[南]
そういえばオレ、カジキ漁の取材もしたことがある。
カジキ釣りの名人の船に1週間くらい乗って、
「今日も釣れなかった‥‥」みたいな。



[糸井]
へえ、それはなんの仕事?

[南]
テレビのドキュメンタリー。
すごくおもしろかったよ。

[糸井]
いいなぁ。で、釣れたの?

[南]
釣れた。最終的には釣れた。
それでね、おもしろかったのは、カジキって
「いちばんいい大きさ」ってのがあるんだ。
そんなにバカでかくない、中くらいのやつが、いちばん美味しくて、いちばん高く売れるわけ。

[糸井]
うん、うん。

[南]
だから、漁師さんとしては、その中くらいの大きさのカジキがいちばん儲かるわけじゃない?
ビジネス的には。
だけど、釣りたいのは、やっぱり、バカでかいカジキなんだよ。

[糸井]
あー。

[南]
漁師の人って、そういうアレがあるんだ。
その取材のときは、けっきょく、1週間ずっと釣れなくて、最後の最後にバカでかいのが釣れたわけ。
高く売れる中くらいのやつじゃない、でかいやつ。
そのときに、わー、デカいのが来た!
ってなってるときに、漁師さんがさものすごくうれしそうなんだよ。



[糸井]
ああ。わかる気がするね。
だってさ、原始の時代に、もしもカジキ漁があったとしたら、バカでかいカジキよりも中くらいのカジキに価値がある、なんてことは思えないじゃないですか。

[南]
そうだね。

[糸井]
そこにまで戻るんだろうね。
いや、そういうふうに、自分の中に、プリミティブのかけらを見つけることはあるよ。
自分の例でいうと、ぼくはついつい、そんなに好きでもないのに叶姉妹に目が行くという。

[南]
え? どうつながるの?

[糸井]
つまり、どっかのところでもう、原始人の目で見てるんだと思う。



[南]
ああ、大きい方がいいぞっていう、

[糸井]
大きさだけに反応しているのか知らないけど、なにかものすごくしゃべってるんだろうね、あのふたりのボディがさ。

[南]
あはは。

[糸井]
だから、あのふたりがテレビに出てると、もう、理屈抜きで、見るよ。

[南]
原始の血が騒ぐんだ。

[糸井]
かもしれない。



(今日も終わらなかった‥‥続く)


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