不安を受け入れて生きる。
- 園田
- 金沢さんは、パニック障害のことを
人に話すことに抵抗はありますか?
- 金沢
- うーん、そうですね‥‥。
僕は、会社に言うのが、ちょっとイヤでした。
- 園田
- 今、働いている会社に?
- 金沢
- そうそう。
なんというか、「弱い奴」っていう
レッテルを貼られるんじゃないかって。
- 園田
- あぁ、なるほど。
- 金沢
- だから、健康に見えるようになるべく隠して。
しばらくオープンにはしてこなかったですね。
- 園田
- 私、人にカミングアウトしたのは、
ここ1年ぐらいのことで。
- 金沢
- それまでは、
言ったら嫌われちゃうんじゃないか、
って、思ってたとか?
- 園田
- 私、みんなといる時は、頼りにされることとか、
相談されることが多くて。
だから、頼られている自分が、ボロを出した時に、
みんなが去って行っちゃうんじゃないかなっていう。
- 金沢
- ああ、わかる‥‥。
- 園田
- 強い自分が好かれているのに、弱くなったら、
今の関係性が崩れちゃうんじゃないかって、
学生時代はすごく怖かったですね。
- 金沢
- すごくわかります。
僕もつよがりたかった。
- 園田
- でも、ある時、症状が24時間続いてる、
みたいな状態になっちゃって。
「もうこれは無理、耐えられない」ってなって、
本当に、水が漏れる感じで、
「死にそう」って友達にLINEして。
そうしたら、
「気が落ち着くまで、ずっとLINEをしててあげるよ」
って、朝までLINEで話してくれて。
あの朝のことは、今も覚えていますね。
- 金沢
- その友達に救われた、みたいな感じで。
- 園田
- はい。でも、そこまでがつらかったです。
ひとりで戦ってる感、すごくて。
- 金沢
- うんうんうん、わかります。
でも、24時間続くっていうつらさは
想像を絶するなぁ‥‥。
- 園田
- 金沢さんは、局面局面で来る?
ずっと続く、っていう感じではないんですか?
- 金沢
- そうですね。
その局面が過ぎれば治るし、
いずれ収まることがわかっている、
という苦しさです。
- 園田
- やっぱり、ずいぶん違いますね。
- 金沢
- 全然違いますね。
- 園田
- じゃあ、本当に、症状が出てない時は普通なんですか?
- 金沢
- あ、もう全然普通ですね。
去年の秋にいちど悪化して。
そこから薬を飲み始めて半年くらい経ちましたけど、
最近はすごく落ち着いてます。
- 園田
- そうなんだ。
- 金沢
- 去年、症状が悪化したとき、
会社の会議室で発作がでたんですよ。
それから会議室、しばらくダメになっちゃって。
- 園田
- 会議室がダメだと、かなりしんどいですね‥‥。
- 金沢
- しんどいし、まず仕事にならないので。
園田さんがさっき話していた、
弱い自分から人が去ってしまう、
っていう感覚と一緒で、
同僚やお客さんにガッカリされるのが怖かった。
でも、会議室にいる時は苦しいけど、
そこから出て解放されると、
もうケロッと治るんですよ。
- 園田
- へぇ。落ち着く?
- 金沢
- うん、何事もなかったかのようになる。
ただ、やっぱり苦しいのは怖いので、
「明日は会議室で打ち合わせだ」って思うと、
不安で眠れなくなったりしました。
- 園田
- ああー。
- 金沢
- そういう不安のせいで
出来ることが本当に減ってしまったので、
少しずつできることを増やしていかなきゃ、
と思いながら、今は治療していますね。
- 園田
- 「あると不便だから、治しましょう」
っていう感じなのかな。
- 金沢
- そうですね。焦らずやろうかなと思ってます。
園田さんは、最近の調子は?
- 園田
- 私は不安やパニックだけではなくて、
途中から「生きているのがつらいな」と
感じるようになって、
さすがにまずいと思って友達や母親に、
そのつらい状況をカミングアウトしました。
それで、なんだかすごく気持ちが楽になったんですね。
去年の夏かな。
カミングアウトした1、2ヶ月後くらいに、
ブログでも、症状のことを書いたんですよ。
それでもう、今は開き直っちゃったみたいな感じです。
- 金沢
- じゃあ、園田さんは、1人で抱えている時はつらくて、
あふれ出るように、誰かに伝えると、楽になって
っていう感じで、階段をのぼって。
- 園田
- そうですね。
だから、もう今までの24、5年間の
孤軍奮闘の苦しみが、
こんなに簡単に治るんだって思っちゃって(笑)。
すごい、びっくりしてます。
- 金沢
- (笑)
- 園田
- でも、完治したとは思ってなくて、
今後、きっと同じような症状が
出る可能性は全然あるなぁ、
とは思っているんですけど、でも、
「出ても、死なないから、大丈夫かな」
みたいな(笑)。
- 金沢
- 何をもって「治った」なのかよくわからないしね。
- 園田
- そうなんですよね。
私は、治すも治さないもその人の自由かなと思ってて。
たとえば、いま苦しんでいる人に、
「がんばって治しなよ」って
絶対に言いたくない。
- 金沢
- がんばってるし、すでに。
- 園田
- そう。がんばっているし。
治さないって選択をした人を、
「甘えてる」とは言いたくない。
なんですかね、
「完治」って感覚がまったくないんですよね。
- 金沢
- 不安とか苦しさを記憶から消すことはできないから、
本当の完治は、もしかしたらできないのかなって。
僕も、一生、パニック障害と付き合いながら
生きていくのかな、と思ってて。
- 園田
- わかります。
- 金沢
- あの、たぶん、僕は、東京じゃないところ、
たとえば長野とか岐阜とか三重とか‥‥
東京じゃないところに行けば、
もうぜったい大丈夫だと思うんですよ(笑)。
満員電車もないし。たぶん人も東京より穏やかだし。
勝手なイメージだけど(笑)。
- 園田
- (笑)
- 金沢
- でもまあ、東京が居場所だと思って生きてるし、
そこはもう受け入れて、
しんどいなりにやるしかないな、と思ってます。
(つづきます)
2018年7月10日(火)