[糸井]
先生はいろんなケースで職を辞さなくてはならないことがありますね。

[吉本]
先生というのは、割の合わない仕事ですよ。
僕が大学を出て職業に就こうとしたときに、最も敬遠したのが「先生」でした。
食えそうにないときはするかもしれないけど(笑)、できるかぎりはしないというふうに、いまでも思います。
いまみたいに、変なところでもって法律が介入してきちゃうことは、やっぱりよくないことだと思います。
法律というのはいちばん最後に、しかたがないから法律の問題になったとか、そういうことじゃないと、意味がないです。
法律は、人が作ったものなんです。
時代によって、人々の考え方とか、やり方も変わっていきますし、いまみたいに荒廃してくると、凶悪犯罪みたいなものも増えてきたりしてるわけだから、そういう時代とそうじゃない時代とはあんまり同じように論じられないのではないでしょうか。

[糸井]
一方では、犯罪は増えていないんだ、という見方もありますが‥‥。

[吉本]
犯罪は「少なくなった」「多くなった」という問題ではなくて、質が違ってきてるんです。
この数年の間に急激に起こってきている事件のなかに、法律に引っかかるやつと、引っかからないやつがあります。
しかしみんなそれぞれ極限まで来ています。
家族の解体現象も、これはいい意味も含みますけど、そうとう極限まで来ているという感じがします。
親と子どもの関係は、どちらかが亡くなるまでつづきますし、その間はいろいろなことがあるでしょうけど、それを全部越えていかないといけないです。
日本でいちばん問題なのは、世代離反になってきていることと、それが進めば今度は男女離反になっていく、ということです。
男女離反というのは、女性の勢いが、あたうべからざるがごとくなっていくことです。
だから、男女がいやおうなく離れていきます。
これを法律でどうしようったって、それはダメです。
警官がやかましくなるとか、せいぜいできるのはそういうことぐらいです。
これはそれぞれの家族の問題として解いていくしかないです。
法律はあんまり口出さんでくれといって、家族でもって解いていくというやり方以外にありません。
(明日につづきます)

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