第1回 「ワーク・シフト」という考え方。
リンダ
いままで日本の会社をたくさん見てきましたが、
糸井さんのおっしゃった
ツリーハウスのプロジェクトのように
「遊び」を仕事にしている会社は
まだまだすくないように思います。
どうして日本の会社は
「遊び」を仕事にするのが
こんなにもむずかしいのでしょうか?
糸井
そのことについては、
ぼくもずっと考えているんです。
リンダ
そうなんですね。
糸井
まず、ツリーハウスのプロジェクトが
「遊び」を含んでいることについては、
「ほぼ日刊イトイ新聞」という組織が
そういう体制だからだと思います。
そもそも、ぼく自身が
年功序列やピラミッド型の組織体制といった
昔ながらの組織づくりをしている会社で
はたらくことがイメージできなくて。

(ほかの部屋から笑い声がきこえる)
‥‥さわがしくてすみません(笑)。
リンダ
ずいぶんたのしそうですね(笑)。
糸井
こういう会社なんです。
リンダ
たのしく笑いながら仕事ができることは
すばらしいことです。
けれど、やはり日本にある多くの会社は
まだまだ昔の体制のままな気がしていて。
糸井
そうですね。
リンダ
テクノロジーの進化や
グローバル化の進展などで、
世界はどんどん未知なる未来へ進んでいるのに
日本の会社の体制は依然として変わらない。
硬直したような、行きづまった状態が
つづいているように思えます。
糸井
おっしゃるとおりです。
日本の会社の組織体制については、
稲作文化のやり方が基盤になっているとか
それに軍隊の方法が加わったとか、
もういろんなことがいわれています。
リンダ
なるほど。
糸井
でも、ぼくは
日本の組織体制の成り立ちよりも‥‥
リンダ
そのことよりも?
糸井
昔の組織づくりに疑問を抱いたり、
そういう組織をつくらないように
望みをもったりした人たちが
結局、昔のやり方に
戻ってしまうことのほうに興味がありました。
リンダ
ああ、おもしろいですね。
日本ではたらくうえで、
組織体制に疑問をもっている人がいる。
それも、すくなくない人数が
そのように感じていることは
わたしも実感しています。

これまでに日本で受けた
インタビューのなかで、
いまの仕事のやり方にたいして
疑問視しているような質問が
たびたび出てくるんですよ。
糸井
そうなんですか。
リンダ
はい。
昨日も大きなプレゼンテーションを
行ったのですが、
そこでも、
「なぜわたしたち日本人は
 このような方法で
 仕事をしているのでしょう」
という質問を受けました。
糸井
疑問はもっている。
リンダ
ええ。
日本に来るたびに
その種類の質問を受けます。
このことからわたしは、
まさに日本が転換期を
むかえているような気がしているんです。
糸井
ぼくも、たぶん、
いまが転換期だと思っています。

かくいうじぶんも、
フリーランスから会社を立ち上げるという
シフトチェンジをしました。
リンダ
フリーから会社を。
どうしてそうされたのですか?
糸井
やっぱり、
ひとりでできることには限界があって。
チームでないとできないことが多すぎたんです。
リンダ
よくわかります。
糸井
すくなくとも「ほぼ日」が成り立っている以上、
そういうふうに起業することが失敗ではなく、
成功する可能性が
ずいぶん出てきているんじゃないかと。
リンダ
ええ、そう思います。
糸井
そして、いまなら
昔の体制で運営している会社に勤めて
不自由を感じている人たちに、
「ぼくたちとはたらいて
 おもしろいことをしようよ」と
提案することだって‥‥。
リンダ
できると思います。
日本でも欧米諸国のように、
若い人がじぶんたちの会社を興そうと
考えるようになってくるんじゃないでしょうか。
わたしがたち上げた
「ホットスポッツムーブメント」という会社は
まさにそういう人があつまっている場所なんですよ。
糸井
ほぉー。
(つづきます)
2014-09-16-TUE