[糸井]
しかし、タコの話はよかったね。
お互いに持ちネタがあるってのがさ。
やっぱり、タコがすごいんだろうな。
タコ以外じゃこうはいかないよ。

[南]
そうだね、タコはね‥‥あ、もうちょっと、タコの話、いいですか?

[糸井]
いいよ、いいよ。
タコの話は、いっくらでも伸ばしていいよ。

[一同]
(笑)



[南]
その、タコ漁を取材したときなんだけど、漁師のおじさんがさ、タコ壺をあげるときものすごく乱暴にやるわけ。
最近のタコ壺って、素焼きじゃなくて、プラスチックになってるもんでさ。
もう、ガーンって船の上にどんどん投げちゃう。
すると、その衝撃で、中からタコがにゅるにゅるって出てくるんだよ。

[糸井]
うん。

[南]
でね、オレは、さっき話したように、タコがものすごく狭い隙間でも、クチバシが通れる大きさなら通っちゃうことを知ってるからさ。

[糸井]
お茶殻の大きさは無理だけどな。

[南]
お茶殻は無理なんだけどね。
ともかく、なにかっつっちゃあ隙間から逃げる、ってのを知ってるから、慌てちゃってさ。
船って、排水溝がついてるから。
もう、逃げちゃう逃げちゃうって、一所懸命、水槽に戻そうとしてたわけ。

[糸井]
手伝ってたんだ。

[南]
手伝ってたんだよ。
ところが、漁師のおじさんは、
「なんか素人ががんばって手伝おうとしてるな」
みたいな、優しい目で見てるばっかりでさ。



[糸井]
まぁ、いくらタコが逃げるといっても、排水溝を目指して一目散に、という逃げ方をするわけじゃないんでしょ。

[南]
いや、逃げるんだよ。
でも、こっちだって一所懸命だからさ。
そのへんをにゅるにゅる這ってるタコをつかんで、水槽に入れようとするわけ。
ところがタコには吸盤がある。

[糸井]
あるねぇ。独特だよね、あれ。

[南]
ぴたっと貼りつくからね。
だから、こう、つかむでしょ。
そうすると、足が、こうくる。
で、それをはがそうとすると、こう。

[一同]
(笑)

[糸井]
タコにからみつかれてるわけだ。

[南]
そう。
しかもね、その、タコがさ、妙に気持ちがいいんだよ。

[糸井]
(笑)



[南]
だから、船の上で、しばらくこんなにして、持ってたりしてさ。
にやにや笑いながら。

[糸井]
なにをやってるんだ(笑)。



(なにをやってるんだ‥‥あ、つづきます)


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