って言うかもしれないし。
小杉
それはいいですね(笑)。
糸井
キャンプの様子を見ていると、
誰かが始めて、ほかの誰かの知識や体力も頼って、
そこに子どもたちも混じったりして、
「私もなにかできるんじゃないか」って
思う人が広がっていったりしてますよね。
そういうところに、
いま、キャンプをみんなが
おもしろがってる理由があると思うんです。

(つづきます)

2024-01-22-MON

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