
- 糸井
-
2つめの場所ですね。これはどこですか?
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- 小鳥
- 尾山神社っていう不思議な神社がありまして、
そこに、アクビちゃんっていう犬と、
飼い主の津吉さんご夫婦が来てくれました。
- 糸井
- 撮られている人たちは、
撮られるとわかっていて撮られているはずなのに、
そういう感じには写りませんよね。
小鳥さんご自身の中に、やり方があるんですか?
- 小鳥
- 威圧感がない‥‥。
っていうか、存在感がないのかな。
- 糸井
- 存在感のある人だったら、
こうは自然に撮れませんね。
犬でも平気ですよね。
- 小鳥
- 犬は、全然カメラを見てくれなくて、
途中で諦めて僕が散歩してました。
そしたら、最後にカメラを見てくれたんです。
- 糸井
- 犬の写真は、僕もたくさん撮っているんですけど、
自分が飼っている犬以外は、
どの犬を撮っても、他人の目をしているんですよ。
- 小鳥
- へぇー。
- 糸井
- 犬は、自分の家族はもちろん仲間なんだけど、
家族以外は仲間じゃないから、写真を撮ろうとしても、
「あぁ、どこかの人ね」っていう目で見るんです。
- 小鳥
- この写真もそうですね。
- 糸井
- これも、家族が撮る時とは違うんじゃないかな。
犬って、不思議ですよね。
群れで生きているから、はじめに会った人に対しては
異物感みたいなものを感じているみたい。
- 小鳥
- そうなんですか。
- 糸井
- 猫は写真を撮る人間に対しても、
猫どうしっていう目線をするんです。
- 小鳥
- へぇ!
- 糸井
- カメラマンの岩合光昭さんの、
『世界ネコ歩き』を見るとわかるんですけど、
猫たちは、岩合さんを「大きい猫」だと思ってるんです。
まあ、岩合さんも這っていたりするんですけど。
あっ。僕はいま、プロのカメラマンに
動物写真の撮り方を教えてしまっている。
- 小鳥
- ありがとうございます。
- 観客
- (笑)
- 糸井
- 僕は岩合さんに頼まれて、
犬の写真集の解説を考えたことがあるんですが、
「猫を撮っている時とは違った、
犬の他人行儀な視線はなんだろう?」と思いました。
みんな後ろを向いていたり、横を向いていたり。
この写真の中で、犬はこっちを向いていますけど、
「俺はいま、お母さんがいるからね」みたいな顔してる。
- 小鳥
- あぁ、本当だ。
糸井さんは、やっぱり犬派ですか?
- 糸井
- いまじゃもう、どっちも好きになったけど、
自分ちにいるのが犬ですから。
あ、この写真はなんですか。


- 小鳥
- 尾山神社の隣に、蒸しパン屋さんがあって、
それを食べたらすごくおいしかったので。
- 糸井
- 金沢の人は、「あ、あそこのだ」ってわかるんですか?
- 小鳥
- 「WATANABEYA!」というお店なんですが、
あっ。お客さんも、うなずいてくれてます。
もともと撮影する予定じゃなかったんですけど。
- 糸井
- こういう写真って意味がないようにも見えるけど、
撮っておくと、後で見た時にすごく楽しいですね。
- 小鳥
- そうですね。
今回はメジャーな観光地ではなくて、
「金沢の『裏の』おすすめの場所を教えてください」
とお願いしていたんです。
地元の人がすすめる場所で撮りたいと思って。
- 糸井
- 「撮られたい」と言ってくださった皆さんが、
教えてくれた場所も入ってるんですか。
- 小鳥
- はい! 入ってます。
次の写真は、東京からやってきたご家族が行きたいと
おっしゃった「グリルオーツカ」さんっていうお店です。
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- 小鳥
- 糸井さん、「ハントンライス」って食べたことありますか?
- 糸井
- ひょっとして、卵に海老をのせたものでしょうか?
- 小鳥
- はい。それです。
- 糸井
- さっき、お蕎麦屋さんで「ハントン蕎麦」というのを、
僕の目の前にいた人が食べていました。
オムレツみたいな卵に、海老フライを乗せた蕎麦です。
僕は食べませんでしたけど、
うーん。正直、あまりうらやましくなかった‥‥。
- 観客
- (笑)
- 小鳥
- ハントンライスは金沢の名物ですが、
「ハン」がハンガリー、「トン」がマグロらしいです。
- 糸井
- えっ、「トン」は豚じゃなくて?
マグロも「トン」っていうんですか?
- 観客
- 白身魚のフライです。
- 糸井
- 「トン」っていったら、ふつうは豚ですよね。
そしたら、白身魚のフライはトンカツになっちゃうよ。
- 観客
- (笑)
- 糸井
- みなさん、これを当たり前に食べているわけですね。
いやあ、僕はハントン蕎麦より
ハントンライスのほうが食べたいな。
- 小鳥
- この3兄弟は、東京からご家族で来られたんです。
2時半に待ち合わせたんですけど、
ハントンライスを食べたいということで、
すごくおなかを空かせて待っていてくれました。
おなか空いているから、ちょっと不機嫌なんです(笑)。
- 糸井
- 金沢で撮影するっていうのに、
東京から応募しちゃったんですね。
- 小鳥
- 車で6時間だそうです。
- 糸井
- ああ、なかなかの距離ですね。
- 小鳥
- そして、お昼を食べたあとに近江町市場へ行きました。
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- 糸井
- 市場での、なんでもない写真。
本当に、いい感じで撮れてますね。
「プロだからね」と言ったらそれまでだけど、
存在感を消す以外に、考えていることありますか。
どういう時に「いいな」と思って撮っているんですか?
正解を求めている感じがしないんですけど。
- 小鳥
- そうですね‥‥。なんにも考えてないですね。
- 糸井
- なにも考えてない?
- 小鳥
- はい。考えると、ダメじゃないですか。
- 糸井
- でも、「いいな」とは感じているわけですね。
- 小鳥
- そうです。「いいなぁ」って。
- 糸井
- じゃあ、「いいなぁ」ごとに、
シャッターを押しているということですか?
- 小鳥
- はい。そうですね。
- 糸井
- はぁ、いいなぁ、いいなぁ。本当にいいなぁ。
それもいいなぁ。マツタケいいなぁ。
あれもいいなぁ。食べてる人、いいなぁ。
- 小鳥
- はい。
- 糸井
- あぁ、そうか!
みんながカッコつけて決めにいってしまうのを、
小鳥さんはしていないということか。
ほほえむ代わりにシャッターを押していると。
- 小鳥
- あっ! それ、いただきます。
- 観客
- (笑)
- 糸井
- でも、本当にそうですよね。わかった気がします。
たとえば空を見ても、ほほえむ代わりに
シャッターを押しているっていうのは。
- 小鳥
- あぁ、「ほほえむ代わりにシャッターを押す」。
- 糸井
- そういうサブタイトルの写真集がつくれそうだね。