[南]
剣道部に入ろうと思ってたら弁論部に引っ張り込まれちゃったんだけどね。
まず、なにするんだか、わかんないんだよ。
弁論部っつーものが。

[糸井]
そりゃそうだよね。
え? ごめん、それって、中学の話じゃなくて高校の話?



[南]
中学。

[糸井]
中学に弁論部なんてあったんだ?

[南]
うん。

[糸井]
へぇー。それは、弁論好きの中学生が集まってるわけ?

[南]
そうだったんじゃないかな。
オレたちは引っ張り込まれた部員だったからよくわかんないけど、部室には、こう、先輩が取ったトロフィーが飾ってあったから、本来は、弁の立つ人が集まってたんだと思うよ。

[糸井]
弁の立つ中学生。

[南]
うん(笑)。

[糸井]
で、どんな弁論をしてたの?

[南]
だから、まぁ、要するに、あるテーマが決められてたりしてさ。
だから‥‥「消防について」とか。

[糸井]
ははははは。

[南]
「え、マッチ1本 火事の元と言いますが‥‥」。

[一同]
(爆笑)



[南]
そういうようなもんだよね。

[糸井]
それは、おっかしいなぁ!
え? ほんとの話?

[南]
ほんとの話だよ(笑)。
ちなみにそれは、消防署が主催するやつでね。

[糸井]
消防に関するテーマで弁論をお願いします、と。

[南]
そうそう。
そういう場がいくつかあるわけ。

[糸井]
「お母さんがくれたお守りを、 ぼくはいまも大事にしてます」
みたいな話もあるわけ?

[南]
それは、「青年の主張」だろう。

[糸井]
そうか、そうか(笑)。



[南]
いや、お守りの話をしても、べつにかまわないんだけどね。

[糸井]
え、じゃあ、中学生の伸坊も、時代を憂えたりしてたわけ?

[南]
いや、まぁ、なんか言わなきゃいけないからさ。
たまたま、そのころに読んだね、中国の小咄というか、笑い話みたいなものをしてみたりさ。

[糸井]
弁論じゃないじゃないか(笑)。

[南]
ははははは。
いや、オレは、そういうもんだと思ってたんだよ。
要するに、ウケればいいと。

[糸井]
そもそも、正式には、弁論ってどういうものをいうの?

[南]
いや、なんかしゃべってればいいわけよ。

[糸井]
(笑)

[南]
そのテーマに沿ったことを、とにかく、その、壇上でもってしゃべってさ。
で、そこには必ず水差しとコップがあるから、ときどき、こう‥‥(コップに水を注いで飲む)。

[糸井]
わははははは。

[南]
いきなり、最初から飲むっていう手もある
(コップに水を注いで飲む)。

[糸井]
中学生が、壇上で、水を(笑)。

[南]
うん。いきなり飲むことによって
「なかなか慣れてるな」と思わせる。
そういうテクニックがある。

[糸井]
(笑)



[南]
あえて、最初に飲むわけさ。
途中で、のどが渇いちゃって、うまくしゃべれなくなったから慌てて飲むとかいうんじゃなくて、いきなり、こう(コップに水を注いで飲む)。
そして、聴衆を悠々と見渡す
(会場を埋めた聴衆を右から左へ見渡す)。

[糸井]
はははははは。

[南]
これからオレがしゃべるぞ、と。

[糸井]
中学生でありながら。
すごいね。ヒゲモジャの人とかいた?

[南]
それはいなかった。

[糸井]
いなかったか。
大学の、角帽とかかぶってさ。

[南]
かぶってなかったね。中学生だから。

[糸井]
中学生だからね(笑)。

(弁論部の話、つづきます)


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