雨が心地よく感じたら、キャンプが好きになった証拠。ゼインアーツの小杉敬さんと糸井重里が夕暮れのキャンプ場で話す。
ほぼ日刊イトイ新聞

ほぼ日のキャンプブランド「yozora」の
最初のプロダクトとなるテント、
「kohaku」の予約販売がいよいよスタートします。

約1年以上をたっぷりかけたこの企画を、
「おお、いいね!」「いよいよだねぇ」と、
すこし遠巻きに応援していたのが糸井重里でした。
そう、糸井重里とキャンプの関係は微妙です。
バーベキューも釣りもおしゃべりも合宿も大好き、
だけど、テントを張って泊まった経験はない。
そんな糸井を秋のキャンプ場に呼んで、
「kohaku」をプロデュースしてくれた
ゼインアーツの小杉敬さんと話してもらいました。

なにを感じるのかなぁ、と自分で自分の反応を
たのしみにしていた糸井重里、
小杉さんとどんな話をしたのでしょうか?

第7回 Only is not Lonely
糸井
小杉さんは、テント以外の製品についても、
「ずーっと考えちゃう」んですか。
小杉
考えちゃいますね。
発売直前なんですけど、
このイスについてもずーっと考えていて。
糸井
この絶妙な低さも、考えたんですよね、きっと。
小杉
この低さは、
キャンプ用品のトレンドでもあるんですよ。
糸井
へぇぇ。
小杉
キャンプ用品って、
どうしても使うときの空間が限られるので、
サイジングのとっかかりは
キャンプ場の区画サイトの広さになるんですよ。
その限られたスペースの中で動線を確保しながら、
空間を上手に使おうとすると、
「頭の位置は低いほうがいい」
ということになるんです。
そこからつかうものの大きさを考えていくと
キャンプで使うイスは低めになってきています。
糸井
はーー。そういう進化は、これからも
まだまだたくさんあるんでしょうね。
小杉
はい、いろいろ起こると思います。
最近だと、Wi-Fiのあるキャンプ場も多いので、
キャンプ場で仕事する人も増えてきてますし。
糸井
ああ、喫茶店とかで籠って仕事するよりは、
いっそキャンプ場でやっちゃおう、みたいな。
小杉
そうです。
糸井
そういえば、昔、ぼくのアシスタントを
してくれていた10歳年下の子が、
キャンプに目覚めた時期があったんですよ。
彼が、雪中キャンプをしたって
うれしそうに語っていたんですけど、
聞いている方からしたら、
「語ってるきみがおもしろいよ」って思ったなぁ。
小杉
雪中キャンプも、おもしろいですよね。
なんでそんな、マイナス10度とかの環境で
キャンプするんだよみたいな(笑)。
糸井
やった人は、うれしそうに話しますよね。
小杉さんも経験ありますか。
小杉
もちろんです。
糸井
失礼ですけど‥‥
いったいなにが楽しいんですか(笑)。
小杉
なんですかねぇ(笑)。
やっぱり、雪景色ですかね。
真っ白で、音が吸収されてシーンと静かな、
あの空間にいること自体が心地いいですし、
テントの中から外を見ながら
コーヒーを飲んだりとかもいいんですよ。
糸井
ああ、10歳下の彼も、
ふだんはふざけたことばっかり言ってるのに、
雪中キャンプのことを語るときは
「心が洗われるんです」って言ってました(笑)。
雪中じゃなくて、今回みたいなキャンプでも
そういう感動はありますか。
小杉
あります、あります。
いま、だんだん日が沈んできて、
夕日がバァーッとさす瞬間がありましたけど、
ああいう瞬間をぼーっと見てると、
きれいだなぁって感動しますね。
糸井
いいですよねぇ。
じつはぼく、昔は田舎が
あまり好きじゃなかったんです。
というか、東京が大好きだったんですよ。
いまでも好きなんですけど、ここ数年、
あまりにも「狭いな」と思うようになってきて。
小杉
狭い。
糸井
もちろん、狭さは便利でもあります。
すぐ行ける距離になんでもある。
でも、その便利さとかよさは、
もう「だいたいわかった」という感じで。
小杉
たしかに。
糸井
この狭さの中で、
「みんなが欲しがっていることってなんなのか」
とか考えていると、
どうしても発想が窮屈になってしまって。
今日のこの対談も、キャンプ場じゃなくて
どこかの会議室でやったら、
内容はまったく違ったでしょうねぇ。
小杉
本当にそうですね。
糸井
そういえば、
いま、会社がある神田の街のなかで、
テントをたてて一泊できないかって
計画しているんですよ。
小杉
おお(笑)。
糸井
ぼくはずっと、小学校の校庭とか、
外で寝るっていうことに興味があって。
日常的な場所で日常と違うことをやることで、
ふだんの日常の大切さと、
試しにやってみたことの意外な良さとの、
両方が浮かび上がってくると思ってるんです。
外で寝るっていうことと、
地方に住むってことはもちろんまったく違うけど、
「意外といいんだよ」という感じは
なんとなく伝わるんじゃないかな。
性質の違うふたつの場所をつなげるというか。
小杉
ああ、なんとなくわかります。
ぼくの住んでいる松本市でも
Iターンのかたが増えてきて、
新しい風が入ってきているところなんですよ。
「地方都市としてこうあるべきなんじゃないか」
という意見を出す人が増えてきているので、
街が少しずつ変わりつつあるのを感じています。
糸井
極端に言うと、たとえば、
1年のうち1週間だけでも、
東京の人が松本に住んだら、
いろんなことが変わりますよね。
小杉
たしかに。
いろんな土地どうしでそういうことをしたら、
ずいぶん変わってくると思います。
糸井
はい。
今回のテントのプロジェクトで、
小杉さんには、いろんなことを教えてもらったり
相談にのっていただいたりしてきましたが、
ほぼ日との仕事にどんな感想をお持ちですか?
小杉
もともと私はほぼ日さんのお仕事に
すごく興味があったので、お話をいただいたときに、
すぐ「やりましょう!」とお返事したんです。
糸井
ありがとうございます(笑)。
小杉
なので、私自身がやりたくて、
いっしょにやらせてもらったというのが
今回のコラボレーションなんですよ。
というのも、私は、キャンプって、
自然をもっと深くたのしむことが
できるはずだと考えているんですね。
でも、いまのキャンプの方向性は、
ちょっとズレてきているというか、
みんなでわっと騒いで終わり、
みたいな傾向もあって。
それも決して悪いことではないのですが、
本来、キャンプって、自然のなかで、
心の底から「いいな」と感じるような瞬間を
ひとりひとりがあじわうものだと思うんです。
「今日の朝の風景はすごくきれいだな」とか、
そういう、なんでもないけど大切な気持ちを
しっかり感じるものなんじゃないかと。
でも、我々だけだと、やっぱりまだ力不足で、
なかなか表現しきれないんです。
ほぼ日さんだったら、
そういったことをきちんと表現をして、
多くの人に伝えてくださるんじゃないかと。
糸井
それは、ほぼ日が初期のころから掲げている
「Only is not Lonely」というコンセプトと
つながっているかもしれないですね。
たとえばキャンプに行って、
みんなで「乾杯!」ってしている写真が
インスタにはあがるけど、
その人がその日ほんとうに感じたことは、
乾杯の写真には写ってなくて、
もっともっと個人の部分にあったり。
キャンプで感じる「ひとり」のよさは、
たしかにほぼ日と相性がいいと思います。
もしかしたら、さっき話した
「新しいファミリー」ということが
鍵になってくるのかもしれない。
小杉
ああ、なるほど。
糸井
ぼくらがやりたいことって、
そういう「新しいつながり」のなかに
あるのかもしれませんね。
そのあたりを、どう実現していけるか、
これからもいろいろと試してみたいです。
小杉
ああ、それはおもしろそうです。
糸井
また続きをやりましょう。
小杉
はい、ぜひ!

(最後までお読みいただきありがとうございました!)

2024-01-23-TUE

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