[糸井]
人魚って、上と下が逆のパターンはないのかな。
[南]
え?
[糸井]
つまり、上半身が魚で、下半身が人間の人魚と。
[南]
ああ、上半身が人間で、下半身が魚の人魚か。 ふたりどっちがいい?
[一同]
(笑)
[南]
これはなかなか興味深い質問だね。
[糸井]
伸坊、どっちがいい?
もちろん、人魚が女性だとして。
[南]
うーん。
ま、あえていやらしい意味で目的が下半身だとしてもだよ?
‥‥上半身、魚だよ?
[糸井]
うん(笑)。
[南]
それは、キツいんじゃないかなぁ。
[糸井]
エラとかバコーンと開いてるからね。
[南]
そうだよ。
それは、困りそうだなぁ、いろいろ。
[糸井]
足はめちゃめちゃ綺麗なんだ。
[南]
でも、エラがバコーンと‥‥。
[糸井]
(笑)
[南]
あの、アンデルセンの『人魚姫』の話はさ、人魚が、人間になるために、下半身を人間にするわけだよね、要するに。
[糸井]
そう。で、そのかわりに、しゃべれなくなるんだよね。
[南]
ああ、そうだ、そうだ。
しかも、歩くと痛いんだよ。
[糸井]
そうそう、そこ、つらいね。
[南]
歩くたびに痛い、みたいな話でさ。
[糸井]
そこに「痛い」をもってくるのってけっこうすごいよな。
いってみれば、でたらめな話なのに、わざわざ痛みっていう概念を入れちゃうわけでしょ。
それはちょっとふつうじゃないよね。
[南]
人間になる代償として、しゃべれなくなるだけじゃ、足りなかったのかな。
[糸井]
しゃべれないわ、歩くたびに痛いわ‥‥。
もう、そのままでいいんじゃないか?
[南]
ははははは、それは、人魚のままでいたほうがいいんじゃないかってこと?
[糸井]
うん。そのままにしといたほうがいいよ。
オレなら人魚のままでいい。
[南]
アンデルセン的には、どういうつもりでああいう話を作ったのかねぇ。
[糸井]
どういうつもりかねぇ。
[南]
まぁ、ふつうに考えると、思ったとおりにしたいと思うと‥‥。
[糸井]
代償がありますよ、と。
[南]
っていうことかもしれないけど、あんなに悲劇的にしなくてもいいような。
[糸井]
もうちょっと軽くとらえてみようか。
つまり、あの、人間になれますけど、
「ちょっと痛いですよ?」と。
[南]
「チクッとしますよ?」みたいなこと?
[糸井]
そうそうそう(笑)。
つまり、ライトな教訓としては、願えば叶うこともあるけれど、
「ちょっとチクッとしますよ?」と。
[南]
はははははは。
あの、「チクッとしますよ?」ってのはさ、かねがね、うちの奥さんが、
「言い方でごまかしてる」って言っててさ。
[糸井]
ははははは。
[南]
で、うちのが、それのイヤな言い方の例として編み出したのが
「ズグッとしますよ?」っていう言い方。
[糸井]
わぁ、それはイヤだね。
[南]
痛そうだよね、
「ズグッとしますよ?」は。
[糸井]
「ズグッと」は、してほしくない。
[南]
魔法使いのおばあさんにそう言われてたら、人魚姫もやめてたかもね。
[糸井]
「この薬を飲むと、2本の足がはえて、 おまえさんは人間になれるけど、 ズグッとしますよ?」
[南]
あはははははは。
(伸坊さんの奥さんはおもしろいなぁ。つづきます)
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