その1 飯島さん=『ごちそうさん』?
- ──
- 飯島さんといえばNHKの『ごちそうさん』、
いま、そういうイメージになっていますね。
「この人が料理を担当しているんだよ」って、
飯島さんの名前がのぼるようになって。
そういう人、ほかにあまりいないように思います。
- 飯島
- ありがとうございます。
- ──
- 『かもめ食堂』のあとに『めがね』が公開され、
「ほぼ日」に登場していただいたとき、
反響のおおきさにおどろきながら、
糸井重里が言ったことばを思い出します。
「飯島さんの料理っていうのは、
映画の登場人物のひとりなんだね」と。
- 飯島
- おっしゃっていましたね。
- ──
- はい、ぼくもそれがすごく腑に落ちたんです。
存在感っていう意味でもそうだし、
役割として、役者のひとりくらいの分量の活躍を
作品の中でしていると思います。
- 飯島
- そんな、とんでもないです。
出てくる料理をつくっている、
ただそれだけなんですよ。
- ──
- 糸井が『LIFE』の1巻を
刊行する際に寄せた言葉のなかに、
こんなものがありました。
本当にたくさん話し合って考えて、
生活の中の大事なものとして料理を捕らえようという
コンセプトをそのまま題名にしました。
『LIFE』って、生活、暮らしでもありますが、
もっと大きく、人生だとか、生命でもあります。
生きていることそのものを言う言葉ですよね。
飯島さんの作る料理は、そのまま、
生きていることを表しているような気がします。
- 飯島
- はい。うれしい言葉をいただきました。
- ──
- そしてこのたび、じっくり時間をかけて、
『LIFE』シリーズとしては
5冊目になる本ができました。
そこで久しぶりに、飯島さんに
いまのお仕事の話をお聞きしたいなって思ったんです。
こうして、今日は、東京でお目にかかれてますけど、
『ごちそうさん』の収録は大阪ですよね。
- 飯島
- はい。大阪での仕事でした。
じつは最初は、
主人公がまだ東京にいる設定の「東京編」を
わたしが担当して、
そのあとの「大阪編」については未定だったんです。
それを、引き続き担当させていただくことになって、
いっぽうで東京でのふだんの仕事もあるので、
いまも東京と大阪を往復する日々です。
両方をきちんと続けるために、
チームで参加しています。
『ごちそうさん』は飯島奈美の仕事でもありますが、
立ち上げたばかりの
セブンデイズキッチン(7days kitchen)の
全員の仕事でもあるんです。
- ──
- 撮影の現場って、
厳しいですよね、いろいろなことが。
- 飯島
- はい、厳しいです。
- ──
- ぼくは以前見学させていただいた
『深夜食堂』しか知らないんです。
あそこはそれでもフレンドリーな空気でしたけれど、
それでも、つねに時間との戦いだし、
待たせてはいけない人がいたり、
役者さんによっても雰囲気が変わったりで、
その日の現場の空気って全然違うのだろうなと。
- 飯島
- たしかにそうですね。
- ──
- 撮影現場ってすごいんだって、あの時、思ったんですよ。
ですから、飯島さんといっしょに
あの厳しい現場を体験できるっていうのは
チームにとってもきっといいことですよね。
なんだか生意気な言い方ですけれど、
きっと、みんなの力がつく仕事だと思います。
- 飯島
- そうなんですよ。
- ──
- いま飯島さんと一緒に仕事をしているチームには、
女性がふたりいらっしゃいますね。
板井うみさんと、岡本柚紀さん。
板井さんは、もともと、病院のご飯を作ってた方。
- 飯島
- 病院では、流動食を作る時にも、
たとえば、ロールキャベツなら、
最初から材料を同じように煮込んでもいいのに、
ちゃんとロールキャベツを作って、
それを患者さんやご家族の前に見せ、
「これを、今から召し上がっていただきます」
と説明してから流動食にしていたんだそうです。
- ──
- そういうのっていいですね。
自分だったら、そうしてほしい。
もうひとり、岡本さんは?
- 飯島
- 大阪で、広告のための料理を考える
先生についていたんです。
けれどもふたりとも、
映画やドラマ、CMは初めてでした。
- ──
- そういう人たちを、チームとして迎え入れて、
全員で大きな仕事ができるようになったっていうのは、
この数年の飯島さんの変化ですね。
- 飯島
- そうですね。意識して、
チームとして仕事をしています。
- ──
- ぼくらがいろいろなところで
「飯島奈美」っていう名前を
多く見かけるようになった背景には、
そのあたりもあるんですね。
みんなの力が付いてきて、
飯島さんのチームだっていう認識ができてきたことで、
よりたくさんの仕事ができるようになった。
- 飯島
- そうですね。
このごろ、広告や写真の人たちも、
そんなふうにチームを組んで
お仕事をなさっているかたが
だんだん増えてきているように思います。
- ──
- 印象として、雑誌媒体への登場を減らし、
本業であるCM、映画、テレビドラマを基本に
お仕事をなさっているように思います。
- 飯島
- そうですね。
CMが、ずっとやってきたことで、
いわば本業だと思います。
そこに映画と、ちょっとドラマが加わりました。
- ──
- 最近のものですと、Pascoの
深津絵里さんのCMが飯島さん。
- 飯島
- ほかにもソフトドリンク、
アルコール系飲料とか、調味料系とか。
ミツカンの味ぽんもそうですね。
- ──
- 映画は最近だと『舟を編む』、
是枝裕和監督の『そして父になる』。
- 飯島
- テレビドラマの『ゴーイングマイホーム』も。
- ──
- ドラマや映画のほうが、
「ほぼ日」の知っている飯島さんの世界に
近いかもしれませんね。
『LIFE』っていうのも、
各章を1つのドラマのように考えてきましたから。
- 飯島
- そうかもしれないですね、たしかに。
(つづきます!)
2014-01-23-THU