6そうだよ『LIFE』なんだよ。
- 斉藤
- 『LIFE』のハードカバーって、
4巻は出ないんでしょうか。
- 武井
- これは一応3巻でやめようって
話になっているんです。
- ばなな
- なんか、潔くて感動しちゃう。
- 斉藤
- うん、素晴らしいです。
- 武井
- こういう判断も糸井です。
「ここで1回やめようか」って。
- 飯島
- シリーズが続いていくと、
餃子とか生姜焼きとかから揚げとか、
目玉になる料理がなくなってきますよね。
3巻もけっこう苦しかったですよ。
- ばなな
- そうなんですね。
やっぱり、よく食べるものって‥‥
- 飯島
- 決まってますよね、ある程度。
- 武井
- で、この別冊バージョンの
『LIFE あつまる。』をつくったんです。
これは物語が強くは入ってないんですけどね。
- ばなな
- 「あつまる」ってことが物語ですよね。
簡単につくれるってあったから、
「簡単じゃないよ~」と思って読んでたけど(笑)。
- 武井
- これは「料理人が孤独にならないように」
というのがコンセプトです。
- 斉藤
- 「料理人が孤独にならないように」?
- 武井
- 料理をつくる人って、
キッチンに引きこもっちゃうじゃない。
- ばなな
- うん、汗をかきながら出てくる感じ。
- 武井
- そう、だから、つくりながら、
会話に参加できて、
しかも一緒に食べられるようなレシピがいいなと。
- 斉藤
- ぼく、これだけ全部バーっとつくってきたけど、
この『LIFE あつまる。』のなかの
シュウマイの最高峰感といったら、なかった。
- ばなな
- 斉藤さんが実際「つくってる」ということがすごい。
本当に素晴らしい。見習いたい。
- 武井
- シュウマイって、塩麹を使うあれ?
- 斉藤
- そうです。
このレシピのおもしろいところは、
大きい肩ロース肉とひき肉を
切って混ぜるところなんです。
- 飯島
- あ、そうです。
食感を出したくて。
ちなみにとんかつ用の肩ロース肉でも、
ちょっと小さく切ると、
ひき肉とほとんど変わらなかったんですよ。
だから、最終的にはけっこう大きく切って入れました。
- 斉藤
- なんて粋なことを‥‥。
飯島さんのレシピは、つくるたびに、
なにか1つ感動するところがあるんです。
- 飯島
- 「湯豆腐」は
つくってくださったことありますか?
- 斉藤
- 3巻のですね。
つくりました。
- 飯島
- 湯豆腐って、ポン酢をかけて食べることが
多いじゃないですか。
あれ、サッパリしすぎません?
- 武井
- 味があんまりつかないですよね。
- ばなな
- 私はむしろポン酢を
食べる料理だと思ってます。
- 飯島
- そうなんですよ!
それで考えたのが、
ネギに熱い油をちょっとだけ入れて、
そこにおかかと醤油を足すというのが
3巻のレシピなんですけど、
これ、すごくコクが出るんですよ。
- ばなな
- ああ、なんか、
「あの味がほしい」
っていう味になりますね。
- 飯島
- これを思いついたのも、
私が子どものころ、
湯豆腐が大嫌いだったからなんです。
サッパリしすぎてて。
- ばなな
- でも、私の父の湯豆腐に比べたら、
絶対おいしい。
- 一同
- (笑)
- ばなな
- まだ湯になってないみたいなやつに入っている
冷たい豆腐か、
グラグラ煮過ぎてスが立ったり
めっちゃグチャグチャで壊れているか‥‥。
- 武井
- (笑)花みたいになって。
- ばなな
- そうそう。
飯島さんの湯豆腐、ちょっとやってみよう。
- 飯島
- ぜひ、やってください。
ネギの香りもよくてオススメです。
- 斉藤
- 今日の座談会前に『LIFE』を読み返していたら、
発売当時、ものすごくよくつくっていた料理が
いっぱい出てきたんです。
「あ、ミートソース!
そうそう、さば味噌もつくったつくった!」みたいな。
1人で昔のアルバムを見てるみたいな感じで、
とてもうれしくなっちゃったんですけど、
会社だったし、誰にも言えないわけです。
そうだよな、あの頃の自分は‥‥なんて思い出しながら、
そっと閉じたら、表紙に
『LIFE』って書いてあって、
ゾクッとしました(笑)。
そうだよな、『LIFE』っていうタイトルなんだ、
あらためてすさまじいと思いました。
- 武井
- そういわれると、たしかに。
食べることは『LIFE』そのものですもんね。
- 斉藤
- ばななさんが、『LIFE』のなかで
よくつくられたものってあります?
- ばなな
- 私はほとんど眺めていただけですが、
ナポリタン、ハンバーグ、ミートソースと
肉じゃがはよくつくりましたね。
おいしかったです。
あとは、たしかイカのなめろうも
つくったような。
それから夫が羊好きで、
「LIFE あつまる。」の羊はみんなつくりました。
- 斉藤
- いいですねぇ!
- 武井
- ぼくが一番つくったのは、『LIFE』2巻の
「給料日前の肉野菜炒め」。
肉を加熱したら、1回取り出して、
味を付けてから、野菜を炒めたところに戻すんです。
- ばなな
- あ、覚えてます。
- 武井
- 肉の味だけを強くするんですよ。
ゴハンをもりもり食べるときの
おかずになります。
- 飯島
- そうそうそう。
ただ全体を炒めたところに塩をふっても、
肉にピンポイントにかからなかったら、
味が薄いと感じるんですよ。
何が嫌かって、
野菜の間の楽しみの肉なのに、
そのお肉に味がないって嫌じゃないですか。
- ばなな
- うん!
- 飯島
- だから、肉には下味をつける。
サッサッと肉を油で焼いて、取り出して、
そこでちょっと醤油と味醂をかけといて、
その肉を焼いたフライパンに油を足して、
野菜を炒めて、ちょっと塩して、
肉と、タレを戻す。
そうすると、肉もしっかり味があって、
肉から滲み出た脂が全体にいくんです。
- 斉藤
- あのレシピの偉大なところは、
肉を倍量にしても、
味がへたらないところです。
タレが別だから。
- 武井
- 肉・倍? すごい。
- ばなな
-
私、そんな違うことなんかしたことないよ。
この本に忠実に生きてきたよ。
そんな思い切ったことできない、私には(笑)。
(つづきます)
2017-12-19-TUE